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転生@転生  作者: ナヴァール
宇宙@転生
12/41

帰り道

「カノン君…なぜ君がここに…。」


「私はわからず屋だからです!」

カノン君は笑顔でそう答えた。顔は涙やらなんやらで

ぐちゃぐちゃだ…。だけど心底奇麗だと思った瞬間だった。


「何をやっているんだ…もう脱出艇はないんだぞ…」


「必要有りません!私は艦長と共に最後まで戦います!」


「ホントにわからず屋だな…」

俺は苦笑いしながら言った。


「私の初恋の人なんです!艦長は…。

十年前にパレードの時にお見かけした英雄。それが

真田艦長でした。アースに迫る隕石群から

艦隊を率いて

救った英雄。

あの時もアースは絶望に包まれてました。

数多の隕石がアースに迫って、弾薬も足りない、

艦の数も足りない。それでも諦めなかった英雄は

見事にアースを救ってくれました。

隕石の数は1万

対して

ミサイルは3000発。圧倒的に不利でした。

詳細は一般公開されてませんでしたが、

士官学校に入ってその戦術を知り

顎が外れるかと思いました。

当てて破壊するのではなく、隕石近くで爆発させて

一度に何個も隕石の軌道を変えた。

結果、地上まで到達した隕石はゼロでした。

私は再び英雄の偉大さを知りました。」


「ありがとう。でもそんなにカッコいいもんじゃないよ。

10年前もおじさんだしね。

必死になって打開策を検討し、より確実なモノを

選んだ。ただそれだけだよ。実際は心臓が飛び出る思いで

やってたんだよ。」


「それでもです!難しい局面を乗り越えたのは事実で

アースの多くの人を救ったのも事実です。

その中に私も居ます。艦長はアースの多くの人々にとって

命の恩人なんです。そして今、1度ならず2度までも

命のを救ってくれようとしてます。

そんな恩人を一人で行かせるわけないでしょ!

行かせていい訳ないでしょ!」

カノン君は大粒の涙を流して、自分の過去を

交えながら話してくれた。


「ありがとう…ありがとう。しかし、こんなおじさんで申し訳ないが共に歩んでくれるかい?」


「無論です!これ程名誉な…いえ、これ程嬉しい事は

有りません!」


「ゆっくり話せるのも最後だ。私の話も聞いてくれるかい?」


「ええ!もちろん。」


「頭がおかしくなったんじゃないかと思われるかもしれないので誰にも話せなかった事なんだか、私には前世の記憶や

自我が強くある。19歳で事故死した後に女神に会ったんだ。これが駄女神でね〜。転生させてくれるって言って

転生させて貰ったんだ。それが今の私だ。この19歳の記憶を思い出したのがついこの間なんだ。だから感覚的には

49年生きた後に19年生きてまた49歳に戻った感じた。

まあ、バカバカしい話だろ?」


「確かに信じがたい話ですが、艦長がこんな状況で

嘘をつく意味が有りません。信じます!」


「あはは。ありがとう。だから年齢はカノン君より上

なんだが精神年齢は君より幼い。49歳の記憶が有るから

ここにいるだけだ。無ければただの若造だよ。

とっくに逃げ出してるよ。」


「艦長は今ここにいます。それは事実で、それが真実です。

記憶が無くても艦長ならここに居たとおもいます。」


「買いかぶり過ぎだ。」


「ですが若い艦長にも会ってみたいですね〜。」


「君の中の私はかなり高評価のようだね。ありがとう。」

その後も二人は何でもない話をし、笑い合った。

心地よい時間だった。もっと前に色々話しておけば…

ってこの状況でタラレバを言っても仕方ないな。


「さて、カノン君。もっと話していたいがそろそろ時間だ。」

俺は真面目な顔でカノン君を見つめる。

「そうですね。行きましょう!やり遂げましょう!」


「ああ!」


俺は《月花》の舵を取り《大地》に近づいて所定の

ポイントに近づく。隣を見るとカノン君の手が震えていた。

怖い…だろうな。俺だって怖い。自分の手も震えていた。

「大丈夫?…なわけないな…。」


「た、大丈夫です。そうだ!艦長お願いが有ります!」


「なんだい?」


「手を…。手を握ってくれませんか?その…震えが止まらなくて…。」


「こんなおじさんの手でいいなら。しかし、私も震えてるがね。」


二人はクスッと笑い手を繋いだ。

こんな状況だからか、人の温もりは安心感を与えてくれる。

震えが少し落ち着いた。


「私も助かったよ。震えてボタンが押せるか心配だったんだ。」

艦は所定のポイントに到着した。後はボタンを押してプログラムを起動させるだけだ。カノン君はまだ震えていた。


「だ、だめだな〜私は…とまらないですね。」


「当たり前だよ。こんな状況だ、君は若い。

まだまだやりたい事も有るだろ。それが全部叶わないなんて

何よりも不安で恐怖だろう…。」


「全部…叶わない…。いえ!叶います!アースを救うと言う

願いは叶えます!必ず!それに……」

カノン君は突然抱きついてきた。体がガクガク震えてる。

出来れば彼女だけでも助けてあげたい…。だけど

方法が全くない。


「カノン君…。」


カノン君は顔を上げて俺を見つめる。そしてなぜだか

目を閉じて唇を突き出し、俺の唇と重なる。

俺は驚きのあまり固まっていた。


「もう一つ夢が叶いました!」

カノン君は顔を真っ赤にしてそう言った。

もう震えていない。俺も震えが止まっていた。


「さあ、艦長!行きましょう!」

「そ、そうだな。一緒に押そう。」


二人は抱きしめ合った状態でボタンを押した。

艦のエンジンが唸り、艦全体が振動し、何物も遮れない

光が溢れ出し、視界を奪う。

お互いの感触だけを残し…


やがでそれも消え、意識が途絶えた…



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