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人生は七転び八起き。

 ふたりはステーキ・ハウスで食事を済ませると部屋に戻りお風呂に入った。その姿はまるで水中出産の様だった―――――



「めぐみ姉ちゃん……ポンドとグラムの違いが分かってねーだろっ、おぉ?」


「違うよぉー、ポンドステーキをふたつって頼んだのにぃー、あれが、来るんだもんなぁ……」


「ちげーよっ! 二本指立てたからさぁー、2ポンドになったんよぉ、店員さんがビックリしてたじゃんよー! 空気読んでよぉー、気付けよぉ! ピースサインとか? 言い訳はいらねぇーからっ!」


「って言うけど、ペロリとたいらげたのは誰でーすかぁ?」


「あぁ―― お腹パンパンッ! 生まれそう……」



 風呂から上がると、めぐみは苦しむ七海を横目にコーヒー牛乳を正式な作法で飲んだ――


「め、めぐみ姉ちゃん、飲むんかぁーいっ! 良く飲めるなぁ……ある意味凄いっ! ギャル佐根みたいだお!」


「礼に始まり礼に終わる。どんな事が有っても、欠かしてはならぬのだ……って聞いてる?」


「テレビ観なきゃなんねーのっ!」


「『ドクターEX、外科医 小門未知子』は今日じゃないでしょう?」


「イッケイさんの新番組が始まるんよっ!」



 テレビを付けるとメイクを決めドレスアップして、見違えるほど美しくなったイッケイが居た――


〝テレビの前の視聴者の皆さん、今晩は。美容家のイッケイです。今週から始まりました『イッケイのビューティフル・ライフ』どうぞよろしくお願い致します。ラインナップは若見え美肌の真実! お出掛けワンランク・アップ・コーデのお約束でぇーすっ! どうぞご覧下さい″


「何かぁ……やっぱ凄ぇーなっ、オーラ出てるっつーか、輝いているよぉ……」


「女以上に女で……男の求める全てを知っている……本当に才能が有る人って……何かが違うのよ……」



〝若く見える人とそうでない人の違いは―――― 艶ですっっ!″


〝おぉぉ――――――――――っ!″


「ん…………それは、そうでしょ? 当たり前じゃないの?」


「だからぁ、当たり前の事をー、全力でー、思いっきり言うのがぁー、イッケイ・マジックなんよ。説得力ハンパねぇっ!」


「あぁっ……そう……」


〝夏のお出掛け。皆さん如何ですか? 見た目が涼やかにノースリーブ? ダメですっ! 紫外線が強いのでお肌に良くありませんね。Tシャツにサンダル? リゾートならそれも良いでしょうけど、やはりドレスアップしなければいけないシーンが有りますよね? そんな時にお薦めなのが、このチュール素材のワンピースです。デコルテとショルダーはシースルーで涼しげで、ウエストマークにこんなベルトを合わせればとってもフォーマルな雰囲気になりますし、こんなベルトなら……ほら、カジュアルで遊びを演出できます″


〝おぉ――――――――っ! ″


〝でも、お高いんでしょう? ″


〝メーカー希望小売価格、税込み五万五千円のところ……この番組を見ている方に限り……″


〝限り――ぃ? ″


〝一万九千八百円で――すっ! ″


〝おぉ――――――――っ! パチパチパチパチパチパチパチパチ″


〝さあ、今なら送料無料! ベルトも二本付いてぇー、更に『コーディネイト・バイブル、イッケイのこれでオッケイ』も差し上げま―――す! お電話お待ちしておりま―――すっ!″



「あっ! あっシのパクった! でも、何か嬉しい! めぐみ姉ちゃん、電話、電話!」


「しょうがないわね……あっ、もしもし、はい、ええ、はい、そうです。ネイビーブルーで、はい、おなしゃ――すっ」



――数日後


 めぐみの元に届いた七海のワンピースにはイッケイ直筆の御礼状と、ビストロ・フルール・エ・レーヴの招待券が入っていた。そして、包みを開けると波を模った七つの海を航海する小さなヨットの刺繍が施されていた。



