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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
建国奮闘編
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118話 謎の一団

ラティフンディアに着いた俺達はマリアーネの所に向かう。

農村らしくおにぎりや味噌汁の屋台が目立つ。

それでも結構お客は来ていた。


「マリアーネ、忙しそうだね?」


「これはリブ様、お陰様でこんな農村でも大忙しです」


「それはいい事だ、困ったことがあったらいつでも相談に来てくれていいからな」


「はい、その時はよろしくお願いします」


忙しそうなので、これ以上長居するのも悪いと思いそそくさと村を後にしようとすると、


「え?リブ様?ここはこれだけですか?」


とユリーカが不満そうだ。


「いや忙しそうだし、あそこに並ぶとみんなが気を使ってしまって逆に迷惑かな?って」


他の街に比べて屋台の数が少ないので1つ1つに行列が出来ていたのだ。


「確かにそうですね、リブ様が並ぶと色々な意味で迷惑がかかりそうです」


ケインが笑いながらユリーカ達を説得している。


「それじゃあ行こうか」


俺達が村から出ようとすると


「王さま〜〜これ食べて〜〜」


と小さな女の子が駆け寄って来た。

手にはおにぎりを2個持っている。


「ありがとう、でもこれって売り物だろう?いくらかな?」


俺がお金を渡そうとすると、


「ううん、私が作ったの〜〜」


と笑顔でおにぎりを差し出してくる。

それじゃあとそのおにぎりを受け取ろうとすると女の子の母親らしき女性が慌てて走って来た。


「リブ様、申し訳ありません。子供の作った物を召し上がって頂く訳には……」


母親は慌てて女の子からおにぎりを取り上げようとする。

しかし、俺はそのおにぎりを受け取りそのまま口に入れる。


「美味しいよ」


俺が笑顔で女の子に答えると


「良かった〜〜」


と心配そうにしている母親を他所に、女の子が満面の笑みで微笑む。

もうひとつはユリーカが食べている。


「リブ様、ありがとうございます」


母親は泣きそうになりながら俺にお礼を言ってくる。


「大きくなったら俺のご飯を作ってくれよ?」


俺は女の子の頭を撫でると村から出て行く。

俺はこの子達の為にも平和な国を作ろうと決意した瞬間であった。


その後バラン、プロスパラス、シキリアを周り本部のある広場に戻るとすっかり夜になっていた。

本部の前にはセントラル・シティの山車が出ていて、その上に乗ると来た時と同じルートを練り歩き王城に戻る。


「リブ様、明日の昼に審査結果の発表と表彰式を予定していますのでよろしくお願いしますわね?」


王城に戻るとマーチがそう言って来た。


「あれ?明日はもう片付けでしょ?今夜発表じゃなくていいの?」


「ええ、祭り本番なのですからみんな楽しみたいでしょう?」


ああ……ゆっくり飲みたいんだね?

こうして祭り独特の空気の中それぞれ街に繰り出して楽しむのだった。


王城の前ではアイーナ達メイドが出店を出していた。

俺はそれをつまみながらビール片手にセントラルシティを歩く。


そういえば、テーマパークの建設や音楽をバランの住民達に依頼すれば楽なんじゃないか?

俺はそんな事を考えながらぶらぶらしていると


「リブ様」


俺の後ろにいつの間にかクリオがいた。


「クリオ?どうしたの?」


「はい、少し気になる一団を見つけたのですが」


気になる一団?


「どんな感じなの?」


「はい、どこかの暗殺部隊かと……今チャコさん達が監視していますが」


暗殺部隊?


「狙いは俺か?」


「恐らく……というか間違いなく……」


「それで?相手は何人で今はどこにいるの?」


「確認しているのは6人です。現在はプロスパラスでキョロキョロ周りを見ながらリブ様を探しております」


「6人?どこの刺客かわかる?」


「そこまではまだわかりませんが、祭りに乗じて狙って来たのではないかと」


ふむ、国に入る時の検問や城の防衛機構をすり抜けたって事は、それなりに実力があるんだろうな?

しかし、どうやってこの城に入り込んだのか聞いておかないとな。


「クリオ、チャコに拘束出来るか確認してくれ。もし出来そうなら速やかに拘束後、城に連れて来てくるように伝えてくれ」


「了解しました」


クリオは気配を消してスッと俺の後ろからいなくなった。


「リブ様どうされますか?」


隣にいたケインが俺に聞いてくる。


「警備は万全なんだろ?だったら相手に警戒されないようにこのままセントラルシティをうろうろしてみるよ。ただ、一般の住民に危害が及ばないようにロイに連絡だけしておいてくれ」


「わかりました」


ケインはすぐに通信でロイに連絡する。


「ロイさんもすでに警戒しているみたいです」


ロイにも気づかれるほどわかりやすいのか?

