第五十三話:神殺しと天使⑥
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頭の上の方からブツブツと呟く声が聞こえる。
フェンリルが空を見上げると漆黒の翼を広げた猫が宙に浮かんでいた。
――いた。
――あれは。
――悪魔。
――悪魔の猫。
「悪魔は滅ぶべし。悪魔の猫は討伐すべし――」
フェンリルは空に向かって雄叫びを上げた。
憤怒に満ちた雄叫び。
憎悪にまみれた雄叫び。
その怒りは空から聞こえる声の主、“悪魔の猫”に注がれていた。
“悪魔の猫”は強敵である。
フェンリルは本能的に気付く。
――滅せよ!
《悪評高き狼の姿!》
フェンリルの体が一回り大きくなる。
そしてフェンリルの放つオーラが薄紅色に変色し、そのまま業火の炎と化した。
その炎は勢いよく燃えながらフェンリルの全身を包み込む。
《鉄鎖のいましめ!》
空中に巨大な鉄の鎖が突如出現。
“悪魔の猫”の身柄を拘束する為に鎖は蛇の如く動き出した。
しかし鎖が猫の体に巻き付いた途端、木っ端みじんに破壊されてしまう。
そこにはドヤ顔でニヒルに笑う猫と月明りを反射して鈍く輝く猫の爪が――。
《鉄鎖のいましめⅡ!!》
再び空中に鎖が出現。
先程の倍の太さ。鎖の一つ一つが“悪魔の猫”と同じくらいのサイズ。
その鉄鎖は無駄のない素早い動きで“悪魔の猫”を囲う。
そのまま鉄球のように丸い形状になり、球の中心に“悪魔の猫”を封じた。
――滅せよ!
フェンリルは“悪魔の猫”ごと鉄球を自らの牙で噛み砕く為に跳躍する。
大きく口を開けると自身の体にまとう炎よりも更に赤い紅蓮の猛火が口の中から凄まじい勢いで漏れ出てきた。薄紅色の赤と紅蓮の赤。二つの赤が鉄鎖で出来た球を砕かんと牙を立てたその瞬間――。
ドカーン!
爆発して鉄球は四方に飛び散る。
すると、口が裂けたのかと見間違うほどに口角をグイっと上げて薄気味悪い笑みを浮かべる猫が、鉄球の中から煙とともに現れた。
想定外の事が起きたフェンリル。
体制を整えようと身をねじって空中から一旦地上へ戻った。
そしてすぐに技を繰り出す。
《魔法鉄鎖のいましめ!!!》
三度現れた鉄鎖。しかし今度は今までと違う。
一つ一つのパーツが火で出来ている不思議な鎖。火炎のチェーン。
しかもグレイプニールの数は一つではない。
数百のグレイプニールが出現。
初めから“悪魔の猫を”取り囲むように、整然と一定の距離を保ちながら遠巻きに並んでいた。
――喰らえ!!!
無数のグレイプニールは“悪魔の猫”を目掛けて一直線に飛んでいく。
それはそれは一斉に放たれた矢の如く。
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