102話 宴会?準備?攻城戦?
久しぶりの大会議を終えた俺達は食堂にいた。
アイーナはヤリスを紹介されると、急ぎキッチンに指示を出している。
きっと今日も歓迎会と言う名の宴会だろう……
最近はもう諦めている。
明日もきっと昼過ぎまで寝るのだろう。
今は祭りの準備がメインなのでいいかもしれないけど、カイザーやチャコはモンハンや城周り、街周りで忙しいのでなるべくなら飲みすぎないようにして欲しいものだ。
ヤリスの反応に懐かしさを感じながら風呂から出ると、案の定宴会の準備が整っていた。
女性陣の準備が整ったら今日も歓迎会が始まる。
最早、恒例行事どころかほぼ毎日宴会だ……
ここまでくると、さすがの俺でも辛くなってくる。
まぁ、今日は最初の一杯だけにして、後はノンアルコールの飲み物にしよう。
そして、いつもの宴会が始まる。
「リブ様、テーマパークも大事なのですが今は祭りの準備が先かと」
ケインが俺の隣に来て小声で囁く。
「ああ、俺もそう思う。面会もあるし、山車の通行ルートを加味して出店の配置も考えないとだし、そもそも出店を出す人の申請にも目を通さないと」
「はい、それともうひとつこの気に乗じて奇襲を仕掛けてくる可能性も考慮しなければなりません」
奇襲?
このタイミングで攻めてくる軍があると?
「リブ様はあくまでこの国の王です。この大陸にはまだいくつかの国があります。まだ王城を占拠したという報告はありませんがこの数日で何が起こるかわかりませんから」
「後2週間か……どうせならその王城も攻略しちゃう?」
「は?しかし、リブ様はこの国の王ですしそんな事が可能なのでしょうか?」
「どうなんだフェルノ?」
俺の隣で酒を飲んでいるフェルノに聞いてみる。
「ふむ、大陸の王になる為にはこの大陸にある国を全て治める必要があるが、それには条件がある」
「その条件って?」
「お前以外の王候補が占領した城を攻め落とす必要があるのだ」
「と言う事はまず俺以外の誰かが王にならないと、その王城は手に入れる事はできないと言う事か?」
「そういう事だ」
「確認だけど、王城を占領している人を俺達が助ける事は可能なの?」
「お前が直接手を出す事はできない。しかしお前の配下の者が助力する事は可能だな」
「ふむ、じゃあさ、クーパーさんに王城を占領してもらってうちの部隊で王城を防衛する事は出来るって事だな?」
「なるほど!!それなら占領後もわざわざ戦闘で王城を落とさなくても新しい国が手に入りますね!!」
「それは面白い発想だな!!それなら問題はないぞ?」
「だろ?祭りの前に近くにある国を手に入れておけばここは安全だし、新しい国民にも俺達の事を知ってもらえる。一石二鳥ってわけだ」
「では、今からカイザーさんとフランさんに話をしてきます。リブ様はクーパーさんに伝えておいてください」
そう言うとケインは急いでカイザーとフランを連れて会議室に向かって行く。
さて、俺はクーパーさんに話を通しておくか。
そう思い、宴会会場を見まわしてクーパーさんを探す。
クーパーさんは奥のテーブルでコウリュさんとマーチンさんと楽しそうに話をしていた。
「クーパーさんちょっといいかな?」
「これはリブ様。ここは毎日楽しいですね」
「ありがとう。それで少し話があるんだけど、ここだとあれだから向こうでいいかな?」
クーパーさん達は不思議そうな顔している。
「幹部やメンバーがいるところで話せない事?」
「そういう訳じゃないんだけど、みんなには決定してから話そうかと。でもその前にクーパーさんの意思を聞いておかないといけないんだ」
「ふ〜いいですよ?ただ、その前にひとつだけいいかな?」
「なにかな?」
「いつになったらそのクーパーさんをやめてくれるの?」
「ん?」
「ん?……じゃなくて!!私はリブ様の配下になりたいんですよ?みなさんみたいに家族と接して欲しいです!!」
クーパーさん達はコウリュさん達の盟主を探して同盟を抜けるまでは正式に俺の配下ではない。
今は友好関係を結んでいる状態だ。
「それは……」
「今日からクーパーと呼んでください!!」
酔ってるのか?
