NO、F――E――A――R!!!!!
ひとつ屋根の下ではないが、まさか、直ぐ隣の寮に引っ越して来るとは夢にも思わなかったし、これ迄、異性として意識さえしていなかった恭一の事が、急に気なり始めてドキドキしていた。そして、恭一も大切に育てていた「忘れな草」の縁を感じていた――
「お姉ちゃん、恥ずかしいなぁ。ププッ」
「笑ったなっ! 弟のくせに生意気よっ!」
「だって、何時も僕の事をTVばかり観ているとか言うじゃん。TVなんて夕飯の時くらいしか観てないんだよ?」
「だから何よ?」
「お姉ちゃんは、TVさえ観ていないからお兄ちゃんの事を、何も知らなかったじゃないか。そう云うの、情弱って言うんだよ」
「はっはっは。確かにそうかもしれないな」
「お父さんまで、何よ……」
「お姉ちゃん、TVくらいサッと目を通した方が良いよ。今、第二日本列島が話題になっているの、知っている?」
「知っているけど……」
「じゃぁ、どのくらいの面積?」
「えぇ? あー、面積はまだ分からないでしょう?」
「うん。じゃぁ、南北の長さは?」
「長さは30kmでしょう?」
「ほらぁ、違うよっ! 1000㎞だよ」
「え? そんなに大きかったの?」
良太は、沙織に呆れてTVの電源を入れると、チャンネルを選択した――
「あ、丁度、始まった。はら、ちゃんと観なよ」
〝 タラッタラッタァ―――――――――――――――――――ン、ダッダンッ! 緊急特番! 日本が変わる! 第二日本列島は、宝の島だっ! ″
「皆さん、今晩は。司会進行役の吉岡美桜です。先日、突如として現れた第二日本列島。夢と期待に胸が膨らみつつも、未だに上陸する事が出来ません。本日、スタジオには『日本の地震を考える会』会長の大地真生先生にお越し頂きましたぁ。先生、宜しくお願いします」
「はぁい、宜しく」
「今回、権威である日本地震学会をさておいて、第二日本列島の出現を予測していたと云う事ですが?」
「あぁ、まぁね。南海トラフ・富士山噴火に気を取られて、肝心なことを見落としたのでしょうな」
「肝心な事とは」
「あぁ、まぁね。私共『日本の地震を考える会』の云う事は、あなた方、大手メディアからは相手にされませんでしたからねぇ」
「番組初っ端から、恨み節が炸裂ですね?」
「失敬だなっ! 恨んでなど居ませんよ。まぁねぇ、京大の権威よりも、私共の予測の方が正しかった事が証明された訳ですからなぁ。むっはっは、はっはっはっはは」
「笑いが止まりませんね?」
「あ――のね。あなた度々、失敬ですよ」
「具体的に第二日本列島とは?」
「あぁ、そう。そう来るのね。つまり、日本には資源が無いとか、輸入に頼らざるを得ないとかね、そもそも嘘なんですよ」
「嘘は言い過ぎでは有りませんか?」
「あのね。石油なんて、温泉と同じで掘れば出て来るの。それ以上に、天然ガスが大量に出ますよ」
「その根拠は?」
「第二日本列島は、地底に溜まった天然ガスによって隆起したのですっ!」
「天然ガスがなくなったら、萎んでしまうとか?」
「あ――のね。漫画じゃないんだ。有り過ぎる天然ガスの使い道に困る程ですよ?」
「本当に、そんな夢の様な事が、有り得るのでしょうか?」
「どうしたんだ、ヘイヘイ、ベイベー、ガス・タービンはビンビンだぜっ!」
「何時もの様に決まるとは思えないのですが?」
「あのね。私共は、口が酸っぱくなるほど言って来たのですっ! 天然ガスは溢れっ放し、レア・アースは取り放題。輸入に頼る必要なんて、全く無いのです。借金ゼロ! 通貨も必要の無い時代がやって来るのですよ。そう云う、真実を言われると困るのが、あなた方、オールドメディアなんですっ!」
「うぐっ……」
「あ――のね。私達の研究の成果を取り上げてくれたのは、ムーと宝島、東スポだけですよ? 事、此処に及んで、無視出来なくなったと云う事ですなぁ……むははははは、うはははははは」
「そうですか、そうですか、随分と大胆な御意見ですが、それでは此処で、中継です。上空の竹山さん」
「はぁい、上空の竹山ですっ! 日が暮れて、嘗ての島嶼部は、変わらず生活の灯りが見えますが、それ以外の部分は、真っ暗です」
「島民の方達の生活の安全は、確保されているのでしょうか?」
「はぁい、漁師の方々は、住居から港までが遠くなった以外は、全く問題が無いそうです。しかし、本土からは潮の流れが速く、船舶は近寄る事さえ出来ません。今日の正午の映像をご覧下さい」
スタジオには収録したVTRが流れた――
「うわぁっ! 綺麗な海ですねぇ……」
「西側の海岸は、遠浅でコバルト・ブルーのロング・ビーチが1000㎞続いており、そして、西側とは対照的に東側の海岸は断崖絶壁、海の深度が、ひと目で分かるほど黒々としています」
「沖縄どころか、カリフォルニア以上では有りませんか」
「そうなんです。今後の第二日本列島の開発に期待が高まっております」
「竹山さん、有難う御座いましたぁ。それでは、上空の次は、海上の富田さん」
「ハイッ、富田ですっ! 先程、上空の竹山レポーターが報告した通り、東京湾から向かって行くと、潮の流れが速すぎて西へ西へと流されてしまいます」
「東はどうですか?」
「ハイッ、東側は断崖絶壁で、接岸が不可能です」
「港の整備が必要ですね」
「ハイッ、恐らくですが、15㎞間隔で港が作れるだろうと予測されています」
「なるほどですね。海上に変わった事は有りませんか?」
「ハイッ、伊豆半島から直ぐの所には渦潮が出来ており、船舶の航行は困難を極めております。我々は、最南端からの上陸を目指して航行中です」
「富田さん、後ろに明かりが見えますが?」
「ハイッ、えっと、え? あれは?」
船の後方に、水飛沫を上げて迫り来るヘッド・ライトが見えた。船員達は声を上げて驚いた――
「鳥だっ!」
「飛行機だっ!」
「ジェット・スキー……でしょうか?」
〝 いや、V-MAXだぁぁぁぁ―――――――――――――――――――あっ! ″
〝 ヴァオォォォォォォ―――――――――――――――――――ンッ! バッシャア―――――――――――――――ァンッ!! ″
「富田さん、あれは一体、何者でしょうか?」
「ハイッ、えっと、あれは……カメラさん、アップでお願いしますっ!」
カメラは、船を後方から追い抜こうとするV-MAXを捉えた――
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