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「霊」の測定 ―恋人発覚。


 双子の巫女は室内の全て物を調べていたが、直ぐに或る事に気が付いた。殆どが手垢どころか指紋さえ無く明らかに不自然だった――


 証拠写真の撮影と報告書に記録して捜索を続けた――


 一方、巫女はアプリの様な物を使って残存する津村の「(たま)」を測定していた。一般的な自然死では問題無いが死者の選択をした場合は念が残ると後で問題になる事が多いためだった――


「うーむ、これだけ趣味の物が溢れ、コレクションをしているのに、何一つ反応が無いなんて」


 巫女も何かに気付き始めていた――


 そして、号令の鈴が「シャリーン! シャリーン!」と邸宅内に響き渡った――


 一旦、集合して打ち合わせをすると、残された離れとゲスト・ルームの捜索を双子の巫女が行い、ガレージを巫女が捜索する事になった。


 一方、津村はライディング・ウエアとブーツを脱いでシャワーで汗を流し、綺麗な服に着替えてソファで寛いでいた。

 

 巫女は津村に声を掛けた――


「ガレージの捜索をさせてもらうわ」


「あっ、それなら案内するよ」


 ガレージはセキュリティが厳重なため、津村が同行する事になった――


 生体認証を済ませ、物理キーを二本差して回しその後モニターにタッチペンでサインをして筆跡鑑定を済ませた。すると、ガレージのシャッターがゆっくりと上がり、中の遮断機のバーも上がった――


 ガレージの中には戦前のオープン・ホイールのヴィンテージ・カーを筆頭に、戦後の流線形ボディのクラシック・スポーツまで充実したコレクションがあり、現行の車に加え、オートバイも十台以上所有していた。


 F1パイロットのサイン入りグローブやヘルメット、ミニ・カーやポスター、古びたオイルジョッキとリトグラフ、当時の新品パーツ迄、全てを調べたが、津村の「(たま)」は殆ど無く、前のオーナーの「(たま)」が反応するほどだった。


 巫女は測定しながら言った――


「この家の中に有る全ての物が将来的に値上がりが期待出来る物ばかりね」


「家の中どころか家自体も将来価値が上がるさ」


「あなたって、本当にお金の事しか頭に無いのね」


 津村は冷酷な笑みを浮かべた――


「時々刻々と目減りする様な物を買う奴が間抜けなんだよ」



 巫女は「(たま)」を感じるのだが場所が特定出来ずに困っていた――


 何時までも捜索を止めないので、津村は助け船を出した――


「おい、もう良いだろ? 君は充分やったよ。もう終わりにしたら?」


 しかし、巫女はガレージの奥にオイルの空き缶や、使用済みタイヤ等の廃棄する物が積まれている事を不審に思い測定をした――


「ねえ、この裏側に何かあるでしょ? 反応が有るの。正直に答えて」


 津村はちょっとバツが悪そうに言った――


「あぁ、その……只のワーク・ショップだよ。整備中の車と工具等が散らかっていて汚いし、奇麗な千早や袴が汚れるから止めた方が良いよ、俺も着替えたし、嫌だよ」


 巫女は更に不審に思い問い詰めた――


「嘘を吐いても無駄よ、あなたが手を汚して整備するなんて信じられないわ、何か隠しているわね、早く開けなさい! 開けないなら壊すまでよ!」


 津村はお手上げだった――


「あぁ、判りましたよ……開けますよ、別に隠している訳じゃないって……」


 大きなコンパネを外すと、そこに有るのはジャッキ・アップしてタイヤが外され、ブレーキを整備中のカブトムシのコンバーティブルだった――


 巫女が測定すると大きく針が振れた。

「えー、意外ねぇ、自分で整備する程、この車に思い入れが有るなんて」


 津村は恥ずかしそうに言った。

「初めて買った車なんだよ。貧乏で、車なんてとても買える身分ではなかったけど、将来的には結婚しようと想い続けていた人がいてね、その人にデートを申し込んだら『ドライブに連れて行って欲しい』と言うから、かなり無理をして買ったんだよ。

 

 でも、彼女とドライブ・デートをして、色んな街の人気スポットやレストランに出掛けて、遊んだり御馳走したり……凄く喜んでくれて、それだけでもう、何だか嬉しくなって、調子に乗って沢山注文をして、支払いをするとお金が足り無くなって、帰りのガソリン代は何時も彼女に奢って貰っていたんだ。――格好悪いだろ。

 

 なのに彼女は何時も微笑んでいてくれてね。そんな事も楽しかったんだよ。だから、自分で整備をするようになったのも、節約して浮いたお金で彼女とドライブに行きたかったからさ。思い入れの有る物なんて、この車だけなんだよ」そう言って、少し照れ臭そうに笑った――


 巫女は車のドアを開け室内を測定すると、津村の「(たま)」だけでは到達しない程の大きな数値を針が示した――


 そして更に精密な測定を始めると、勢い良くメーターを振り切った――


 ダッシュボードの花瓶、グローブボックスの中の何枚かの写真に水鉄砲。


 それ以外にもカセット・テープに手作りのクッションにシートカバーまで、全てが大きく反応し――それは、津村の恋人の「(たま)」だと分った――


 巫女は落胆し思わず声を漏らした――


「あぁ、何で…… もう終わるはずだったのにぃ……」


「どうした? 何か問題でもあるのか? 大丈夫、大丈夫だよ、いくら思い入れが有ると言っても綺麗さっぱり諦めるよ! 死ぬのだからさぁ」


「馬鹿ねぇ、あなたはそれで済むけど……あなたの恋人がそれでは済まないの」


 津村の顔は耳まで赤くなっていた――


「恋人が済まないって言われても、――言っただろ、彼女とはもう別れ……いや見事に振られてしまったんだよ……もう会う事も無いよ」


 津村はたったひとつの恋に―― 


美しい思い出にさよならを告げられずにいた――





「面白かった!」






「続きが気になる、読みたい!」




「二人の人間は今後どうなるのっ……!」





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