鍛錬
俺達は帰りの馬車の中でおおよその
これからの予定を決めていた。
魔法、剣術はマチルダが毎日教えてくれる。
属性違いの魔法はマチルダの経験と本などで。
剣術は木剣にての訓練だ。
一般的な学問、一般的マナー、等は
新たに家庭教師を父上が用意してくれる。
5歳児に対して超英才教育と言えるだろう。15歳の
成人までに必要と思われる事は全て習得しなければ
ならない。大丈夫かな?
まあ、前世の教育が役に立ってくれる事を祈るばかりだ。
「坊ちゃま?何か不安でもございますか?」
考え事をしていたらマチルダが心配そうに見つめていた。
「いや、そうじゃないよ。成人までにやること沢山あるなーって思ってたんだよ。まあ、10年もあるしなんとかなるよね。」
「はい、坊ちゃまは優秀なので問題無いかと。」
「ありがとう。」
「しかし坊ちゃまが賢者に成られるとは…驚きましたが
なんとなく納得もする様な…でも私も誇らしいです。」
「そ、そんなにかしこまらないでよ!俺は俺だよ。
魔力が賢者と同じってだけで俺が偉いわけでも
立派になったわけでもないんだから。」
「しかし坊ちゃまがこの国の、いえ。人類の宝なのは
間違いありません。足りない物はこれから補えば
十分坊ちゃまなら立派な賢者に成られるでしょう!」
なんだろう…賢者と分かってから皆との距離を感じる。
望んだチートとはいえマチルダと距離を感じるのは
辛いな…短い人生だけど、一番近くに居てくれた人だ。
距離が開いていく感覚はなんだか辛いな。
「マチルダ。俺が賢者だと知ってからなんか
冷たいよね。」
「そ、そんな事はございません!坊ちゃまの高貴さに
釣り合うとは思えませんが身を粉にして支えて参ります。」
「それ!その他人行儀に言い方!なんでそんなに
よそよそしいの?俺が賢者だと他人なの?」
「そうゆう訳では…ですがその…格が違うといいますか、
私と同じ人間とは思えないと言いますか…」
「なるほど、じゃあマチルダは俺が化け物になったと
感じるわけだね。」
ちょっとイジワルを言ってみた。
「ば、化け物だなんて滅相もない!神々しさは感じますが
微塵もそのようには思っておりません!」
「俺にとってはさ、神様も悪魔や化け物もみんな
理解の枠の外の存在だよ。そして、普通の人は理解
出来ない者には恐怖を感じるよね?
マチルダは神々しいって言ったよね?
マチルダが悪い意味で言ってないのはわかってるんだ。
だけど俺はマチルダの理解出来ない者になって
しまったの?だとしたら悲しいな…普通に俺を見てほしい。
何も変わってないんだよ。5年間マチルダが
母親代わりに育ててくれたダイチって人間なんだよ?」
「坊ちゃま…」
「元のマチルダ母さんに戻ってくれない?」
マチルダは目を瞑り自分の両頬を叩いた。
「坊ちゃま!私が間違ってました。悲しい思いを
させてしまいました。以降は考えを改めます。」
マチルダの目から強い決意を感じた。
「ありがとう!」
「では坊ちゃま。早速ですが、明日からの鍛錬について
話を詰めましょ。言っておきますが私の授業は
スパルタですので覚悟して下さいませ?」
「げ。お、お手柔らかにね…」
このあとマチルダと笑顔を交えた打ち合わせをして
その日を終えた。
翌日、朝食を終えた俺はマチルダと剣術の稽古を
雑学を交えながら行った。
昼前にはクタクタになっていた。
そこから魔法の訓練だ。俺の魔力保有量はかなりの
物らしく、そこが見えない。剣術みたいにへばる事は
なく昼ご飯の時間。
昼飯を食べてからも魔法の訓練だ。実戦魔法も織り混ぜて
行って行く予定だ。
午後のお茶の時間で終了!
マチルダと今日の成果と反省を話ながらお茶を
楽しむ。
数日後にマナーや一般的学問を教えてくれる
ラナーク先生が来てくれた。
午後のお茶の後は学問の時間だ。
ラナーク先生は年配のジェントルマンって感じの人だ。
何処かで長いこと執事をしてたらしい。
年齢的に仕事が辛くなってもう辞めたみたいだ。
勉強を教えるだけならって事で来てくれている。
当に紳士って感じでカッコイイ!
こんな毎日をこれから過ごしていく訳なんだけど、
魔法も剣術も。もちろん貴族のマナーや学問。
全てが新鮮で映画の中に入り込んだかの様な感覚で
ワクワクがとまらない。
前の世界じゃ感じる事が無かった感覚を
今は楽しんでいる。正確には前の前の世界だな。
異世界転生最高じゃん!
ありがとう!女神アーリントン!
色々文句言ったけど、今後はアーリントンを主神として
崇める事にしよう!
いよいよ、俺の異世界生活の本当のスタートだ!
そして9年と少しの月日が流れた。




