出発
空がかなり明るくなってきた頃。
今俺達は馬車に乗る為に広場を目指して歩いていた。
街はまだ静かだが、あちこちの家の煙突から
煙が出ていた。みんな朝が早いんだな。
そう言えばこの世界にも季節が有る。
今は春だ。こんな朝方は肌寒い。
俺はいつもと同じ様な服にフード付きのマントを
被ってるいる。魔力を使い編み込んでいるらしく
全然寒くない。貴族で良かった。ファンタジー。
ダンジョンに行くのに普段着でいいのかって?
色々考えたんだけど硬い物や重いもの着ると動き
にくいんだよね。一応剣士だし、動きやすさを
重視すると軽装になるんだよね。
しばらく歩いて行くと市場に到達した。
この王都は王城を中心に北側に神殿や兵舎などの公共施設が
ある。更に北側は貴族街となる。
王城の南側には貴族向けの商店や飲食店と商人や富豪の
邸宅が並ぶ。更に南はギルドや組合、市場なんかが並ぶ。
更に南は平民街となる。この平民街の終りに広場と
城門兼関所が有る。
つまり王都の端から端に移動中な訳だ。
北側に城門が無いわけじゃない。
北門は貴族、王族用なのだ。しかも申請しなきゃ使えないし、
自前の馬車を使用する事になる。
つまり父上に借りないといけない。
更に言うと貴族の馬車は無駄な飾りや貴族紋章が付いている。
野党や山賊の的になってしまう。なにより
そんな冒険者は居ない。
以上の理由で他にある西、東、南の門を使用して
一般的な馬車で《奈落》を目指す。
まあ、《奈落》行きは基本的には無いので
チャーター便になるらしい。帰りも迎えにきてくれる
ので安心だ。
「坊ちゃま。市場の屋台で串焼きでも買いましょうか?」
起きてからまだ朝食を食べてないからかマチルダが
気を回してくれたようだ。
「そうだね!あ、あれなんか良くない?美味しそうな
お肉だよ!」
「バリド牛の串焼きですね。」
初めて聞く名前の牛だな。でもおいしそ〜。
「おじさん!これ二つ下さい。」
「あいよ!ちょっとまってな。」
いい匂いだ。肉をタレに付けて焼いている様だ。
なんのタレだろうな。焼肉のタレみたいな見た目と
匂いだ。
「あいよ!おまちどうさま!2つで500ピースだ。」
俺は財布から500ピースを渡した。
貴族だからだろうけど、自分でお金を払うって事を
今まであまりしたことがなかったんだ。
「まいど!またごひいきに!」
だからなんだか新鮮な気分だ。前世では当たり前の
事だったのにな。
まあ、マチルダに嫌な顔されるけどね。
マチルダ達使用人の仕事を奪う行為だかららしい。
しかし、冒険者として動く時は極力メイドではなく
先輩冒険者位のポジションでお願い!って昨日
頼んだんだよな。
だって全部世話されたら冒険じゃないんだもん。
「はい、一本はマチルダの分。」
「わ、私の!?そ、それは坊ちゃまのものです。
私は自分で買いますので…。」
「えぇー。一緒に食べよう!昨日約束したでしょ?
はい。おとさないでよ。」
マチルダに強引に串焼きを渡す。渋々受け取るマチルダ。
彼女にとってはまだ抵抗があるようだ。
マチルダはメイドだ。まずメイドが主人と食事を共に
する事はない。だから違和感があるのだろう。
だけどそれじゃあこの先、冒険者を一緒にする上で
不都合が生まれる。
昨日の約束はこの為でもある。今からは一緒に冒険者する
仲間なんだから。
「分かりました。では失礼ながら頂きます。」
「マチルダ?今は仲間でしょ?一緒に食事するのに
失礼も何もないよ。」
「そうでしたね…。分かりました。」
まあ、納得してくれた様だ。
「あ、あれも美味しそう!サンドイッチかな?
馬車の中でも食べれるしかってくるよ!」
「あ、坊ちゃま!次は私が買ってきます。」
「いいから、いいから。マチルダは食べてて。買い物が
楽しいんだ。」
「わ、分かりました…。」
貴族生まれは恵まれてるんだけど、現代人としては
無駄の多さを感じる。
さて、平民街にはいった。ここも初めて来る所だ。
思ってたより割と普通だな。もっと貧富の差みたいな物を
感じるかと思ってたけどまるでジ○リの世界だ。
まあ、ここは王都の城壁の中だからね。平民の中でも
裕福な人々なのかな。外じゃそうも行かないかもね。
しばらく歩いてようやく門が見えてきた。広場も近い
みたいだな。馬車があちこちに停めてある。
宿屋も多く立ち並んでいる。
そして道が開けた。
「おー!ここが広場が!思ってたよりかなり広い!」
「はい。ここが広場になります。馬車を探して参ります。
坊ちゃまはあちらの噴水でお待ち下さい。」
「わかったよ。」
俺は噴水のへりに腰掛けてマチルダを待つ事にした。
マチルダが離れた所で交渉している。
その時俺の前に一人の若い男性が近づいてきた。
「いや〜良い朝ですね。ああ、私は怪しい者では
ありませんよ〜。アルフと言うしがない商人です。
以後お見知り置きを。ダイチ様」
!!!
「なぜ俺の名前を?」
「商人と言うのは商品を仕入れて売るだけでは
成り立たないのです。それだとただの運び屋ですからね。」
「情報も商売のうち…て事?」
「さすがはダイチ様。情報どうり、頭脳明晰でらっしゃる。」
う〜ん。典型的な怪しさ…。何者だ?鑑定。
〚ギレト・ナギウス〛
称号» 無音の背切り・暗殺者
年齢» 25歳
マジか…




