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ゴースト世田谷区のまぼろし――っ!

めぐみに憑依した敦子が優しく言った――


「良いのよ、そんな事! 今思えば私が言わないで我慢したのがいけなかったの。仕事は厳しいものよ。出来上がった料理は素晴らしいわ。でも、あなたは料理を愛しているから厳しいなんて感じた事が無いでしょう? 当然だと思っている」


「アッコ! 君を大切に出来なかったことを後悔しているんだ! どうすれば許して貰えるのか教えてくれ」


「ヨッちゃん、しっかりして! 許すも許さないも夫婦は一心同体よ! 私の方こそ期待に応えられなくて本当にごめんね……ひとりにしてごめん」


 小林は泣き崩れてしまった――


「ヨッちゃん、技術や手順、厳しさばかり叩き込んでも誰も成長しないでしょ? まずは料理の素晴らしさを教えてあげて欲しいの。あなたの様に料理を愛せる人は他にいない! あなた程、料理を愛している人はいないわ。だから、あなたの様に料理を愛する人を育てて欲しいの。それが私の願いよ」


 憑依しためぐみの身体から敦子が抜け出して、泣き崩れた小林に優しく口づけをすると「フッ」と消えて居なくなった――



 ふたりはレストランを後にして夜の街を歩いた――


「めぐみさん、ありがとう。義男さんが元気を取り戻せそう……めぐみさんに来て貰えて本当に良かった」


「イッケイさん、今日は御馳走して頂き有難う御座いました。でも、まだ始まったばかりですよ」


「えっ、始まったばかりって……何かしら?」


「いえ、良いんですよ。気にしないで下さい。私は神社に自転車を置きっ放しなので、これで」


 神社に戻ると、めぐみは自転車で颯爽と帰りたかったが、飲んでいるので引いて歩いた――


 そして、イッケイが小林と敦子のゴーストの会話に心を痛めている事を思い、切なくなっていた――



「めぐみ姉ちゃん、遅ぇーよっ! 何処ほっつき歩いてんの――っ! パン食ったしー、足んねーからラーメンまで食って、お陰で財布はペチャンコで腹はこんなだゾ! どーしてくれんの?}


「お姉ちゃんが居なくて泣いてたんでしょ? 可愛いのぅ……ふふっ」


「あっ! 臭ーっ、お酒飲んでる! しかも、腹がタルンッタルンだ!」


「まー嫌な子ねっ、サッサと入って!」


 部屋に入ってお茶を淹れるとケータイが鳴った。

「ルルルルルッ、ルルルルル―ッ」


「めぐみさん、先程は有り難う御座いました。無事に帰れました? ちゃんと送って行けなかったから心配で電話しました」


「イッケイさん、ご丁寧に有難う御座います。ご安心下さい。無事帰宅しましたので。こちらこそ大変、御馳走になって感謝感激です」


「めぐみさん、また食事でもしましょう。今夜は楽しかった。またね。おやすみなさい」


 七海は「ドクターEX」を夢中で観ていたが会話も確り聞いていた――



 めぐみは何時もの様に神官に「日報」を書いて送ると一緒にお風呂に入った。


「うわぁっ! 本当にタルンッタルンッだ! どうしよう……」


「めぐみ姉ちゃん、食いしん坊だからなぁー、食い過ぎだし、飲み過ぎなんよ! 何食って来たのよー」


「『食って』なんて下品ねぇー、おフランスの御料理ざんす。シャンパンにワインを少々……」


「気取ってんなー! んでも、デートなら良いよ、許す。フランス料理かぁ……羨ましい!」


「デートなんかじゃないわよっ! 仕事。巫女の任務なの」


「本当? めぐみ姉ちゃん、それなら今度連れてってよー、フランス料理食いてぇーっ! あっシは一度も食べた事が無いんよぉ……」


「無理、無理、無理! ふたりでお会計が十五万だから永遠に無理ね」


「十五万!? おったまげー! どんだけ―!」


「まあ、御馳走になっただけなんだけどね……七海ちゃんの成人式は盛大にやるか?」


「マジで! あっシは幸せ者だよ…………って、まだ先だなー、おいっ!」


「ねぇ、七海ちゃん、最近おっぱいデカくなってね?」


「フッ、青春ど真ん中、中俣七海! まだまだ発展成長しております!」


七海がビシッと敬礼をするとおっぱいがポヨヨンと揺れた――


「七海ちゃんがポヨヨン、ポヨヨンで私はタルンッ、タルンッ。はぁ……」


「タフウーマンで元気出すぜ!」


「よっしゃー!」


 風呂から上がると正式な作法でタフウーマンを飲んだ。


「ん旨い!力が沸き上がる感じ! でも腹にも溜まり更にタルンッ、タルンッでタッポン、タッポン!」


「きゃははははー、でも元気になって良かった!」


 めぐみはパソコンをチェックすると神官から連絡が有り「小林様のエラーは解決済みです。イッケイ様のエラーコードが確定いたしました『511Error』です。確認して進めて下さい」とあった。


「ふーん、なるほど。どう転ぶかは……イッケイさんの出方次第だな」



――数日後


「シェフ、オマールが多い様ですが……今日は特別な予約なんて有りましたか?」


「スーシェフ、皆のまかないですよ」


 全員が驚いて声を上げた――


「えぇ――っ、まかないなら他の余った材料で十分ですよ」


「あははは。驚く事は有りませんよ。良い食材が手に入ったのだから喜んで下さい。皆さん独自のポワレを作ってみて下さい。そしてシェアしてお互いにしっかり評論して下さい。これからは毎日、食材と格闘して新しい調理方法や料理の確立、演出まで皆さんにも考えて貰いますから。よろしくお願いしますね」


 小林は考えに考え抜いた自分の料理が、敦子のゴーストに出会い、何時しか頑なに拘って自己満足になっている事に気付き、初心に帰っていた。



 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


「めぐみさん! 来ちゃったー!」


「イッケイさん、先日は有難う御座いました」


「堅苦しい挨拶は止めて。義男さんが生まれ変わった様に元気になって活き活きとしているの。皆が驚いていたわ。それから高名な料理評論家の海原雄三が来店して「近年テリーヌの定義は曖昧に成りつつあるが、この店のテリーヌはフランスのおふくろの味を新しい解釈で再構築している点は見逃せない!」と大絶賛! これも全てめぐみさんのお陰よ! 有り難う!」 


「いやぁ、私ではありませんよ。イッケイさんの祈りが神様に届いたのです」


「めぐみさん。スーシェフがね、義男さんが笑っている姿を始めて見たって……」


「泣かないで下さい。本来の姿に戻っただけです。直霊なおひになっただけです。私では無く神様のお陰です」


 めぐみは泣き濡れたイッケイを優しく抱いた――



お読み頂き、ありがとうございます。



「面白かった!」



「続きが気になる、読みたい!」



「鯉乃めぐみは今後どうなるのっ…?」



と思ったら



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何卒よろしくお願いいたします。





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