表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

頑張って作った友達なのに

私に足りないものはなんだろう


あの子と私は何が違うのだろう


頑張ってるのに...頑張って真似もしたくないやつらの真似をしてるのに


どうして?─────────


「おっはー!」


「わ!びっくりした」

「驚かさないでよー」


柚乃は待っていた私の後ろから驚かそうと声を出して派手に登場した


「ごめんごめん、待った?」


「ぜんぜん」


「よかった。じゃあ、早速カラオケ行っちゃう?」


「行っちゃう!」


私たちは集合場所から目視できるほど近いカラオケに走っていった


「はあはあ」


息が早くなりながら、カラオケの部屋に入った


「あ、奈古」

「なに?」

「ドリンク私が持ってくるよ!」


そう柚乃が言ったのは私が立ったのを見てすぐだった


「あ、いいの?ありがとう。メロンジュース飲みたい」


「わかった!」


柚乃は、そう言いながらドアを閉じた


部屋はなんの音も立たない、まるでそこがカラオケじゃないと思わせるほどに静かだった


だが、私が当然何もしていないわけではない。私はただ、ずっと妄想をしていた。するつもりはない...はずなのに─────


「どうしよ。どうしよ。どうやって聞こう。柚乃にどうやって聞こう」


私は今日しかないと思っていた、いや。というより、今日が最後のチャンス。


「柚乃に...釜崎くんのことどう思ってるか聞かないと、」


「じゃないとこれ以上嘘は思いつかないよ...それに、つきたくないし。」


私が焦ってるのにはもちろん、理由があった。


「ここで聞かなきゃ、もう話題がなくなる。」


「もう、会えなくなっちゃう」


ガチャッ


「あ!ありがと!」


私は急いで顔を変えた


「ほら見て!私もメロンジュースにしちゃった!」


「ほんとだ!」


なんて反応するのが正解かわからないから、とりあえずどうにでもなりそうな言葉を放った。


「てかあれなんだね、まだ歌ってなかったんだ」


「あ、まあうん。」


「よしー、じゃあ歌っちゃうよ!」


「ああ、うん!」


私は家で何回も聴いて覚えてきた最近流行ってる曲を歌いまくった


1時間、2時間...


「あ、もうあと30分か!」


「そだね」


「じゃあ、次はっと...」


後、30分。この言葉に焦りを感じた私は気付くと釜崎くんの名前を口にしていた


「ねえ。柚乃?」


「ん?どしたの?」


「釜崎くんのこと...」


「あ!てか思い出した!釜崎くんにルーズリーフ貸してもらった授業の後のこと、ちゃんと謝った?」


「あ、あれは、」


あの時、私は気付くと周りにいる友達を連れて釜崎くんに話しかけていた。


その会話の中で私は釜崎くんに色々失礼なことを言ってしまった


それもはっきり、何を言ったか、全て覚えている。


でも、私は全てあの時の、あの陽キャの真似をした、そう心の中で言い訳をしていたのだ


「あ、謝った!」


嘘だけど...


「ああ、ならいいけどさ」


「それで、なんだっけ?なんか言いたかったよね、ごめんね遮って」


「私さ...」


今、言うべきこと、それは、それは。柚乃に聞きたいこと、それは。




「私、釜崎くんのこと好きになっちゃった」


違う!違う!何言ってんだよ私


「え?」


「だから、私何回も釜崎くんのこと話題に出してたんだよ。ねえ、聞かせて。」


「柚乃は釜崎くんのことどう思う?」


「え、どう思うって...まだ知り合って数日しか経ってないよ?なのに、私がどう思うとか」


「違う、それでも気になる、私は、聞きたい」


私はこんなんじゃないのに...


これじゃあまるで


釜崎くんと同じじゃん...



「じゃあ...普通?とか?」


「あっ、でも、」


「え?」


「この前、一緒に遊ぼって誘われたって言ったじゃん?あれは空いてたから行くことにした」


「そうなんだ。」


「なんか、ごめんね。何回もこんなこと聞いて。」


「いいよ全然!」


私は安堵して、段々と落ち着きを取り戻していった


「よし!じゃあ次はこれ!」


「いいね!」


時計はさっき見た時から5分動いていた


「はあ、疲れたぁ!」


「だね!いっぱい歌った」


「それじゃ、そろそろ出よっか!」


「うん!そだね。」


会計を終えて、カラオケから出ると、柚乃が話を切り出した


「奈古。」


「んー?なにー」


「もしさ、来週、私が釜崎くんを好きになっちゃったら許す?」


「えっ...?それは...」


「そっか!じゃあまあ適当に遊ぶから大丈夫!」


「え、あ。うん。」


「あ、てか私今日夕方からバイトだ!行かないと。」


「あ!オッケー!がんばって!」


「ありがと!」


「んじゃね!」


「ばいばい!」


柚乃はまた目視できるほどの距離にある駅に走っていった


「あ、そういえば、今日いつもより化粧薄めなの気付かれなかったな...」


「にしても、変な気持ち...なんだろ。これ。私が協力するって言ったのにこれで良いのかな」


「どうしよう。私、柚乃のこと嫌いになりそう。」


私は、光が灯り始める街を見ながら、ゆっくりと歩き出した

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