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神のお告げはゲリラ・ライブ。

 玲奈は満身創痍のちぇりー・factoryのゲリラ・ライブを津村の力を借りる事で成功出来ると確信していた――


「社長。僭越では有りますが、この件は私とめぐみさんに任せて貰えませんか?」


「何か心当たりでも有るのかね?」 


「はい。年内解散も回避で来るかもしれませんので、お任せ下さい」


「うむ、良いだろう。君達に任せたぞっ!」


 玲奈は年下で事務所の先輩の『ちぇりー・factory』の事を尊敬していたが、どんなにプロモーション活動をしても一位を獲得出来ず、本人達も幾ら頑張っても現状維持が精一杯である事に失望していて、J・アイドル・オータム・フェスティバル終了後に年内解散のアナウンスをする事が既に決まっていた――


「めぐみさん、津村さんに連絡してライブ会場を決めて欲しいの。私が連絡すると陽菜さんが心配するかもしれないから……ねっ、お願いしますっ!」


「分かりました。場所と日時は決まり次第連絡します。それでは失礼します」



 めぐみが帰ると、一足違いに『ちぇりー・factory』のメンバーとマネージャーが収録を終えて事務所に戻って来た――


「お疲れ様です」「お疲れでーすっ」「戻りました―っ!」


「お早う御座います。収録お疲れさまでした」


「玲奈さん、お早う御座いますっ!」「あれ? この御守りは何だろう?」「可愛いね」「神社では売っていない御守りだよっ」「超可愛いっ! うふっ」


「先日、昇殿参拝をした神社の巫女さんが来て、皆さんに授けて下さいました」


「わざわざ此処まで持って来てくれたのですか? 有り難い事ですね、お礼に行かなくちゃねっ!」


「それで、早速ですが皆さんに報告が有ります」


「はい。報告って何ですか?」


「その巫女さんが、先程この事務所のお祓いをしました。そして、神様のお告げにより皆さんのプロモーションにゲリラ・ライブの提案をして、社長も快諾しましたので、そのつもりでいて下さいね」


 マネージャーは神様のお告げに社長が快諾をした事に驚いた――


「何を言っても聞く耳を持たない社長が快諾って……本当ですか?」


「ええ、本当です。社長も心配していたんですよ。まだ、会場と時間は決まっていないので、ブッキングが大変になるかもしれませんが、宜しくお願いしますねっ」


「はいっ! よーしっ、やるぞっ! 皆良いわねっ!」


「はいっ!」


「でも、ゲリラ・ライブなんてやった事が無いし、今まで考えた事も無かったね」


「面白そうじゃんっ! やってみようよっ、ラストスパートだよっ!」



 めぐみは喜多美神社に戻ると、早速、津村に連絡をしていた――


「――えぇっ、ゲリラ・ライブだって? 素人はコレだから困るなぁ、街はパニックになるし、交通渋滞の懸念も有るし、そうなる事が予測される中で決行すると、コンプライアンスが厳しい今、かえって顰蹙を買って逆効果だよ。誰の思い付きか知らないけど、止めた方が良いよ」


「津村さん。いや、津村っ! お前、誰のお陰で生きていると思ってんだっ!『困った事が有ったら何でも言ってくれ』なーんて、格好良い事を言っておいて、イザとなったら日和るなんて、ガッカリだわっ!」


「いやいや、めぐみさん、ビジネスの世界はそんなに甘く無いよ、特にアイドル関係は嫉妬の世界なんだから、ゲリラ・ライブが成功すれば、次は私とばかりに挙って真似する奴が出て来たら社会問題になりかねないよ。そんな事をして一番になっても卑怯だ反則だと言われるだけだよ」


「私と玲奈さんからのお願いなのっ! 社長も快諾してくれたのよ?」


「えぇっ! あの社長が? うん……分かったよ。でも、もう少し詳しく教えてくれないか?」


「J・アイドル・オータム・フェスティバルは知っているでしょ? そのステージを終えたら解散する意向なの。だから、勝てなくても最高の結果が欲しいの」


「総入れ替えで、動員数を競うアレか……ふーんっ、それだったら、シッカリとした場所を押さえてプレ・イベントを告知無しで突然、行なった形にした方が面白いだろう? ゲリラ・ライブの様な問題も起こらないしね」


「乗って来たねっ、それ、頂きっ!」


「慌てるなって、告知無しで突然やるからには、集客が出来なければ命取りになるリスクが有る事、分かってる?」


「まかせなさいっ! もう段取りは出来ているのっ、会場と日時を決めてっ!」


「三連休の十九日が友引で、二十日が先負で敬老の日だから、十九日の午後が良いと思うけど……祭日に空いている場所が有るかは微妙なんだよ、区立公園は予約か抽選だからね。直ぐに調べて折り返すよ」


 

 めぐみは津村からの返事を待つ間、オタク達へのリークがどれくらいの効果が有るのかを見定めようと、参道で待っていた――


「あらあら、まーたまた、来ちゃいましたよ、オタクの人達が。しかも今度は大量だわ、紗耶香さん、準備は良い?」


「典子さん、何の準備ですかぁ? 絵馬の準備なら何時でも出来てますよぉ」


 オタク達は参拝を済ませると、授与所にやって来て、絵馬を購入した。そしてお絵描きタイムになると、授与所は何かの会場の様になっていた――


「これは大変だ」「ああ、大変だね」「一大事だよ」「このまま終われないよー」「僕達にもっと力が有ればなぁ」「解散だけは避けたいな」「だから神頼みなんだろ」「神様お願いっ!」



 その光景に、めぐみが手応えを感じていると津村から連絡が来た――




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