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第二十二話:偶像と付箋③

 今回出現した渾沌はあまり動かなかった。

 また、我々に反撃する事なく一方的に攻撃を受け続けた。


 《救済の力を授かった人(キュウジンシンセン)》“魔狼”を発動中の山崎は口から炎の渦を吐く。


「ちょっと焦げたかなー程度だね。マジで耐久力ありすぎ」


 背中に乗る相棒の澤田(さわだ)が呆れるような声で説明する。


「もっと神殺しの魔狼らしい攻撃できない?」


「何だよ、神殺しの魔狼らしい攻撃って」


「ほら、こうガブッと噛み付いてさー」


「前に一度噛み付いたけど、渾沌ってアルミホイルを噛んだ時のような感じなんだよ。ぞわぞわして気持ち悪くなって、すぐに口の中を洗い流したくなる」


「そうなんだー。ラグナロクでオーディンを飲み込んだ時みたいにやっちゃえば良いのに」


「あれは(われ)じゃないから。あれは北欧神話のフェンリルだから」


 山崎は混沌の身体を覆う鱗に爪を引っ掛けながら器用に渾沌の巨大な身体を駆けのぼる。


 《救済の力を授かった人(キュウジンシンセン)》が現れ始めた草創期、徒党を組んで渾沌と戦う能力者は殆どいなかった。

 第一に能力者の人数が少なかった。

 第二に渾沌がどこの地域にどのタイミングで出現するか分からなかった。

 第三に渾沌と戦う為の拠点がどこにもなかった。

 第四にお互いの存在を積極的に知る機会を得られなかった。


 ある日を境に狼へ変身出来るようになった山崎。

 何故こんな体になってしまったのか、本人自身も分からず困惑した。

 誰かに相談する事も出来なかった。


 だがそれから間もなくして渾沌と遭遇。

 その時に感じた絶望感、嫌悪感、使命感。そして本能。

 渾沌を倒す為に授かった力だと無意識のうちに理解。


 その後同じように《救済の力を授かった人(キュウジンシンセン)》に目覚めた澤田とたまたま知り合い、コンビを組んで移動可能範囲に渾沌が出現した場合に限り共に戦うようになった。


 “魔狼”フェンリルを発動すると出来る事が大幅に増える。

 まずは見た目にイカツイ銀毛の狼になれる。

 人ならざるモノへ姿を変えるのは意外と楽しい。

 あとはファイヤーブレスを放てる事と超高速で移動出来る事。


 それと、何人くらい気付いているか知らないが、この能力は鍛えれば鍛えるほど、威力は向上し出来る技も増える。おそらく我の能力もブレスと高速移動だけでないはず。最終的には北欧神話に描かれているファンリルと同様の力を持つのではないか、そんな気がする。


 渾沌から世界を救済する力。

 その力を授かった者をこう呼ぶ《救済の力を授かった人(キュウジンシンセン)》。


 だが本当にそうなんだろうか。


 鍛錬を積めばいつか渾沌に爪痕を残すくらいは出来るようになるかもしれない。

 いずれ渾沌を倒す為の“救済の力”を発動させる人物が出てくるかもしれない。


 だが本当にこれは“救済の力”なんだろうか。


 あの日無意識の中で理解したこの能力を得られた理由。

 あれが真実だったのかそれとも……。

 山崎は疑問を持たずにいられなかった。



この話の続きが読みたいと思って頂いた方は、

ブックマークや広告の下にある評価をして頂けると大変嬉しいです。

今後のモチベーションアップに繋がりますのでよろしくお願い致します。

<(_ _)>

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