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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
125/160

122話 無能だと追放された職業は王国ではレアだったようで重宝された件

建物に入ると大きな扉の前でケインが止まる。


「ここにリブ様がいらっしゃいますので失礼のないようにお願いします。それとここには特級機密事項の物がありますので、他言は無用でお願いします」


じゃあなんでそんな所に連れて来たのかと思ったが、王様が仕事をしているという事なので仕方ないかとも思うのだった。


「では、入ります」


ケインは大きな扉の隣にある小さな扉をノックするとドアを開ける。

ゼキルはそっちかよ!!とツッコミたかったがやめておく。

羅刹とシエルも同じだったようで苦笑いしている。


「リブ様、隣国より亡命して来たという3人をお連れしました」


ケインの言葉に3人は緊張する。


「ああ、ケインありがとう。悪いね、丁度今手が離せなくてさ〜ちょっと待ってくれる?」


「はい、では中で待たせて頂きます」


ケインは扉の前にいる3人を部屋の中に招き入れる。

中はかなり広く高さも30メートルくらいある巨大工場だった。

その工場の真ん中に見た事がある巨大なロボットのような物が立っていた。


「な……なぁあれってあれだよな?」


「そ……そう……ですね……」


「うわ〜〜大きなガ◯ダ…………ぅむぅ〜〜〜〜!!」


ゼキルと羅刹が慌ててシエルの口を塞ぐ。

ケインがチラッとゼキル達の方を向くがすぐに前を向き直す。


「これってさ……アメリカ軍の銃器とかもう意味ないよな……」


「踏み潰されて終わりでしょうな」


「だよな?」


「私達こっちに亡命して正解だったんじゃない?」


3人がコソコソ話をしていると巨大ロボットの足元から赤い髪の男が出てくる。


「いや〜〜後少しで完成だから気合い入っちゃって」


ツナギを油でベトベトにした、赤い髪の男が笑いながらこちらに歩いてくる。


「リブ様、お疲れ様です」


ケインがその男に頭を下げる。

だが、その行動と言動で3人がこの人がリブという王様だと気がつくには十分だった。


「お初にお目に……か……かかります!!」


突然の登場にゼキルは声を裏返らせた上甘噛みしてしまった。


「ん?そんなに畏まらなくていいよ?」


リブにそう言われてゼキルが羅刹達を見ると何故か土下座していた。


「お前ら!!」


「いや……なんとなく……」


「王様だって言うから……」


リブはそれを見ながら大爆笑している。


「王様って言ってもみんなと同じただの日本人だよ?だからそんな事しなくて大丈夫だよ」


「は……はい」


羅刹とシエルは立ち上がるとリブを見る。

見た目はどこにでもいそうな若いお兄ちゃんだが、どこか風格があった。


「それで?俺達の国に亡命したいって?」


「はい、どうやら隣国のどこかの城主に追放されたみたいです」


「へ〜酷い事をする城主がいるんだな?まぁうちの国ならそんな事はしないから自由にしてくれていいよ?それで?亡命って事はどこかの街に住むの?」


「申し訳ありません……まだ、そこまで話をしていませんでした……」


ケインが深く頭を下げる。


「そうなんだ?まぁ別にいいけど、っで?3人はどうするの?」


リブが突然ゼキル達に聞いてくる。


「は!!我々はあなた様の配下になりたく!!」


ゼキルは今度は裏返らないようにはっきり答える。


「だから、そんなに緊張しなくて大丈夫だって!!」


リブが笑いながらゼキル達を見る。


「じゃあさ、種族と職業を教えてくれるかな?」


笑っていたリブが突然真顔になる。


「はっ!!俺……私は龍人でアサシンです……」


前の城主や同僚に職業をバカにされていたゼキルが恐る恐る答えると


「おお!!マジか!!ケイン聞いた?アサシンだって!!」


と何故かめちゃくちゃ喜んでくれている。

その光景を見たゼキルはホッとしたのと同時に熱いものが込み上げて来ていた。


「じゃあさ隣の彼は?」


「はい、私は鬼人で職業はサムライです」


「サムライ!!スゲ〜!!これは新しい部隊を考えないとだな!!」


「はい!!これは楽しみですね!!」


今度はケインも大喜びしている。


「最後にそっちの彼女は?」


「はい……私は獣人でセージです……」


「魔法剣士か!!これは3人ともすごい拾い物だね!!むしろよく俺の所に来てくれました!!だよ!!」


前の城でその職業を馬鹿にされていた3人はリブの反応を見てとりあえず安心した。

と言うより、大歓迎してくれているのだから逆に驚いてしまって声が出ない。


「あれ?ねえケイン?俺なんかおかしな事言ったのかな?なんか3人とも固まっちゃたんだけど?


