超巨大地震に笑う。
伊邪那美は、ピースケの淹れたお茶を、何杯もお替りをした。そして急須のお茶を全て飲み干すと、大きな溜息を吐いた――
「ぷっは―――――ぁ、ふう――――――――――――――ぅ。出産を終えた身体に緑茶が染みるのぅ……産みの苦しみを乗り越えたればこそ、訪れたこの解放感と心地良さは誰にも分かるまいて……」
「そりゃぁ、あんなでっかい一本糞、誰にも真似は出来ないよ」
「めぐみ姐さん、ウンコじゃないって言っているでしょう? 新しい日本列島ですよっ! 国が産まれたんですっ! きゃっほ―――いっ!」
「ピースケちゃん、張り切っているなぁ……国の面積がデカくなっただけだよ?」
「面積がデカくなっただけとな? かぁ―――――――――――はっはっは。その方、何も見えておらぬのぅ……」
「はぁ?」
「まぁ、良い。直ぐに分かる事よ。お―――っほっほっほ。ほ――――っほっほっほ」
伊邪那美は、高笑いで社務所を出て行った――
「開けっ放しかいっ! 戸を閉めろって。しかし、あの高笑いは不気味だなぁ……何か面倒臭い事をやらされそうな予感がするよ……」
ピースケは、ワクワクとドキドキが止まらないと言った状態で、地に足がついていなかった。そして、もう一人。笑いが止まらぬ者が居た――
W・S・U・S 本部 ――
「はっはっはっはっは、あっはっはっはっはっは。そうか、そう云う事か、はぁ――――っはっはっは。こいつは良いぞっ! あ―――っはっはっはっはっは」
「父さん、どうしたと云うのですか?」
「マックス、まさかまさかの日本誕生だぁ、はっはっはっはっはっはっは、あ―――っはっはっはっはっは」
「父さん、そんなに笑って、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。しかし、伊邪那美に国生みをする力が残っていたとはなぁ……驚きだぁ。あっはっはっはっは、は――――ぁっはっはっは」
「あの、父さん。これが、今のデータです」
「うむ。海抜千二百メートル、東西二百六十キロ、南北千二百キロ……完璧だぁ」
「これで、人口密度は減りますが、大きな利益でも有るのでしょうか?」
「マックス、大きいどころか、大き過ぎて世界の勢力図が変わるのだ。隆起した大地は深海であり、つまり、レア・アースの大地なのだ。そして、メタン・ハイドレートも、他の天然ガスも労せずして手に入るようになるだろう」
「それでは……」
「お前が考えている通りだ。収奪と紛争の火種でも有る。だが、そうはなるまい」
「どうして?」
「アマテラスが鍵を握っているのだ。我々も、新たな大地に移転する日は近いぞっ! はぁ――――っはっはっはっはっはっはっ!」
伊邪那美の高笑いに、南方の高笑い。そんな事とは露知らず、スーさん御一行は荒れていた――
「おうっ! どうなっているんでぇっ! お前さんは道祖神、道案内の神だろうに、何時まで経っても、埒が明かねぇじゃねぇかっ!」
「本当にねぇ。あんただけが頼りだと云うのに、寄り道グルメばかりじゃないかい? もう、日本の海は食い尽くしたよぉ……」
「そんな事、言われたってさぁ……GPSが接続が出来ないんだよぉ……参っちゃったなぁ……」
「馬鹿野郎っ! 参っているのは、コッチだって言っているんでいっ! サッサとしやがれってんだっ!」
「スーさん、そんなに怒らないでおくれよ……内の人も、こう見えて一生懸命、探しているんだよぉ……」
スーさん御一行は、アマテラスの居所を探し続けていた。だが、居所を見つけて現場に到着すると、既にもぬけの殻。こんな事が続いて居た為、道中にて道草グルメで心を慰める日々が続き、辟易としていたのだった――
「多分、さっきの地震の影響も有ると思うけど、GPSが馬鹿になっちゃたんだよぉ……クルクルクルしちゃってさぁ……」
「はぁ……お前さんがお手上げなら、おいらは、もう、喜多美神社へ帰るぜ」
「それも、仕方が無い事だねぇ……」
スーさんは、後部座席でケツをまくり、ふて寝を決め込んだその時だった――
「あぁっ!」
「どうしたんだい、お前さん? 大きな声を出してビックリするじゃないか」
「何か動いたっ! あれ? 何だろう……このアイコン、見た事無いぞ……」
猿田彦が、画面のアイコンをタッチすると、アマテラスの移動の履歴が時系列で画面に表示された。アマテラスは日本全国、津々浦々、全ての市区町村を歩いていた――
「こっりゃあ凄いっ! よし、このデータを地図に変換して見てみよう……」
後部座席から、かぶりつきで覗き込んだスーさんは、その密度に驚いた――
「おうっ! 主要国道も県道も……私道さえ歩いているじゃねえかっ!」
「スーさん、推し活さえも、目眩ましだったんじゃないかい?」
「あぁ、それに違いあるめぇ。しかし、真意はさっぱりわからねぇなぁ」
「何かの計画があっての事なんだろうねぇ……」
「おい、猿田彦。そんで、今、アマテラスは何処にいるんだい?」
「ちょっと待って、密度が濃すぎて、判読が難しいんだ。先ず、出雲大社に向かって高千穂へ……それから裏日本を通って東北、北海道へ。そして、再び下北半島から太平洋沿岸を南下して、鹿島神宮へ行って…………だあぁっ!!」
「うわぁっ! ビックリするじゃねぇかっ!」
「何処にいるんだい?」
「今日現在、東京だよっ! 東京!」
「何てぇこったい。結局、喜多美神社に居りゃぁ良かったのか? そうと分かりゃぁ、こうしちゃぁいらんねぇっ! おうっ! サッサと東京へ向かっておくんなっ!」
スーさん御一行は、古都京都を後にした。その頃、喜多美神社では――
「めぐみ姐さん、ニュースを見ましたか?」
「はぁ?さっき見たじゃないの」
「続報ですよ。ヘリは視界不良と気流の関係で着陸出来ず、東側の海は潮の流れが速くて接岸出来ないそうなんですよ」
「でも、西側は遠浅の海岸線が広がっているって言っていたじゃないの?」
「それも、浅過ぎて座礁の恐れがあるからと云う事で、ボートを出したらしいんですけど、波に返されてしまうらしいんですよ……まるで結界でも張って有る様な感じです」
「まるでも何も、リアルに結界を張っているんでしょう? 伊邪那美様の事だもの」
第二日本列島は神聖な大地であり、腐敗した人間を寄せ付けなかった――
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