119話 祭りの終幕と今後の方針
半蔵の配下達にお金を渡すと、彼等は喜んで城から出ていく。
「なんか疲れたな……」
「そうですね……今回はさすがに私も緊張しましたから……」
ケインも疲れたようだ。
「バルコニーで街を見ながら飲むか?」
「はい、ご一緒させて頂きます」
「チャコ達も一緒にどう?」
「はい、そうさせてもらいます」
俺達は謁見の間を出るとバルコニーに向かう。
「リブ様、こちらにお酒と料理をご用意しました」
さっきまで城の入り口で屋台をやっていたはずのアイーナがバルコニーに食べ物を用意してくれてある。
「一体どうやって?」
「メイドですから!!」
うん、意味がわからない……
まぁそういうものなんだろうか?
提灯で彩られた街を見ながら、アイーナが用意してくれた料理とお酒を楽しむ。
この景色を見ていると一国の王になった実感が湧いてくる。
「この国をもっと豊かにしていかないとな」
「はい、私も精一杯頑張らせて頂きます」
「まさかこんなに大きくなるなんて思わなかったですね」
ノエルも感動している。
チャコも無言で大きく頷く。
「そういえば全然見かけなかったけど、フェルノ達は何をやっているんだ?」
「フェルノさん達はあそこでお好み焼き屋をやってますよ?」
チャコ指差す方向を見ると、城の真下でフェルノとハティがハチマキをしながら屋台に立っている。
何かやってるとは思ったけど、あんな所にいたのか……
「お好み焼きって……」
「意外と美味しかったですよ?」
「食べたんだ?」
「はい、頂きました」
チャコは中々チャレンジャーだな……
まぁお客さんも並んでいるので美味しいのだろう。
「あー!!リブ様そんな所に!!ずるいですわ?」
下からマーチの声がする。
「はいはい、みんなも来ればいいだろ?」
しばらくするといつものようにメンバーが集まり、バルコニーで宴会が始まる。
こうして祭りの夜は更けていくのだった。
翌日、俺は大広間にいた。
集計した結果を聞く為だ。
「5位は龍谷の里です。4位がバラン、3位は……」
と順番に報告を受ける。
「それでは住民達も待っていますのでバルコニーにお願いします」
「わかった」
俺達はバルコニーに向かう。
そして、そこから結果の発表をする。
「それでは順位を発表する!!審査は踊り、音楽、山車、構成の4部門で採点してその合計点で行われる!!」
俺が声を上げるとザワザワしていた住民達が静かになる。
みんな緊張しているようだ。
「それでは!!第5位!!」
静まりかえった広場に俺の声が響き渡る。
「龍谷の里!!」
ああ〜〜とため息に近い声が聞こえる。
まぁ、ドラゴニュート達は人里から離れて隠れて住んでいたのだから仕方ないな、まだこれから成長するだろう。
「第4位!!」
次の発表が始まると再度静かになる。
「ラティフンディア!!」
またしてもため息混じりの声が上がっている。
農村の割には頑張った方だろう。
「第3位!!」
聞いた話では、ここからは真剣勝負だったらしい。
「シキリア!!」
ああ〜〜!!と崩れ落ちる集団がいる。
あそこがシキリアの住民達だろう。
とはいえ2位とは2点差だったみたいなので僅差だった。
「第2位!!」
どこからかドラムロールが聞こえる。
「バラン!!」
ああ〜という声とおお〜!!という歓声が入り混じっている。
「という事で、今回の優勝はプロスパラスだ!!」
今日1番の歓声が沸き起こる。
ここも2位との差は1点だったらしい。
どこも僅差だったが優勝は優勝だ。
「1点、2点の僅差だったようだが、全ての街が来年は優勝できるよう1年かけてしっかり準備してくれ!!今回は初めての祭りだったが、これからまだまだ大きな祭りは行われる!!その度にイベントを用意する予定なので全員精進するように!!」
「「「「おお〜〜〜〜!!!!!」」」」
住民達の歓声が更に大きくなる。
「それでは賞品の授与を行うので各街の代表は謁見の間にくるように」
その歓声を掻き分けるようにケインの声が響く。
こうして発表は終わり、謁見の間で表彰式が始まる。
「それでは龍谷の里代表ドラグ前へ」
ドラグがゆっくりと俺の前に歩み出る。
「5位ではあったが、素晴らしかった」
俺は一言声をかけながら順番に賞品を渡していく。
そして、優勝のチャーリーに賞品を手渡し終えると、5人は一礼して謁見の間から出ていく。
ちなみに優勝賞品は『第1回七夕祭り 優勝』と書かれたトロフィーと酒だそうだ。
各賞も食品関係らしい。
こうして祭りは大盛況で幕を閉じたのだった。
今から片付けをして今夜は後夜祭だそうだ。
山車は各街の格納庫に収納された。
屋台も一緒に格納庫に片付けられた。
というか、七夕は夏祭りだけど秋にも祭りがあるのかな?