「本当ですね?3人ともどうかしましたか?」


「えっと……申し訳ありません……前の城では城主にも同僚にも3人とも役立たずと馬鹿にされて、毎日罵られて肩身の狭い生活をしていたものですから……そこまで大歓迎された事に驚いてしまって……」


「ふーん……その城にいる城主と同僚は余程無知で無能なんだね?逆にそんな所追放されて良かったんじゃない?って……それとも俺がおかしいのか?ケインはどう思う?」


何やら考え込んでいるケインにリブが問いかける。


「え?はっ?私はリブ様が正解だと思います」


「と言うか……ケイン?、もう新しい部隊の編成を考えてたでしょ?」


「申し訳ありません。少し興奮してしまいました。ですが!!3人の職業を使いこなせないのは無能だと思うのは事実です!!」


「だってさ?良かった。俺がおかしいのかと思っちゃったよ」


リブは3人に向かって微笑みかける。


「まぁそんな城主なら俺達の敵にもならないだろうけど、後で向こうの話を聞かせてよ?」


「それはもちろん!!全てお話させて頂きます!!」


リブとケインに歓迎された3人は大喜びだ。


「それでさ?3人はこれをどう思う?」


リブが後ろを振り向くと巨大ロボットを指差す。


「あの〜これってあれですよね?まさか乗り込んだ操縦するのですか?」


ゼキルがリブに尋ねる。


「そう!!まさにあれなんだよ!!まだ動かせないんだけどさ、とりあえず形は出来上がって今から動力テストと機動テストなんだ!!せっかくだから見て行って感想を聞きたいな!!ケインもね?」


「もちろんです!!これがあればさらに部隊編成をしなければならないですから!!」


ケインは色々な感情が入り乱れて興奮がピークに達している。


「えっと……そういえば名前聞いてなかったわ!!」


リブは笑いながらゼキル達に名前を聞く。


「俺……私はゼキルです」


「ゼキルさ〜俺でいいよ?」


「え?でも配下になるのですから……」


「だから気にしなくていいって」


「わかっ……わかりました」


「ははは!!慣れない事しなくていいよ!!普通に喋ってくれ」


「う……」


「ゼキルは丁寧な言葉使いが苦手ですからね。私は羅刹と言います」


「本当にね……私はシエルと申します」


「羅刹とシエルね、うん覚えた。これから色々仕事を任せるからよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします」


「それでリブ様、このロボットは戦争で使うのですよね?」


「ああ、ビームサーベルは無理だから、とりあえず今ある魔導兵器に付いている拡散メガ粒子砲と波動砲を付けてあるんだけど」


「拡散メガ粒子砲!!」


「波動砲!!」


その言葉にゼキルと羅刹が興奮している。

こちらでの見た目は20代後半だが、日本では恐らく世代だったのだろう。


かく言う俺もアニヲタ30代だったので世代ではないが、かなり興奮しているのだが。


「というか既に魔導兵器という物が存在しているのですか?」


「ああ、日本のゲームに出てくるやつなんだけどね?」


「ま……マジですか!!まさかあの?」


ゼキルが更に興奮している。


「ゼキルも嫌いじゃないね?」


「ええ、俺も羅刹も大好きですよ?」


「はい、私も見てみたいですね」


「じゃあこの後見せてあげるよ、っとその前にこいつを動かしてみないと」


「そうですね、サリーも待ちくたびれてしまいますから」


ケインも機動テストを待っていた。


「おーい!!お待たせサリー!!そろそろテストを開始しよう!!」


俺はコクピットにいるサリーに声をかける。


「リブ様、やっとでっか?ほないきまっせ?」


拡声スピーカーからサリーの声が聞こえると、ブイーンという音を立てて機動戦士の目が光る。

そして、ゆっくりと足が動き出し前に出ると今度は腕が動き出す。


「これ操縦が難しいでんな?同時に動かすならもっと簡単にせなあきまへんわ」


「やっぱり?ちょっと凝りすぎたか?」


「ほんまでっせ?全く……誰もみーへんのやからこないな所に気合い入れんでもええやろ?」


「あ?サリーなんだって?」


「あっ!!拡声スピーカー切るの忘れてたわ!!」


サリーは独り言だったのだが拡声スピーカーから全員に聞こえてしまっていた。

その場にいた全員が大爆笑する。


「サリー、後でゆっくり話をしようか」


「リブ様堪忍や!!許して〜な!!」


工場内にコクピットからサリーの泣きそうな声が響き渡るのだった。


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