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真実の愛を掴んで揉んで。

 静香は微笑み、両手を広げて受け入れようとした――


「止めろよっ! 鼻がチンコで運命の人が君だなんて、冗談じゃないっ! もう、死んだ方がマシだっ!」


「戯け者がぁ―――――――――――――っ!」


 めぐみが怒り、木村の後ろ髪を掴むと、静香の胸に顔を押し付けた――


「ばふっ!」


 大きな音がしたかと思うと、静香が優しく抱きしめた――


「チョ、待っ、止め………… ん? この感触は……このマシュマロ感は……ほわっ、ほわで、ぱよん、ぱよんで、ポヨヨン、ポヨヨン……これこそ、僕の探し続けて来た本物の……至高の……いやっ、究極のマシュマロっぱいだぁ――――っ! はぁぁぁうぅ――っ」


 静香のおっぱいの感触に陶酔していると、木村の鼻が反応して空前絶後のフル勃起をした――


「ばっ! びぃ―――――――――――――――――んっ!」


 それは、顔を埋めた究極のマシュマロっぱいを突き放した――


「うわぁ――――――――――っ! 痛い、痛みを感じる程だぁ、うぅっ」 


 木村の鼻は青筋を立て、どっくんどっくんと脈打ち、カッチカチになると赤黒く変色して行った――


「思春期でもこんなになった事が無い、破裂しそうだぁぁ――――っ」


「しょうが無いなぁー、可哀想だからぁー、静香が慰めて……ア・ゲ・ル」


 静香は木村のいきり立った荒ぶる鼻にそっと手を添えた―――


「ぱくっ!」


 九百二十七人の女性達は一斉に悲鳴をあげた―――


「キャァァ――――――――――――ッ」


「ダメよ、ダメダメッ! 公然わいせつよっ!」


「止めてぇぇぇえ―――――――――――っ!」


 荒ぶる鼻を咥えた静香は、舌でやさしく慰めた。すると、木村から苦悶の表情が消え、気持ちよさそうに恍惚の表情に変わり、果てた――


 すると、力尽きた木村の鼻は、見る見るうちに小さく萎んで、ふにゃふにゃになり、頃合いを見て静香が噛み切った―――


「コリッ!」


「イッ、ヤャァァ――――――――――――ッ」


 そして、静香の喉が蟒蛇(ウワバミ)の様に膨らみ、胃袋に落ちて行くのが分かった――


「ごっくんっ!」


「キャァ―――――――――――ッ」


 だが、木村の鼻を飲み込むと、すっかり元通りの顔に戻っていて、九百二十七人の女性達の悲鳴は歓声に変わった――


「おぉおぉ―――――――――――――――っ!!!」




「マジかっ! 僕の鼻が……元通りに戻っているっ! やったぁ! ありがとう、静香さんっ! 君こそ僕の運命の人だと云う事が痛いほど分かったよっ!」


 木村は静香の眼鏡を外し、顔を寄せると、お礼のキスをした――


「フッ、僕もどうかしていたんだな。こんなに綺麗な瞳の天使に気付かなかったなんて……もう、放さないからっ、安心して良いよ」


「静香、嬉しいぃー、感激ぃ―――――っ!」


 木村の曲霊(まがひ)直霊(なおひ)に戻ると、九百二十七人の女性達の姿は消えて行った。すると、ルーレットもシャンデリアも……すべて消えて真っ暗闇になった――


 そして、その暗闇に、千早を羽織り、頭には前天冠(まえてんかん)を着け、長い黒髪を後ろで絵元結(えもとゆい)にしためぐみが白く浮かび上がっていた――


「木村殿、お見事! 運命の人と真実の愛を掴みましたね。お主の直霊が曲霊になったのは愛されたかったからに他ならない。この賭けはお主の勝ちだ。ふたりにこの御守りを授けよう」


「フッ、僕の負けだよ……めぐみさん。勝たせてくれて、ありがとうって言った方が良いのかな? やっと本当の自分を取り戻せたよ」


「静香、超嬉しいぃ―――――っ!」


「有り難う、めぐみさん! 神様って本当にいるんだね……フッ」


「ふたりの心の中に、ずーっと、おるぞ」


 めぐみがふたりに御守りを授けると、辺りは光に包まれ真っ白くなり、身体に羽が生えた様に軽くなると、静香の足が床から離れ、風船の様に宙に浮いた。木村はジャンプしておっぱいを掴むと、一緒に奈落の底から昇天した――


