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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
プロローグ
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序章 始まりの時

一面に広がる草原……


顔を伝う心地良い風………


そして、目の前には見た事もない大きな壁に囲われた城……


「うん…… ここどこ?」


俺はここに来るまでの記憶を辿ってみる。


俺の名前は、伊達大和。30歳をちょっと過ぎたどこにでもいる普通のおっさんだ。

彼女いない歴=年齢で もちろん童貞である。


数日前まで小さな町工場で金属を加工して金型を作る会社で働いていた。

給料はそこまで高くはないし残業も多かったが、ブラックという訳でもない。


残業代はきちんと支払われていたし、

何より一緒に働いている人達もみんな良い人達だった。


だが、不況の煽りを受けて会社が倒産……


職を失った俺は、田舎に帰って父親の経営する小さな建設会社を手伝う事になった。


実家は、小高い山の中腹にある数十軒ほどの集落にある。

電車を乗り継ぎ、実家の近くのバス停で下車して歩いて帰っている途中だった。


舗装された道路はあるが、急いで帰っても特にやる事もなく暇なので、

せっかくだから、子供の頃よく遊んでいた山道の抜け道を通って帰ろうと思ったのだ。


大人になって体も大きくなったせいか、子供の頃スルスルと歩けた道でも、

木の枝を押し除け、伸びた草を踏み締めないと歩けないほど険しかった。


そして10分程登って来た所で、この場所に辿り着いたのだが。


「うーん……」


子供の頃にはこんな立派なお城はなかったはずだ。


もしあったとすれば必ず観光名所になっていたはずだし、

もっと有名だったはずである。


「俺が帰って来ていない数年の間に建てられた?」


いや…… 両親にも地元の友達にも、山の中に城が建設されたなんて話を聞いた事がない。


「とりあえず入ってみるか、もしかしたら新しい観光名所を作ろうとして、地元の人達が建てたのかもしれないし」


そう思い、城門の近くまで来て見ると更に驚く。


忠実に再現された城壁は立派な石造りで、高さ4メートルはあろうかという大きさだ。

外周には幅3メートル程の堀まである。


入り口には大きな跳ね橋がかかっており、門は空いていた。

その門を潜ると、その先に高さ3メートルほどの城壁がもうひとつあった。


中央に木で出来た門があり、こちらは閉まっている。


「今日は休館日かな?」


恐る恐る門の前まで行き確認しようと思った瞬間、門が勝手に開いた。


「自動ドア?」


重厚な音を立てて木の門が開ききると、そこには思わずどこの名城ですか?

と聞きたくなるほど立派なお城が奥に控え、手前の広い空き地に木で出来た小屋がポツンと建っている。


「あれが案内所かな?」


誰か人がいないかと小屋に入ってみる事にした。


小屋の扉を開けて中を見るとカウンターらしき物はあるが、ただそれだけでポスターやパンフレットの様な物はなく、人の気配もない。


「こんにちは〜」


「すみません、どなたかいらっしゃいますか〜?」


返事がない……ただの…………


どこかで聞いた事のあるセリフが頭の中に浮かんだがやめておく。


「しかし本当に誰もいないな」


こうなったら好奇心を抑えきれない。


城に行ってみよう!!


俺は小屋を出て、目の前にある立派なお城に行ってみる事にしたのだ。


城の前まで来るとやはり門が自動で開く。

すごい技術だな。とズシンと開く扉に感心しながら中に入る。


扉の内側には石畳のアプローチがあり入り口まで続いている。


そして玄関らしい場所に入った途端、横開きになっていた扉がピシャっと閉まった。


「えっ?」


一瞬の出来事で俺はパニックになる。


閉まった扉を開けようとするが何故かピクリともしない……

その事実が更に俺をパニックに陥れる。


「勝手に入ったから閉じ込められた?」


建造物不法侵入ってやつか?

入館料を払ってないから?

でも誰もいなかったし張り紙も何もなかったし……


訳がわからない……


このまま逮捕されて懲役?罰金?

そんなセリフが頭の中をリフレインする……


すると左手の台の上にあった古い本の様な物が目に入った。

一見すると下駄箱みたいな台の上には本が2冊乗っているだけである。


「何か助かる方法が書いてあるかもしれない」


藁にもすがる思いで、俺はその本の1冊を手に取ってみる。


表紙には、見た事もない文字が書かれていて全く読めない。

本を開いて中を見るが、やはり古代文字の様な文字が書かれており読む事ができない。


「終わった…… 」


せめて、料金表とか施設についての説明とかが書いてあると期待していた俺は、

絶望感を味わって膝からがっくりと崩れ落ちる。


すると、その振動でもう片方の本が、台の上から手元にポトリと落ちる。

裏返しに開いて落ちたその本の表紙は、やはり読めない文字が書かれていた。


「読めないんじゃ意味がないんだよ〜〜〜!!!!」


と半ギレ状態で本を投げようと手に取った瞬間、魔法陣のような物が描かれたページが光った。


突然目の前が真っ白になり、眩しくて目を閉じる。


すると次の瞬間、頭の中で声が聞こえた気がした。


『言語認識スキル…… 習得しました。』


ん?


何それ?


言語認識スキル?


俺、日本人で日本にいたはずなのに、なんで言語認識とかいうスキルが必要なの?

目を閉じた状態でプチパニックになった俺は、そっと目を開ける。


周りを見渡しても、崩れ落ちた時と状況は全く変わっていなかった。

ただひとつ違うのは、手に持っている本の表紙の文字が読めるという事だった。


【 技能の書 】


表紙にそう書かれている本の中を見ると、

今まで読めなかった文字が普通に読めるようになっていた。


そこには少し大きめの文字で


《 言語認識 》


と書かれていて、隣のページには魔法陣が描かれていた。


もしかして、これで本が読める?

そう思い、もう片方の本を手に取る。


すると表紙には


【 指南の書 】


と書かれていた。


きた〜〜〜!!


右手を天高く突き上げ、上を見上げながら、若干目に涙を浮かべて歓喜してしまった。


ゴホン、うん、気を取り直していこう。


誰に見られている訳でもないが、少々気恥ずかしくなった俺は、咳払いをひとつして

【 技能の書 】と 【 指南の書 】を交互に見比べる。


【 技能の書 】も気になるが今はとりあえず【 指南の書 】からだ。

気持ちを落ち着けてから、ゆっくりと本のページを開く。


「読める……」


さっきまで全然読めなかった文字がはっきりと読めるようになっていた。


ならばやる事は1つ。


「まずここがどこで、このお城がなんなのか確認しなければ」


【 指南の書 】は言ってみれば取説だった。


なになに? ふむふむ……


まず、この城に最初に入った人がここの城主であり、天守閣でこの城の名前を決定する。


次に【 技能の書 】で自分の名前、性別、種族、職業等を登録すると

それにあったスキルが与えられる。


って!!


なんだこれ!!


どこかのMMOかRPGみたいな設定だけど?


そもそも死んで転生をした覚えもないし、ゲームの中に入った記憶もないんですけど?

どこで、どう間違ったらこんなファンタジーな世界に入れる訳?


そして何よりも肝心な事が……


ここどこだよ!!!!


結局何もわからないまま、がっくりと肩を落としたまま重い足取りで、

【 指南の書 】に書かれていた通り、天守閣に向かうのだった。

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