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恋人の元へ ―命名!鯉乃めぐみ誕生。

 巫女は腑に落ちずモヤモヤしていた――

  

 結局「別れましょう」とか「もう終わりにしましょう」といった決定的な別れの言葉も無いのに見事に振られたとか、単なる思い込みではないのかと思った。


 只、連絡先が変わって連絡が出来なくなった事と、彼女からも連絡が無い事が気になっていた――


 津村はそれを察した――


「オレと彼女とは幼馴染でね、まぁ、相手の考えている事は大抵分かるのさ。連絡が無いと云う事は……そういう事なんだよ。だから、こちらから学校に連絡したり、実家を訪ねたりしない事を彼女の方も良く分かっているんだよ」


 そう言い終わると津村は無言で草津JCTから名神高速道路/西宮線に入った。山並みの景色から徐々にビルやマンションが視界に入って来た。琵琶湖の南を過ぎると一気に防音壁に囲まれて、そこが京都だと知らせていた――



 津村は自分が原因で振られたと分っていても、彼女から直接「さ よ な ら」と言われるのが怖かった。


 出来ればこのまま終わりにしたい、消えてしまいたいとさえ思っていたが、巫女とドライブをした事で彼女との楽しかった日々を思い出し、自分にとって今日が最後の日であり、今日しか思いを告げる事が出来ない、そう思うと覚悟が出来た。


 すると、不思議なことに何処からか「もりもり」と勇気が湧いてきて、会いたい気持が最高潮になっていた。そして、これまでの事情をきちんと説明して自分の口で別れの言葉を告げようと心に誓っていた。 


 西宮ICから阪神高速三号神戸線に入ると、酷く渋滞をしていたが、呪文のおかげで何も気にせず一気に駆け抜ける事が出来た。垂水JCTをくるりと回って通過すると、いよいよ明石海峡大橋が見えてきた。


 巫女が思わず声を上げた――


「大きな橋ね、綺麗な空と海! とても壮快で最高な気分!」

 

「天の国の軌道エレベターには敵わないけど、巫女さんと一緒に居るからなのか橋のデザインが何だか神聖に感じるよ。淡路島を過ぎればもう直ぐ四国だよ」


 東京を出発して既に二時間が過ぎていた。ふたりを乗せた車は快調に走り続けた――


 神戸淡路鳴門自動車道は淡路島を縫う様に蛇行していた。


 淡路ICを過ぎると津村は案内をした。

「国営明石海峡公園を過ぎて、直ぐに子午線のモニュメントが右側に出て来るから見逃すなよ、一瞬だからな!」


巫女はケータイのカメラを準備して構えていると、遠くに子午線のモニュメントを発見したが、そのスピードから慌ててシャッターを切った。


 津村が声を上げた。

「おい、撮影が上手だな、完璧だよ!」そう言って関心すると、更に案内をした。


「次は室津で、その次は洲本、洲本を過ぎて少し走ると南あわじ市、淡路島南ICを過ぎると、いよいよ大鳴門橋が見えて来るよ」


 太陽光線に海と空と山の緑がキラキラと輝いて、島の景色を映し出し、いつまでも飽きる事無く無心で眺めていられた。島の清々しい空気と、爽やかな風が二人の気持ちを晴れやかにしていた。


 淡路島を僅か十分で走り切り、大鳴門橋を渡り四国入りをした。高松自動車道を少し進むと板野ICで降りて一般道を走り、旧吉野川を渡ると藍住ICから徳島自動車道に入った。津村は一気にアクセルを全開にした。静かな山並みを抜けて吉野川を渡ると、川之江東JCTから南下して高知自動車道に入った。


 津村は上機嫌で南国IC迄の道のりを話した。

「此処からはトンネルのオン・パレードだよ。法皇三千百二十メ―トル、大影千二百九十メ―トル、黒田千八百四十メ―トル、総野二百二十メ―トル、笹ヶ峰四千三百メ―トル、刈谷三百四十メ―トル、立川七百十メ―トルに続いて、三本連続トンネルが、一の瀬第一、千二百三十メ―トル、第二、三百二十メ―トル、第三百六十メ―トル、その後、川口二百七十メ―トル、津家五百二十メ―トル、堂々谷八百七十メ―トル、それから四本連続トンネルが桧生二千五百四十メ―トル、名神三千七百三十メ―トル、馬施千二百二十メ―トル、繁藤千三百八十メ―トル、残りが平山千三百八十メ―トル、曽我部三百四十メ―トルで、全てを合計すると、全長が二万五千七百八十メ―トルと、その長さに驚くだろ!」

 

 そう言って巫女の方を見ると、一生懸命、写真に収めていたので声を出して笑ってしまった。


 巫女は淡路島から無言だった――


 NEWPASA静岡で買った地域限定のお菓子や、たこ焼きを夢中で食べていた。そして時折、気に入った風景の撮影をしていた――

 

 津村はハンズ・フリーフォンでホテルに連絡をした。直前の予約で宿泊が可能か人数を告げて確認をすると「お部屋の御用意が出来ます」と良い返事が返って来たので、一緒に花束を注文して通話を終了した。


「オレと君は社長と秘書の関係だからね。宿帳には代表でそう記入しておくよ」


「宿帳とは仏教に於ける閻魔帳の様な物かしら?」


 津村は笑った――


「宗教は関係無いよ、旅館業法で定められていて、氏名、住所、職業などを記入しなければならないのさ」


「住所は天の国、高天原だけど?」


「住所は適当に書いておくから大丈夫、職業は会社名を書くから安心して良いよ! あっ、そう言えば名前を聞いてなかったな、君の名は?」


「名は、エニシムスビノミコト……職業は、恋の女神……」


津村は聞き返す事も無く返事をした――


「あぁ、分かった!」


 暫くすると出口が見えてきた。南国ICを下りると巫女が呪文を解いた。半透明の景色の色彩が鮮明になると、津村の記憶も鮮明になって行った。国道三十二号を南下して笠ノ川川と国分川を渡り、国道五十五号を進むとホテルが見えて来た。


 津村は駐車場に車を停車するとエンジンを止めた――


「まぁジャンプ・スーツ姿の秘書は怪しいけどな……」


 そう言って車を下りると助手席のドアを開け、ホテルの中へ進みフロントで名前を告げた――


「津村様ですね、お部屋はふたつ御用意出来ておりますので……それでは、こちらに記帳をお願い致します」


 差し出された宿帳に記入をしてチェック・インを済ませた――

 

 巫女が気になって、記入欄を覗くと氏名は「鯉乃めぐみ」となっていた――


 聞き間違いをした津村によって命名された瞬間だった――




「面白かった!」



「続きが気になる、読みたい!」



「二人の人間は今後どうなるのっ……!」



と思ったら



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