「チョー可愛いっ! ゲロ、スッペシャルじゃん!」


七海はワンピースを抱き締めて喜んだ――


「喧嘩上等! 夜露死苦! からは卒業って事ね。今の七海ちゃんには素敵な刺繍が良く似合っているよ」


「本当? あんがと。嬉しい―――――っ! イッケイさんにお礼言わなきゃだねっ!」


「うん。七海ちゃん……でも、そんなに回らなくて良いよ、クルクルしなくて良いよ……七海っ!」


 姿見の前でクルクル回り、やんちゃ可愛い七海が、耳かけボブでワンピースを着てまるで別人のようになっていた――



 ビストロ・フルール・エ・レーヴに着くと、マネージャーやスタッフ、関係者で店は満席だった。そして、扉を開けると純白のドレスを着たイッケイが出迎えてくれた――



「めぐみさん、七海さん、ようこそいらっしゃいました。どうぞ、こちらへ」


「ほ、本日はお招きいただき……あざーっす」


「七海ちゃん緊張しているの? 可愛いわね。でも、あざーっすはダメよ。うふふっ」


「あっシ……あ、あたしのために素敵な刺繍をして頂いて、有難う御座いました」


「七海さん。良く似合っているわよ―――――っ! 可愛い!」


――マネージャーの司会で宴は始まった。


「本日は、小林義男、三宅一慶のビジネス・パートナーの発表・披露パーティにお集まり頂き誠にありがとうございます――それでは、おふたりから皆様にご挨拶が有りまーす――」


「どうも、オーナー・シェフの小林です。この度、美容と健康をテーマに、ふたりで手を取り合って新たな料理をプロデュースする事になりました、これからもよろしくお願い致します」


「今日、この日を迎える事が出来て……私は本当に幸せです。お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。マネージャー、スタッフの皆さん。こんな私を支えてくれてありがとう! そして、皆さん。私の折れた心を……諦めようと思った私の背中を押して……生まれ変わらせてくれた恩人が居ます。めぐみさん! 七海さん! 本当にありがとう」


〝おぉ――――――――っ! パチパチパチパチパチパチパチパチ″


「みなさ―――んっ! 今日は楽しんで下さいねっ! それでは……」


 マネージャーが音頭を取った。

「乾杯――――――――っ!」


 小林が料理の提供と説明をし、イッケイがワインをサーブして宴はとても華やかだった――


「めぐみ姉ちゃん、なんだか結婚式の披露宴みたいだね」


「そうよ、その通り。ふたりはビジネス・パートナーを超越した純愛関係。本当のパートナーになったのよ。うふふっ」


 楽しい時間には―― やがて終わりが訪れる―― めぐみと七海は夏の夜の風に当たりながら歩いた―― 月と星の輝く夜だった――



――数日後。


 夕暮れの喜多美神社に七海の声が響いた――


「めぐみ姉ちーゃん、めぐみ姉ちーゃん!」


「七海ちゃん、お帰りなさい。どうしたのそんなに声を張り上げて?」


「イッケイさんの本がベスト・セラーだってよ! マジで、凄ぇーよっ!」


 七海の差し出した本には『激太りからの生還。食事で出来るナチュラル・シックスパックの作り方~ 三宅一慶・小林義男共著』と有った――


「ふふふっ。転んでもタダでは起きないのがイッケイさんねっ! うふふふっ」


「なに笑ってんのー、あっシは走って来たから、汗だくで、暑くて死にそうだお……帰ろうよ」


「そうね。そうしましょう。天然氷のかき氷屋さんが出来たんだって。知ってる? 食べて帰ろっか?」


「うん!」




 喜多美神社は神聖な空気と蝉の鳴き声に包まれていた――








お読み頂き、ありがとうございます。


10月からの投稿ですが、おかげさまで1300PVを超えました。


読者の皆様に心より感謝申し上げます。


良いお年をお迎えください


2021年の投稿は此処までで御座います。


新年は「男はオオカミなのか、迷える子羊なのか?」


1000人切りの男がめぐみと対峙します。


御期待下さい。




「面白かった!」



「続きが気になる、読みたい!」



「鯉乃めぐみは今後どうなるのっ…?」



と思ったら



下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。



ブックマークもいただけると本当にうれしいです。



何卒よろしくお願いいたします。






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