7_何を聞いてもダメ
「で、プロゲーマーって何してるんだ?」
俺は服を着た幼女に尋ねる。
「げ、げーむしてる。プロゲーマーだから」服を着た幼女が答える。
俺と目を合わせないのはきっとそういうことなんだろう。
これ以上、追及するのは酷か。
「あとは?」
「配信とか」
「嘘こけ。あんな暴言ネット回線に乗せられるか」
「嘘じゃないもん。今も配信中」パソコンらしきものは無いが、今はゲーム機だけでも配信できるのか?
「ご両親はこのこと知ってるのか?」
「ううん。そもそも居ないから知らない」
これは、気の毒なことをしてしまった。
「そ、そうか。あの美人なお姉さんと二人暮らしか」
「うん。でも、お姉ちゃんとも実の姉妹じゃないの」
またしても、デリケートな部分に触れてしまった。一歩二歩と連続で地雷を踏み抜いてしまった。大学でマインスーパーを履修していなかったことが悔やまれる。
「そ、そうなんだ。でも、あれだなあんなに美人な人と一緒に暮らせるなんて、羨ましいなぁあははは」
「なら、将来の夢、そうだ将来の夢はなんだ!? 世界一のプロゲーマーか?」
「おなか一杯食べること」
「そうだよな! 美味しいもの腹いっぱい食いてぇよな! うん! 最近よかった事なにかあるか?」
「殴られなかった」
愛おしい。なんだか愛おしいぞ、この人生地雷人間。何聞いても爆発する。
でも、そこがそこが愛おしいんだ。
「分かった。俺がお姉ちゃんにガツンと言ってやる」
俺は正座を解いて立ち上がる。手には握り拳。
「待って。殴って来たのはお姉ちゃんじゃなくて、学校の先生。もういないけど」
「学校の先生か。そっか」結局、悪いのは大人なんだよな。
お前、なんかジュースでも飲むか、と言いかけて止まった。
「名前、聞いてもいいか?」
幼女は自分の顔を指さす。俺は一度うなずく。
「彩。霧景大彩。今年で十九歳。おじさんは?」
ロリじゃ―――――ないんかい――――。
きっとあれだ。中学校で教師に暴力を振るわれてそれ以来引きこもりになり、ろくに運動もしていなかったので発育が十分になされず、また人と関わる機会も減ったため言動が子供っぽい、と。
これで行こう。
なんだか、ロリよりヤバい気がしてきた。
「おじさん」
くいっくいっ、と右の袖を引っ張られた。
「名前、教えて」
「あぁ、名前な名前。えー俺は色無透。最近隣に越してきた。よろしくな」
「年齢は?」
「これからよろしくな」
「あっ。はい」
親睦の握手を交わす。相手がロリじゃないと分かった以上、そこまで恐れる必要はない。
「透さん」
「なんだ」
「最近よかった事、もう一つあった」
「もう一つ?」
「うん。それはね」
「面白いおじさんに会った」
まー、あどけない笑顔だった。
この父性たらしが。
「何か飲み物飲むか? ジュースとか」
「いいの!? ナタデココジュースでもいい?」
「ああいいぞ」
「やったー!! あ、お姉ちゃんおはよう!」
幼女が俺越しに声をかける。また、その手か。
「その手にはもう乗らないぞ」
と思いつつ、一応振り返る。
そこには見事なプロポーションの女性が立っていた。
「あんたの部屋。なんか嫌」
「す、すみません。あ、何か飲みますか?」
女性は少し考えた後
「アロエジュース」
姉妹だなと思った。