 ふたりは拝殿から出ると、仲睦まじく手をつなぎ参道を帰って行った――



「あらっ? 紗耶香さん、あのふたり……めぐみさんは千早を羽織っているし、拝殿で何かの祈祷だったのかしら?」


「いつの間にかぁ、ふたりになっているんですよぉー、しかも、手を繋いでぇ、ラブラブなんですよぉー」


「典子さん、紗耶香さん、亀頭はおっぱいだったんですよ」


「えぇっ! 何を言っているの?」


「チャラ男は、神の御前にて真人間になり……真実の愛を掴んだのです」


「結局、おっぱい星人だった……って事ね。納得!」


「もう、典子さんっ! 納得なんかぁ、出来ないですよぉ!」  


「うふふっ。めでたし、めでたし」


 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた―――――



 めぐみはルーレットの支払いを済ませて、何時もの様に日報を書いていると「そっそそっそそっそそっそ」と足の音と「サシサシサシサシ」と衣擦れの音が聞こえた――


「コッツ コッツ コッツ」


「はい、どうぞ」


「ガチャッ!」


 ドアが開いて双子の巫女が入って来た――


「イヤァ―――――ッ、もう、怖かったぁ、心配しましたよぉー、あんな輩に縁結命(エニシムスビノミコト)様が、輪姦(まわ)されたら、どうしようかと。居ても立っても居られませんでしたわぁ」


「勃ちませんから、心配御無用!」


「下ネタかっ! あーもうっ、心配して損しましたわぁ。でもぉ、真実の愛を掴む事がおっぱいを掴む事だなんて……驚きですわぁ」


「まぁ、正直『運命の人がアレかよ』って言われた時は私もダメかなぁ……って思ったの」


「それっ! どうして逆転出来たのですかぁ?」


めぐみは双子の巫女を後ろから優しく抱き締めた――


「アレじゃ駄目か?」


「キャァァ――――――――――ッ!」

 

「まっ、羽交い絞めにしたんだけどねっ! あははは」


「納得ですぅ――」


すると、足音も無く静かに神官が入って来た―ー


「うぉっほんっ! まーた、ドアが開けっぱなしですよ、困りますね。しかし、今回は男女の欲望が絡み合う大変危険な任務でしたが、真実の愛を求めてヤリチンになった男の縁を、見事に結ぶ事が出来ました。天国主大神アメクニヌシノオオカミ様も御喜びで高く評価されました。ちなみにサークルのメンバーは全員死亡、リーダーとバーテンダーは、その償いの為に生き続ける事になりましたので……私はそこの日報を頂いて、これで」


 三人は顔を見合わせてハイ・タッチをした。そして、双子の巫女が冷たい甘酒をお盆に乗せて差し出すと、めぐみは甘酒をゴクゴクッと飲み干した――


「ん旨い! 今回はチョッと……見た目が微妙に気になったけど、ありがとう!」


 めぐみは二人の巫女に見送られて、軌道エレベーターに乗って地上へ戻って行った――


 蒸し暑い夏の夕暮れ――


 学校帰りの七海がめぐみの部屋にやって来た――


「ピンポーン! ピンポーン!」


「七海ちゃん、お帰りぃ―――――っ!」


「めぐみ姉ちゃん、あっシはもう、お終いだよ……」


「どうしたの? 柄にも無く随分、落ち込んでいるわね」 


「大失敗っ! アメリカン・ドックを作ったんだけどー、魚肉ソーセージをフランクフルトにしたら衣が剥がれて破裂して、こんなのになっちったよー、そしたら社長が見た目がエロ過ぎるからダメだって……」


「あーあぁ、コレはちょっと……売れないよね、残念!」


「えっ、めぐみ姉ちゃんまで、そんな事言うのかよぉー、食べてくれよぉー」


 七海は背中を向けためぐみを、後ろから優しく抱きしめた――


「コレじゃ駄目か?」


「ダメよ、見た目がエロいし、今回は遠慮させて頂きまーすっ」


「味見してくれよぉー、美味しいよ? ひと口で良いからさっ、手を添えてぇ、ぱくっと咥えてぇ、ゴックンしてよぉー、」


「もう堪忍してぇー!」



 神様の悪戯と言う言葉が有る様に……神様は悪戯が大好きだった――――





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