暗殺者の扱い
「とりあえず様子を見ようと思うんだ。なぜ狙われてるか。
分かるまでね。」
「ですが坊ちゃま。危険過ぎます。いまから縛り上げて
全て吐かせれば…」
「いま捕まえて縛り上げたら僕達は衛兵に囲まれない?
暗殺者って証拠もないし、街中で揉めるとね…。」
「た、確かに。」
「まあ、あの人は正面からは来ないよ。後ろからとか
毒とか、そんな感じの暗殺者みたい。いざとなれば…ね。」
「かしこまりました。しかし前に伺った坊ちゃまのその力。
鑑定でした?便利ではありますがどこまで信用して良い力なのですか?」
「ちゃんと話してない俺が悪いね。鑑定は間違える事は
まずないよ。鑑定を使うとその人の名前、称号、年齢が
分かるんだ。」
「そんなにハッキリ分かるのですか…?」
「うん。実演してみようか?」
「実演…ですか?」
「例えば…あ、あそこの帽子を被ってるおじさん。
名前はルイスさん。60歳丁度だね。称号は街の腕利きパン職人だね。じゃあ確認してみよう!」
「確認って???」
「お久しぶりです!ルイスさん!いや〜久々ですね。
こんな所でルイスさんに会えるなんて。」
「え?えーとどちら様でした?」
「やだなぁ。ルイスさん昔近くに住んでたマイクですよ。
覚えてないですか?まあ随分と前の事ですし、俺も
小さいかったから仕方ないですね。あ〜ルイスさんのパンが
また食べたいですよ。」
「マイクか…マイクねぇ…パンならいつでも買いにきてくれ。
店は昔と変わらずオンボロだがやってるよ!まあ、
最近は年のせいか朝が辛くなってきたがな。」
「無理しないでくださいよ?確かもう60になる位でしたね。
体を大切に。いつまでも美味しいパンを焼いてくださいよ?」
「ありがとう!マイク。頑張るさ。今度店に来たら
厨房の方に声かけてくれよな!サービスするぜ?」
「ありがとう!それじゃあ。お元気で!」
「おう!お前さんも達者でな!」
会話を終えてマチルダの方に戻った。
「坊ちゃま…凄いです。その力が有ればスパイでも
暗殺者でも見透かす事ができますね。」
「そうゆう事になるね。だからアルフは偽名で
ギレトという暗殺者で間違いない。」
「分かりました。最大限の警戒をしておきます。」
俺達はアルフの動向に備えて色々な打ち合わせを
しながら馬車を待った。
「お待たせ致しました。ダイチ様。馬車の荷卸に
手間取りまして。その分中は広くしておきましたよ。」
見てみると馬車の中にはほとんど荷物がない。
まあ、偽商人なんだからそりゃそうだよな。
大方、雇い主への中間報告の連絡でもしてたんだろう。
「お手数おかけします。では遠慮なく乗せてもらいますね。」
「汚い馬車ですがどうぞどうぞ!」
俺達はアレフの馬車に乗った。
「では出発致します。落ちない様に気をつけてくださいよ。」
ようやく出発だ。楽しみだった冒険の始まりだったんだけど
なんか余計な事がプラスされたな。
直ぐに城門に到着した。俺達は身分証を見せて積荷の確認を
したら直ぐに許可が出た。まあ、積荷が殆ど無いからね。
「時間にして3時位で《奈落》に着きますので
くつろいでいて下さい。そこにある木箱の中身は飲み物と
食べ物が入ってます。良かったら食べて下さい。」
「気を使わせてしまってわるいね。じつはさっき市場で食べた
ばかりなんだ。お腹が空いたらいただくよ。」
俺は木箱の中を一応確認した。サンドイッチと飲み物が入っていた。毒入りだろうか…?確認のしようがない…ん?まてよ。
鑑定って人だけとは限らないよな。やった事ないけど…。
鑑定。
〚サンドイッチ〛
備考» 食べ物。制作者ギレト
出来た。毒はないのかな?毒が表示されるかどうかが
わかんないからな。飲み物もしておくか。鑑定。
〚毒入りレモン水〛
備考» 飲み物。睡眠薬入。制作者ギレト
あ〜有った…。こっちか。睡眠薬か…。即効性の毒じゃない
んだな。そりゃそうか、こっちは一級二人だ。
一人でも毒を逃れられたら向こうの負けだ。
気づきにくい毒にしないといけないわけだ。
これならただ眠るだけだ。不審に思われる確率は
低くなる。
俺はマチルダにこの事を伝えて飲まない様に伝えた。
マチルダの目つきがめちゃ怖くなったがまだ様子を見ようと
伝えて落ち着かせた。
そのまま警戒しつつ、馬車は進んでいく。
「そう言えばアルフさん。報酬をお支払いし忘れてました。」
「あぁ…帰りの時でいいですよ。ダイチ様ですからね。
他の冒険者なら割手形で頂きますが。信用が
違いますからな。」
マチルダに教えて貰ったが、普通はお互いの不正や損失を無くす為にギルド発行の割手形を使うらしい。
例えば往復の代金を前払いすると馬車側が代金を持ち逃げして
迎えに来ないトラブルになる事があるらしい。
逆に後払いにすると、冒険者が乗り逃げ、もしくは冒険者が
ダンジョンで命を落とした場合。馬車側に損害がでる。
それを防ぐ為に2枚に割った手形が使用される。
両方が無いと基本的に現金化出来ない。冒険者が
戻ってこない場合、片方の手形でもギルドに確認をして
もらえば現金化できる。
馬車側が迎えに行かず現金化しようとしても
冒険者側の割をギルドに提出すれば不正が発覚する。
まあ、大金ではないのでめったに犯罪まちでして利益を
得ようとする者は少ない。
「そろそろ《奈落》ですよ。お帰りはまた迎えにきますが
忘れ物が無いようにお願い致しますよ。」
結局、飲み物以外何もしかけてこなかったな。
まあ、それはそれでいいんだけど。
「坊ちゃま。見えてきました。あれが《奈落》の
入口です。」




