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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
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124話 エルフとケインの過去

大事な話だったので途中で切りたくなく一気に書いてしまいました。

いつもより少し長いですが頑張って読んで下さると幸いです(笑)

ケインとノエルはチャコと一緒にとある街にいた。


「こちらが代表のアルベレスさんです」


ケイン達の前にスラっとした顔立ちの整った綺麗な金色の長髪の美女が立っていた。


「初めまして、私はリブ様の参謀をしておりますケインと申します。この度はイグニアス王国に編入頂けるとの事でありがとうございます」


「妾はアルベレスと言う。そちらの女子(おなご)から、そち達の王の名がクロートと聞いてな。妾達も力になろうと思ったのじゃ」


アルベレスは代表というより女王のような雰囲気を醸し出している。


「失礼ながら、いくつかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「うむ、何でも聞くと良い」


「はい、まずはアルベレスさんはクロート家の事をご存知なのですか?」


「クロート家と妾達一族は数100年前の戦争で共闘したのじゃ。しかし妾達はシルバー家の策略に嵌められてしまっての……クロート様を裏切る形になってしまったのじゃ……」


「申し訳ございません。アルベレスさんの口調ですと、まるで見て来たような印象を受けるのですが?」


「ああ、見て来た……というより当事者そのものなのだからな……」


「そのような事が?」


「ああ、妾達エルフ族は長命なのでな、この数100年、後悔と懺悔を繰り返す日々をおくっておったのじゃ……」


「左様でございましたか……私の口からは軽率にお気持ちはわかりますなどとは申し上げられませんが、リブ様が復活された今、その日々も終わりでよろしいのでは?」


「それはクロート様に会って謝罪を受け入れてもらってからじゃ……我々一族を恨んでいるだろうからの……」


「その心配はないかと思われます。リブ様はそのようなお方ではございませんので」


ケインがそう言うとノエルとチャコも大きく頷く。


「そうか……あやつは復活してもそのような男か……」


「はい、ですので心配はいらないかと」


「ところで、そなたはいつから『今』のクロート様に仕えておるのじゃ?」


「私ですか?私はリブ様がこちらの世界に来られた時に同時期にこちらに参りまして、その時、偶然隣にリブ様がおりました。ですのでこちらに来た時からお仕えさせて頂いております」


「そなた達は別の世界からこちらに来たのであろう?こちらの記憶も無かったのに、クロート様に仕える事に抵抗はなかったのか?」


「それが……不思議なのですが、あちらの常識では人に仕える……などと言う事はあり得ませんでした。しかし、こちらに来た時にリブ様に仕えるのが当たり前のように感じたのです。ですので、抵抗は全くありませんでした」


「やはりの……」


「失礼ながら、アルベレスさんは私の過去をご存知なのですか?」


「何故そう思うのじゃ?」


「確信はないのですが、先程から私を懐かしそうに見ておられたようですので」


「ふむ……ああ、知っておるぞ?その頭の回転の速さ、洞察力、そしてその話し方で妾も先程確信したのじゃがな?」


「是非教えて頂きたく存じます」


「聞いてどうする?そなたらには過去の記憶はないのじゃろ?ならば『今』を大事にした方が良いのではないか?」


「私もそう思っていたのですが……以前ドリー様に初めてお会いした時もファフニール様にお会いした時も私を知っているような感じでした。となれば数100年前にお会いした事があるという事です。リブ様の過去は色々聞いて来たのですが私自身の事は誰も口にされませんでした……それがずっと心のどこかにあるのです」