なぜそんな奴らがここに?


「リブ様、拘束終了しました」


ケインと話をしているとチャコから連絡が入る。


「そのまま城に連れて来てくれ」


「わかりました」


俺とケインも城の謁見の間に向かう。

城に入り謁見の間に着くとチャコが7人の男達を連れて入ってきた。


ん?7人?

6人じゃなかったのか?


「1人は後方から監視をしていました」


なるほどそういう事か。


「さて、お前たちは誰の命令でここに?」


「…………」


無言か……


「ノエルをここに」


俺はノエルを呼ぶ。


「じゃあ質問を変えよう。どうやってこの街に入り込んだ?」


「…………」


とことん無言なんだな……


「もういいや……お前達の頭の中を覗けばすぐにわかる事だし」


そんなスキルは誰も持っていないのだが、わざと脅しのつもりで言ってみる。


「なっ!!」


しかし、その脅し文句に表情を変える。


「お……俺達は最近占領された地域にいた王候補の半蔵様の配下だ」


半蔵?そんな奴は謁見に来てないな?


「ケイン?」


「はい、確認できてませんね」


「チャコは?」


「聞いた事はないです」


ケインもチャコも知らないと言っている。


「半蔵様は隠密スキルを持つ者を集めて隠密衆という組織を作り、そこの頭領をされているお方です」


隠密衆?


「その半蔵がなんで俺を暗殺しようと?」


「暗殺?そんな事はしない!!」


「じゃあお前達は何をしにここに来たんだ?」


「我々は……」


我々は?


「祭りがあると聞き……急に懐かしくなり……」


ん?

もしかして?


「遊びに来たのか?」


「はい……」


「それを信じろと?」


「今回の件は半蔵様は知らない事だ!!俺達の独断でしかない!!」


「しかし、お前達の行動に問題があった事も確かだし、半蔵っていう奴が俺の所に来ていないのも確かだ」


「半蔵様はまだ悩んでおられるのだ。ご自分に王になる器量がない事を自覚しているが、誰とも知らない男の下につく訳にもいかない」


「ほう、それでお前達が偵察に?」


「いや……我々は本当に祭りを……」


「チャコ?こいつらの行動はいつから?」


「はい、私が気がついたのは夕方からです」


「それからの行動は?」


「屋台を見て回ってはいましたが何かを買う事はありませんでした。そして山車と踊りを見たり、辺りをキョロキョロしながら城に向かって歩いておりました」


それはかなり怪しいが……

もしかしたら……


「なぁ、お前達お金を持っていないんじゃないのか?」


俺の言葉に男達が一斉に顔を上げる。


「は〜〜……やっぱり……」


そう、買い食いしようにもお金がないのだ。

しかもマントを羽織り、忍び装束のような格好を隠しているので更に怪しく見える。


「どうやら、武器も持っていないみたいだな。だからこの街に普通に入れたって事か……」


検問では目的確認と身体検査が行われる。

武器の所持は完全にアウト。

目的も信憑性がなければ入れない。

そこにはノエルかその部下が必ず1人はいる事になっている。


「ノエル?どうだ?」


入口の柱の後ろからノエルが姿を現す。


「嘘はありません」


どうやら本当らしい。


「ケイン、こいつらにお金をあげてくれ」


「よろしいのですか?」


「祭りが懐かしいって事は元日本人だろう?だったら楽しませてやろう」


俺の言葉に男達は驚いている。


「懐かしい食べ物もあっただろ?お腹も空いているみたいだしな」


「「「ありがとうございます!!」」」


男達は俺に向かって頭を下げる。


「ただし、条件がある」


「と言いますと?」


「俺はその半蔵とかいう奴と隠密衆を配下に欲しい。だからお前達の城に戻ったら頭領を俺の配下になるように説得して欲しい。条件はそれだけだ」


男達はお互いに顔を見合わせると


「必ず!!早急にリブ様の元に馳せ参じるように説得して参ります!!」


と力強く答える。

これで、チャコ達の負担がかなり減らせるし情報収集の範囲が広がる。


「リブ様?」


「チャコの仕事は今までと変わらないが、これでかなり楽になるだろ?」


「ありがとうございます」


そう言うとチャコは頭を下げる。

大騒ぎした暗殺者問題はこれで解決したのだった。


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