もし秋に祭りをやるなら他のイベントを考えないと……
とりあえず夏の大きなイベントが終わった。
後はテーマパークプロジェクトと大陸の平定か……
だけど、国の中の事はしばらくおいておこう。
テーマパークは人材集めだけ手伝って後はクーパー達に任せよう。
そろそろメンバーと一緒にレベル上げをしないと、今回の王城攻防戦でも結構接戦だった。
俺が足止めしたからなんとかなったが、もし大軍と戦争になったら厳しそうだ。
内政はマーチとノエルに任せて軍事面の強化が必須だろう。
この国を守るためにも兵士達の成長も同時に行わなければならない。
俺はそう思いながら謁見の間を出るのだった。
そして、ケインとフランを連れて参謀本部に向かう。
「さて、これでとりあえずイベントは終了したわけだが……」
「リブ様?難しい顔をされていますがどうされました?」
「ああ……今回の王城攻防戦だけど……」
「はい」
「メンバーのレベルアップと兵士達の訓練を行おうと思う」
「と、申されますと?」
「ああ、今後もっと大きな規模の戦争が起こると予想している。その時に今の戦力では負ける可能性がある」
「そうですね、今回はリブ様の力で勝てましたが戦術も戦略もまだまだです」
「ああ、だから幹部達の個の戦力を上げてもらう。それに平行して兵士達の団体戦の訓練をしていこうと思う」
「それではテーマパークの方はどうされますか?」
「そっちはバランの住民達から専門家を探して後はクーパー達に任せようと思う」
「それはいい考えですね」
「では軍事訓練の計画はどのように行いますか?」
フランが俺とケインに聞いてくる。
「まず圧倒的な個の力を持つ者に大軍の兵士は意味がない。だから兵士達は各部隊で連携する戦術を覚えてもらおうと思う」
「現在の鶴翼の陣は魔導兵器を主砲においてますが、前回の戦争では上手く機能していなかったですからね……」
「ああ、だからまずは歩兵を主力におく戦術を作ろうと思う」
「歩兵をですか?」
「ああ、機動力は落ちるが乱戦に持ち込めれば、さすがに味方の軍勢に大魔法を打ち込むような事はしないだろう?」
「しかし、そうすると魔導兵器の主砲も打てませんが?」
「魔導兵器はサリー達に改良してもらうつもりだ」
「と言いますと?」
「モビルスーツ……と言えばわかるかな?」
「まさか!!」
「そのまさかだ。神獣やドラゴンに対抗出来る機動戦士を数体作ってもらう」
「神獣やドラゴンに?」
「シルバー家……ずっと気になっていたんだ。召喚4家の1つで裏切り者って言われている奴だ」
「確かに、そのような話がありましたね」
「もし何らかの力でドリー達の自由が奪われる事態になった時に対抗出来る兵器があれば前回の二の舞になる事はないだろう」
「そうですね、最後の敵もドラゴンですしね……」
そう、最終的には邪龍との戦いが待っているのだ。
イフリートの話ではフェニックスもいるみたいだし、もっと強いモンスターが出てくる事も考えておかなければならない。
人類では対抗出来ないのでは意味がないのだ。
その為に日本で得た知識はフル活用する必要がある。
「そういうわけでグループ分けして順番にやっていこうと思う」
「了解しました!!」
ケインとフランは今後の計画と戦術の話し合いを始める。
もちろん俺もレベルアップしなければならない。
現状に満足していたら、もしもの時に危険な目にあうかもしれないのだ。
こうしてマットの戦力アップが始まるのだった。