「ドリー……そうか、奴も復活したのか……会わす顔がないの……奴もそなたの事は何も言わなんだか……というより、確信が持てなかったのじゃろうな」


「お教え頂けませんか?」


「ふむ、ついて参れ」


アルベレスはそう言うと街の中央にある、大きな神殿に向かって歩き出した。

中に入ると、エルフ族の全員が祈りを捧げていた。


「皆の者、こちらはクロート家の参謀であるケイン殿じゃ」


アルベレスがそう言うとケインの方を向き、全員が跪き頭を下げる。


「顔を上げて下さい。あくまで私はリブ様の配下なのですから」


「配下……か……」


アルベレスはボソッと呟くと神殿の奥に向かって進んで行く。

ケイン達もその後について行く。

神殿の奥の部屋に入ると、大きなテーブルに数人のエルフ達が座っていた。


ケイン達はそのテーブルの前にある椅子に座るように促されると、ゆっくりと席に着く。


「さて、そちの過去じゃったな。まずはロン爺、数100年前の出来事を説明してやってくれ」


ロン爺と呼ばれた1番年長の老人がケイン達に向かって話を始める。


「あれは邪龍との戦いの前日じゃった……我々一族とクロート様一向は大陸を渡る為、船に乗っておった……しかし、その船が大陸に着くと、シルバー達に包囲され設置された魔法陣で神獣様とドラゴン様達の力を封じられてしまったのじゃ……その魔法陣は我々が邪龍の力を封じる為にとシルバーに頼まれて開発した物じゃったのじゃ……まさかその魔法陣を味方に使うなど微塵にも思わなかったが、シルバーはクロート様達の前で我々を褒め称えたのじゃ……我々は裏切るつもりなど無かったのじゃが、結果としてクロート様達を裏切ってしまったのじゃ……どうする事も出来ないまま、神獣様達のあの目は今でも忘れる事ができん……クロート様は笑いながら我らを最後まで信じてくれておったのじゃが、そこに時空転移の魔法陣まで用意されておったのじゃ……その魔法陣は我らの先祖が試作した不完全な魔法陣でエルフの里に厳重に封印されていたはずじゃった……それが表に出た事で我々の裏切りが我々の知らない所で確定してしまったのじゃ……門外不出の魔法陣がクロート様達に向けられたと言う事は我々エルフ族が裏切ったのだと……それから邪龍戦争はクロート様に代わりシルバーが筆頭となり我々も無理矢理参加させられたのじゃが……結果は散々じゃった……我々は命からがらなんとか逃げ出したのじゃが……冷静になった時にクロート様達に対しての罪悪感に押しつぶされてしまったのじゃ……その後、自ら命を断とうとする者が溢れ、混沌とした時代が何年も続いたのじゃ……しかし、クロート様は死ぬ事も許してはくださらなかった……自害しようとすると何故か光に包まれて死ねなかったのじゃ……それからこの神殿を建て毎日クロート様に許しを乞うお祈りを捧げ続けておりますじゃ……」


「そうでしたか……」


「数100年前の出来事は理解してもらえたかの?」


「はい、しかしそれと私の過去とどういう関係が?」


「そちはその時最後まで守り抜いたクロート様に1番信頼されておった最強の戦士だったのじゃ」


「な!!」


「もっと詳しく聞きたいか?」


「是非ともお願い致します」


「ふむ……まず、そちはクロート家筆頭騎士の家に生まれ幼少の頃よりクロート家を守る為に剣を叩き込まれておった。そちが青年になる頃クロート家も代替わりして当時の当主に仕える事になっての、我らも筆頭魔法団として幾度となく一緒に戦ったものじゃ。やがてクロート様が大陸を統一した頃にはそちはその知力でもクロート様を支えておった。じゃがの、何故か大陸を渡る船には乗っておらんかった。クロート様に聞いても教えてはくれんかった。そこにあの事件が起きた。我々は必死に無実を訴え続けた。クロート様は信じてくれておったが神獣様達は最後まで信じてはくれなかった……そこにシルバー達からの攻撃が開始されての……我々はシルバー達に攻撃しようとした時に魔法封じの結界まで用意されておったのじゃ、しかしその結界は誰にも見えんから何も出来ん我々はクロート様を守る事もしないとはやはり裏切り者だと罵られての……その時そちが軍隊を連れてどこからか現れシルバー達の背後から攻撃を仕掛けたのじゃ。そちの登場に慌てたシルバー達は最後の手段で時空転移の魔法陣を発動させての……それを察知したそちはクロート様に向かって真っ直ぐ走って魔法陣が完成する前になんとかクロート様の元に辿り着いたのだが、そのまま一緒に時空の彼方に消えて行ってしまったのじゃ」