まぁ本人がそういうのなら別にいいけど。
「わかった。じゃあクーパーいいかな?後、マーチンさん達も……」
と俺がそこまで言うと
「私達はさんですか?」
とコウリュさんに睨まれてしまった。
「あ……はい……マーチンとコウリュ達もいいかな?」
これでいいのだろうか?
本人達が嬉しそうにしているのだからいいのか?
というか、ここの女性陣はなんか怖いな……
って!!俺が話をしたいのはそんな事じゃないんだけど!!
やっとの思いで5人を会議室に連れてくると席に座る。
「さて……わざわざここまで来てもらった理由なんだけど、クーパーに隣の国の王城を占領して王になって欲しい」
「え?」
自分は俺の配下に入る予定だったのに、突然王城を占領して王になれと言われて固まってしまった。
「リブ様!!それはあんまりじゃ!!」
「まぁ最後まで聞いてくれ」
俺はさっきの話を5人にする。
「そういう事なのですね。それでしたら協力させてもらいます」
「今ケインがフランとカイザーと話をしているから、ある程度の戦略が決まったらみんなに話そうと思う」
「了解しました。ふふふ、なんだか楽しみですね」
「ええ、今回は私も前線で戦わせてもらいます」
珍しくマーチンがやる気だ。
「という訳だから、今週中に占領して国を統合させないとだからよろしく」
「私達も明日から忙しくなりますね」
話し合いも終わり宴会場に戻ると、ケイン達も戻って来ていてみんなが俺に注目している。
さっきまで賑やかだった大広間は、今は俺の言葉を待つかのように静かだった。
「みんな聞いてくれ!!現在俺達は祭りの準備やテーマパークの計画で忙しいのはわかってる!!だけど、その祭りを無事成功させる為に不安要素を取り除こうと思う!!」
「その不安要素ってなんですの?」
「それは、祭りで浮かれてる所を誰かに攻め込まれる事だ」
全員の顔が真剣な表情になる。
「確かに、最近平和だったから気にもしなかったですが、ここは戦争がある異世界でしたわね……それで?どうやって取り除くおつもりですか?」
「今週中に隣国の王城を占領して統合しようと思う。ただ、今回の占領は俺ではできない。なのでクーパーに占領してもらう事になる。その攻防戦をみんなに頑張ってもらう」
「リブ様は参加されないのですか?」
「正確には参加できないだな。他の王候補は占領した王城に攻撃を仕掛ける事は出来るみたいだが、新規の王城を占領する事はダメらしい。だから今回はクーパーの元で戦ってもらう」
「そういう事ですのね?クーパーさんよろしくお願いしますわ?」
「ええ、頑張りましょう。でも戦略はケインさん達にお任せですけどね」
「という事だから、祭りの準備は一時休止して攻城戦に備えて欲しい」
「いえ、それには及びませんわ?リブ様?官僚達も馬鹿じゃないんですのよ?」
なるほど、大筋はこちらで決めて後は官僚や従業員に任せるってわけか。
「俺は今回留守番だから何かあれば相談して欲しいと伝えておいてくれ」
「わかりました。ではそのように」
いきなり始まった前回とは違って、今回はこちらから仕掛ける攻城戦になるわけだ。
相手にしてみればいきなり始まるのだから、こっちが有利な展開になるだろう。
心配はしていないが、油断もできない。
俺が参加できないのが残念だが、今のメンバーなら大丈夫だろう。
こうして、新たな王城攻防戦が開始される事になったのだった。