111話 理不尽な戦力
俺は城でケイン達の報告を待っていた。
「なぁフェルノ?上手くいくかな?」
「ケインの事だ大丈夫だろう?」
「だといいんだけど……なんとなく嫌な予感がするんだよな〜」
「お前は落ち着いて待っていればいいのだ」
「王ってやれる事が制限されて面倒だな?」
「お前がそれを言うか?」
『リブ様少しよろしいでしょうか?』
「おっ!!噂をすればケインから通信だ。大丈夫だよ?どうしたの?」
『はい、少々面倒な事になりまして……』
「と言うと?」
『私達では対処できないほどの軍勢が迫って来ています』
「え?それやばくない?」
『はい、それで今こちらのドラゴンさんにルールを確認しました所、王城に来る前の戦闘は攻城戦とは無関係との事でして』
「ん?それって?」
『はい、ノエルさんを城に戻しますので、リブ様達にその軍勢を全滅させて頂きたいと思います』
「なるほどね、わかった!!じゃあすぐ行って壊滅させて来るよ!!」
『よろしくお願いします』
ケインからの通信を切ると俺はフェルノ達を連れてすぐに城の外に向かう。
玄関まで行くと、そこにはノエルが戻って来ていた。
「リブ様、範囲ワープでお連れします」
「うん、よろしく」
そう言うと俺達はノエルの範囲ワープで隣国内に入る。
「あれがその軍勢?」
「そうみたいですね。すごい数です」
「じゃあ久しぶりに暴れますか!!」
俺はすぐにドリーとリコルを召喚する。
『クロート?どうした?』
「あの軍勢が王城に向かわないようにここで排除する事になったんだ」
『ほう、久しぶりに暴れていいんだな?』
「ああ、思いっきりやってくれ」
俺とフェルノ、ドリー、リコル、ハティの5人は軍勢に向かって行く。
『メテオストーム!!』
軍勢に向けて暴風が巻き起こるとさらに追い打ちで巨石が降り注ぐ。
そこにドリーの雷撃とリコルの旋風が更に追い打ちをかける。
『ドラゴンブレス!!』
その後からフェルノがドラゴン化して炎を撒き散らす。
更にハティが黒炎と暴風を巻き起こす。
一瞬の出来事だった。
かなりの数の兵士がいたはずなのだが、あっという間に1人残らず戦闘不能になっていた。
「え?これで終わり?強い人はいないのか?」
「どうだろうな?全く準備運動にもならなかったぞ?」
『クロートよ!!まさかこれで終わりという事はないよな?』
『ドリー?それはそれでいいじゃない?ちょっと発散できたし』
『我の初陣だったのですが……クロート様にいいところを見せる前に終わってしまいました……』
5人は動ける人がいないか辺りを見回す。
「あれ?少し前に軍勢がいない?ノエル?あれも倒すの?」
「はい……ケインさんにはそう言われています……」
あの大軍勢を一瞬で壊滅させてしまったリブ達にノエルは少し引いていた。
「じゃあ誰が1番最初に壊滅させるか競争な?」
リブはそう言うと軍勢に向かって走り出す。
「なっ!!ずるいぞ!!我も急がねば!!」
フェルノがドラゴンのまま飛び立とうとした次の瞬間、爆音と共に前方にいた軍勢が空高く舞い上がる。
「もう終わったみたいですね……」
それを見たノエルが呆れている。
ドリー達もやられたという顔で舞い上がる兵士達を見ていた。
「他にはいないのか?」
呆れるノエルの隣からリブの声がした。
「リブ様……もういません……」
「そうか!!じゃあこれで任務完了だね?城に戻ろうか」
「では、お送りします」
そしてドリー達は消え、ノエルの範囲ワープで城に戻る。
「それでは私はケインさんに報告に戻ります」
「ああ、頑張るように伝えてくれ」
「なんか……頑張ってる私達が馬鹿みたいに見えますが……」
ノエルは小声で呟く。
「ん?なんか言った?」
「いえ、何も……そういえば大事な事を言い忘れていました!!」
「ん?」
「コウリュさん達の盟主が相手でして、どうやら日本から来たコウリュさんの大事な人だとか……それで、残念ながらコウリュさん達が向こうに寝返りました」
「はっ?マジで?クーパーさん落ち込んでない?」
「はい、最初はかなり落ち込んでいました。それでも気持ちを切り替えて頑張っています」
「そうか……約束は守れなかったな……まぁ寝返るってことは最初からスパイだったって事だろうけど」
「はい、ケインさんもそう言っていました」
「まぁ、仕方がない事だけど、俺もちょっと残念だな」
「戦後の処理でどうなるかわからないですが、なるべくならまた一緒にいたいですね……ではそろそろ戻ります」
そう言うとノエルは戦場に戻って行った。
戦場に戻ったノエルはケインのところに報告に行く。
「ケインさん戻りました」
「ノエルさん?もう帰って来たのですか?」
「はい、リブ様達があの軍勢をあっという間に全滅させてしまったので……」
「え?もう?さっき行ったばかりじゃなかった?」
「ええ……クーパーさん……それはもう……一瞬の出来事でした……」
「さすがはリブ様ですね……しかし……まぁ、あまり深く考えない事にしましょう……」
ケインは遠くを見つめながら現実逃避をしている。
クーパーも何もなかったように戦場を見つめている。
「リブ様から伝言で後は任せたから頑張るようにとの事です」
「わかりました。ここまでお膳立てをして頂いたのに負けるわけにはいかないですからね。チャコさん全力でお願いします」
ケインは隣にいたチャコにカイザーの元に行くように指示を出す。
「はい、あの男はカイザーさんでは相性が悪いですからね。まぁ私なら余裕でしょうけど」
「くれぐれも油断しないようにお願いします。何か隠しているかもしれないですし」
「そうですね。もし油断して負けたなんて、言ったらリブ様に笑われてしまいますから」
「はい、これで負けたら私が無能だったと言う事になってしまいます」
ケインとチャコは笑いながらも真剣な顔をしている。
リブが規格外なだけなのだが、もし負けるなんて事になれば言い訳もできないのだ。
「では行って来ます」
「はい、お願いします」
チャコは軽く挨拶をするとカイザーの元に向かって行く。
「ノエルさん?どうしました?」
「いえ……ちょっとリブ様達の戦いを思い出しまして……」
「そんなに凄かったのですか?」
「クーパーさん……凄いと表現していいのかわからないレベルでした……」
「そんなに?」
「だって……一応フェルノさんやドリーさん達も攻撃してましたけど……ほぼ一撃ですよ?前線の部隊なんてフェルノさんが追いつかないうちにリブ様1人で……」
「想像したくないですね……こっちは必死に頑張っているんですけど?」
「リブ様の事は考えても仕方ないです。こっちはやれる事をやりましょう」
クーパーの言葉にケインが諦めに近い感じで諭す。
こうして、後方の憂いが無くなった戦場はケインの思惑通り一気に動き出すのだった。