4_隣人に死を
多分平日。いや、今日はなんか祝日な気もする。
俺はいつもと気分を変えて、天井のシミではなく、畳の境目をなぞ
「うごおおおおおおおおおおおおおおお!! 殺したああああああああ!! 殺って殺ったああああああああああ!!」
今日も隣人は元気だ。
昨日したためた手紙は昨日のうちにトイレに流した。ケツ拭いて流した。あんなもん送れるわけがない。掃溜めに住んではいるが、この精神は英国騎士よりも高潔なのだ。
隣人が規則正しく暴言を吐き始めるせいで、俺も早寝早起きの生活を強いられている。いい迷惑だ。二度寝が出来なくて何が無職だ。社会不適合者だ。早起きしたって一日が長くなって辛いだけだ昼間は嫌いだ。
「ざまああああああああああみろおおおおおおおお!! カス・カス・カス・カスウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥウゥ!」
狂喜の声に、俺は壁を見る。
この向こうに、俺の、みんなの、無職生活を邪魔する奴がいる。
こいつに全部奪われた。
二度寝も、寝坊も、職も、住まいも。
全部奪われた。
「雑っっっっっっっっっっっっっっっっ魚!! 雑っっっっっっっっっっっっっっっっ魚!! 雑っっっっっっっっっっっっっっっっ魚!! イキってんじゃねぇぞクソガキ!!」
人生を奪われた男はどうするべきか。
奪われっぱなしで耐えるのか。
「はいぃぃぃぃぃい私の勝ちいいいいいいいいいいいいい!! 雑魚の負けええええええええええ!! ウオッツ!! ウオッツ!! 永遠に君を~愛せ~~~なくてもいいか~~!!」
いつだって悪いのは俺以外の奴等だった。
社会、不況、それにオイルマネー、不労所得。
しかし、相手があまりにも強すぎた。
だが、今回の相手は
「ぷぷぷぷぷっ!! もう終わりでちゅかあああああ? ニートは社会のごみなので早く消えてくらはーーーーーーい!! ピカチュウ!!」
立ち上がり、ワンカップを飲み干し、外へ出て、隣室の前へ。
とりもどせ。全てを。
「何がニートじゃ貴様も同類だろがああああああああ!!!!」
ドアを鈍銀の右足で蹴破る。
衝撃で土煙が舞い上がる。
俺は構わず前に進む。
土煙が晴れるとそこには
「幼・・・女・・・だと?」
可哀そうにプルプルと震えていた。
俺は勝ちを確信した。
騒音は嘘のように鳴り止んでいた。