「そんな事が……しかし、私の父達は残っていたのではないのですか?」


「ああ、そちの父はその事件を聞き家の名を捨てる事でクロート家に終生の忠誠を誓ったのだ、それを聞いた他の家臣達も皆それに習って家名を捨てクロート様が復活した後までの忠誠を誓ったのじゃ」


「え?それってもしかして?私達も元々クロート家の家臣だったかもしれないって事?」


チャコが驚いている。


「今のクロート様に仕える事に抵抗がないならその可能性はあるかもしれんな。だが皆家名を捨ててしまっておるからの、多分としか言えんが……せめて家名が残っておればわかったかもしれんがの」


「何故当時の私の父は家名を捨てたのですか?」


「当時も家名がある家は貴族や盟主の家系だけだったのだ。今でも家名を持つ者が戻って来ておるだろう?そ奴らは皆どこかの国の王か貴族、もしくは要人だったのだ。そちの父はその地位を捨ててでもクロート家に仕える事にしたのだ。身も心も家名もクロート家に捧げると言っての」


「それで、今こちらに戻って来た人達は王候補意外は家名が無いのですか……」


「あれ?でもさ〜王候補以外はみんな家名が無いよね?元はクロート家の家臣だったって事?」


「いや、それは無いな。そもそも家名は王や貴族にしか許されない物だったのだ。それをクロート様が武功を上げたり活躍した家臣達に褒美として家名を授けたのじゃ。だからクロート家を守りきれなかった家臣達がそれを返納してでも今後もクロート家に仕えると意味でそうしたのだと言うのが本当の所だろう」


アルベレスは深くため息を吐くと、ケインを見つめる。

そして、突然立ち上がるとケインの前に跪くと深く頭を下げる。


他のエルフ達も席を立ちアルベレスに続く。


「どうされたのですか?」


「ケイン様、今のあなたには記憶がないとはいえ、我々のしでかしてしまった事実は消えません……あなた様にも深い謝罪を……」


「いや、頭を上げて下さい。私には謝罪を受けるような事は何もありませんですので」


ケインは困惑している。

だが、過去の自分も『今』と同じような事をしていたのだと思うと嬉しさが込み上げて来るのだった。

そして、いつも恥ずかしがっているリブの気持ちが少し理解できてしまった。


「過去は消えませんがこれからは変えられると思います。みなさんの謝罪は今後の活躍次第で贖罪されるのではないですか?」


「そう言ってもらえると我々も気持ちが楽になります」


「アルベレスさん、気になっていたのですがその名前エルフの言葉で女王って意味ですよね?」


「その通りじゃ……今となってはこんな名前恥ずかしくて名乗りたくもないのじゃがな……」


「いえ、とてもお似合いだと思います。これからはイグニアス王国の為に働いて下さい」


ケインが王国の名前を口にするとその場にいるエルフ達が驚いた顔で一斉に頭を上げる。


「ケイン様?今なんと?」


「これからは頑張って下さいと」


「いえ、そこではなく!!国の名前を?」


「イグニアス王国が何か?」


「そうですか……クロート様の国はイグニアス王国と……そうですか……イグニアスが……」


アルベレスは目に涙を浮かべている。


「大丈夫ですか?一体どうされたのですか?」


「数100年前クロート様が1番始めに作られた国の名がイグニアスなのです……我々もそこに皆と一緒に住んでいました……やっと祖国に帰れる気持ちで……胸が一杯です……」


涙声のアルベレスは途切れ途切れで説明してくれた。

まさか、リブ様が付けた国の名前が奇しくも100年前に自ら作った国だったなんて、本人は思いもしていないはずだ。

しかし、数100年前に生きていたエルフ達には故郷に帰る気持ちなのだろう。


こうして、無事エルフの里をイグニアス王国に招く事になったのだった。



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