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ゲリラ・ライブは秘密だよっ!

 めぐみは期待に胸を膨らませていた――


「めぐみさん、殆どの公園は祭日のイベントが一年前から予約が入って居て全部無理だったよ。ごめんね」


「ごめんねじゃ済まないわよっ! 会場が無かったら、どうにもならないのよ、どーすんのっ!」


「まあまあ、慌てないで。そこで、公園以外で音を出しても苦情が出ない場所として、企業のグランドを借りたから大丈夫だよ。午前中のサッカーの試合が終われば、後は自由に使える。トイレや水道の心配も要らないし、電力の確保出来ているから模擬店も出せるし、極秘のプレ・イベントとしては完璧だよ」


「なるほど。後は集客だけねっ!」


「あぁ、そう言う事。さっき玲奈さんにも連絡をしておいたよ。幸運を祈る。よろしく頼んだよっ!」 



 めぐみは早速、J・アイドル研究会に連絡をした――


「リリリン、リリリン、リリン」


「はい。あー、もしもし、J・アイドル研究会ですぅ」


「もしもし、喜多美神社の鯉乃めぐみです。担当者をお願いします」


「担当者って……あっ、あー、巫女さんですか? 僕です、僕です、はぁい」


「要件は分かっているわねっ! 九月十九日、日曜日、十四時より、三鷹市の立河武蔵野グラウンドで『ちぇりー・factory』のライブを決行するっ! 以上」


「来たぁ――――――っ! よっしゃぁ――――――っ!! ドルヲタ集結しますっ! あざ――っす」



 オタク達の喜多美神社への参拝は、時間を追う毎に増えて行き、神社の周辺はごった返していた――


「典子さん、大変ですぅ、絵馬の在庫一掃セールの様相を呈して来ましたよぉ、ふぅっ」


「だから言ったでしょう? ヲタの習性を理解していれば、備えても、備えても、憂い有り有りの有りまくりなのよっ!」


 参拝客は夜になっても途絶える事が無かった――



「もう、こんな時間だよ。七海ちゃんに怒られちゃうよ……ただいまぁ……」


 めぐみが急いで帰宅をすると、七海は『ちぇりー・factory』の神ライブDVDを観て乗りに乗っていた――


「あっ、めぐみ姉ちゃん、お帰りなさい。どっかで旨いもん食って来たなっ、裏切者っ!」


「裏切ってなんかいないわよ。それより七海ちゃんノリノリじゃない?」


「うん、何かハマっちゃって。これがマジで良いんよー、格好良いし可愛いし、んで、ちょっと暗いのがまた刺激的なの、惚れるわぁー」


「ねぇ、七海ちゃん。実は、『ちぇりー・factory』のライブ・イベントが有るんだけど、観に行く?」


「………………!」


「極秘のライブで、しかも、模擬店も出せるの。七海ちゃんも参加出来るから、パンを持って来て、売っても良いよ」


「マジで? マジかーっ! 行く行く、絶対。あっシの焼いたのパンを……メンバーの皆が食べてくれたりして? めぐみ姉ちゃん、何時? 何処で? ヤバいよ、茜と優太にも声掛けて良い? 総長にも連絡しよっと!」


「うん、皆、集めて貰えると助かるよ」


 めぐみは何時もの様に日報を書いて神官に送ると、風呂に入って身を清め、コーヒー牛乳を正しい作法で飲んだ――


「ふぅ―っ、ん旨い。備え有れば憂い無し、準備万端整った。今回の縁結びは盛大にやらなくちゃね。うふふっ」




 ――九月十九日、日曜日、友引 庚午 


 三鷹市の立河武蔵野グラウンドには、仮設ステージが組まれ、応援グッズと神ライブDVDの即売所、優太のお好み焼きと茜のレモネードに七海のパン屋が出店していた。裏アカでは既知の事実だが、昼頃から、SNSで一般の人が「三鷹で何か有るらしい」「誰か来るらしい」と云う情報が瞬く間に拡散されて行き、中央線沿線から、京王井の頭線沿線に拡大すると、老若男女が集まり始めた――


「おのぉ……お忙しい所、すみません、此処で何が始まるのですかぁ?」


「あっシの口からは言えないんよっ! もう少し待っていれば、アナウンスが有るから。それまで待って。ねっ!」


「ふーん。じゃあ、ホット・ドッグ下さい。後、そこのデニッシュも」


「毎度ありっ!」



 〝 お集まりの皆様にご連絡いたします。『ちぇりー・factory』のニュー・シングル発売記念ライブを十四時より開始します。只今より開場いたしまーす ″


「ウォオォ――――――――――ッ!」「最前列死守―――――――――――っ!」


「ドドドォ―――――――――――ッ!!」


 沈黙を続けていたオタク達が一斉になだれ込み、応援グッズと神ライブDVDの即売所がオープンすると公式ホームページにもライブ情報が告知された――


「残り時間は一時間少々、来る。きっと来るっ!」


「心配するなって、この津村武史を舐めて貰っちゃ困るぜっ! 西は八王子、立川から東は新宿、渋谷、お茶の水、まぁ総武線と東西線のお客が未知数だけど、此処を一杯にするくらい、お手の物だよ。とにかく一気に人が集まり出したら整理をするのが大変だから、覚悟してくれよっ!」


「ふーん、凄い自信ね……まだ三割程度しか集まっていないのに……」


「それじゃあ、コレねっ!」


 三鷹駅 中央本線・中央線快速 八王子・大月方面 (下り)

 04、05、12、18、20、25、28、34、36、43、48、50、57、58 

 中央本線・中央線快速 新宿・東京方面 (上り) 

 01、02、07、09、14、16、22、24、31、38、40、46、48、54


「何これ? 時刻表じゃないの」


「分かって無いなぁ、そのタイミングで人が流れて来るから、駅から歩いて来る時間を勘案して捌いてね」



 津村の計画通り、会場には次々に人が現れ、模擬店も大盛況になっていた――





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