踊る日本、驚く世界。
日本を襲った超巨大地震は世界中でニュースになった。東日本大震災の時と同じ様に、略奪も暴動も無かったが、死者はおろか、怪我人すら居ない事が世界のネット・ユーザーをザワつかせていた――
〝 日本人は、地震をダンスで躱した! ″
〝 地震大国日本は、遂に地震の対処法を体得した! ″
〝 日本は神の国。アレはダンスじゃなくて、地震の舞なんだっ! ″
国生みによって、出現した第二日本列島の取材に、マスコミ各社は色めき立った――
「おい、海路、空路共に、状況が許せば上陸しろよっ!」
「一番最初に、上陸したら局長賞、協会賞もゲットだぜ」
熾烈な取材合戦の火蓋は切って落とされた。だが、取材班より早く大島、三宅島等、島嶼部からの報告の方が早かった――
〝 ニュース特番! 超巨大地震! どうなる日本! ″
「日本列島を超巨大地震が襲いましたが、死傷者の報告は今の所有りません。それでは、中継です。大島町の鈴木さん、こんにちは。宜しくお願いします」
「はい、こんにちは。よろしくどうぞ」
「地震発生当時の様子をお話し頂けますか?」
「はい。突然、あの大揺れでしょう。もう、立っているのが精一杯で、足を一歩前へ出すと、二歩戻さなければ転んでしまいそうでしたよ」
「被害は有りませんでしたか?」
「それなんですがねぇ。何も無いんですよ。子供達は、地面が揺れて、大人が足を出したり引込めたりするのを見るのが面白くて、はしゃぎ出した位なんですよぉ」
「現在、島の周辺はどの様な状況なのでしょうか?」
「あぁ、それが大変なんですよっ! 揺れながら、地面がどんどん盛り上がって、海岸線がどんどん遠くに行ってしまい、見えなくなりました。今現在、私達の町は山頂になっています。まるでエスカレーターにでも乗っている気分でしたよ」
「すると、海岸線、沿岸部は壊滅的な状況では?」
「あーぁ、大丈夫です。船は、そのまま浮かんでます。只、何十キロ先まで持って行かれた船の事を考えると……漁師は、住んでいる所を変えなければならないですねぇ」
「はぁ、それでは被害と言うと……島が島じゃなくなった。と云う事ですね?」
「そうなんですよぉ。新島、神津、三宅……御蔵……何処まで繋がっているのかは見えませんので、島の大きさが、ハッキリとは分らないんですよ」
「分からないと言う事ですが、見えないとはどういう事なのでしょうか?」
「そうですねぇ。盛り上がった地面から湯気が出ていて、温泉地に居るみたいに視界が真っ白なんです。それで、気が付けば山頂の様な高い位置になって……丁度、雲海を見ている様な感じなんですよぉ」
「本物の海が、今では雲海になってしまっていると云う事ですね。分かりました。鈴木さん、お忙しい中、有難う御座いました」
「はぁい。有難う御座いました」
「それでは、空と海からの中継です、上空の河合さん」
「はい、上空の河合です。現在、私達のへリは、大島を南下して三宅島上空におります」
「状況を教えて下さい」
「はい。先程、大島町の鈴木さんが言っていた様に、真っ白な湯気が、霧と云うより雲のように見えます。その為、海岸線はハッキリと見えません。しかし、雲に包まれている場所は大地が出現したと思われ、恐らく……小笠原方面まで地続きになっていると推測出来ます」
「日本の国土面積が変わってしまったと云う事ですね、これは、大変な事ですねっ!」
「はい。この様な、地図が書き換わるような現象を、人類が目にするのは稀な事です」
「分かりました。河合さん、安全を確保して取材を続けて下さい。それでは、中継を海上に切り替えます。海上の高杉さん」
「はい、高杉です。我々は今、大島町に向かっています。上陸出来るかは未知数ですが、海はとても静かです」
「この超巨大地震で、津波が発生しない事も不思議ですよね」
「はい。目の前の海は、正しく『春の海』と言った表情で、静かに輝いています」
その中継を、喜多美神社の社務所で、お茶を飲みながら見ていためぐみとピースケは、開いた口が塞がらなかった――
「でっかい、一本糞だな――――ぁ!」
「めぐみ姐さん、ウンコじゃ有りませんよっ! 国生みですよ? 神話ですよ?」
「だって、どう見たって、排泄行為だったじゃないの……」
その結果の確認に、見違えるようにスリムになった伊邪那美が入って来た――
〝 ガラガラガラ。ガラガラガラ……ピシャッ! ″
「おぉ……中々に、立派な物じゃのぅ……」
「伊邪那美様っ! 中々どころか、世界の大ニュースですよっ!」
「でっかいウンコ、恥ずかしくね?」
「確かに、出産は排泄行為と言えば、排泄行為とも言える。しかし、この新しい国が新たな歴史を生むのじゃ。フッフッフ、お―――っほっほ」
「どうせ生むなら、ドーンと大陸にしちゃえば良かったと思うの」
「めぐみ姐さん、それじゃ、隣国と国境を作る事になりますから、島国らしさを失ってしまいますよ……」
「その方達の目は、節穴かぇ?」
「え?」
「はぁ?」
「新しい国生み。第二日本列島を上空から見ればどうなる?」
「どうなるって?」
「あぁっ! もしかして?」
「えぇっ! 伊邪那美の『イ』って事?」
「うむ」
「それって駄洒落ですか?」
「戯け者がぁ―――――――――っ! 良いか、良く聞け。今はまだ出来立てホヤホヤで湯気が立ち上っておるが、数日で湯気は消え、その全貌が明らかになるであろう……」
「ぜ、全貌?」
「一体何が?」
「島嶼部は第二日本列島となり、海抜は千メートル以上、南側には遠浅の海が広がり、東側は豊かな漁場が広がる、繁栄の島なのじゃ――――っ!」
「うわぁ―――――――っ! 凄いですっ!」
「関東以北は沖縄に行く意味が、無くなるよ? それって、繁栄の陰に衰退在りじゃね?」
「めぐみ姐さん。そんな、しょっぱい事ばかり言ってっ! 新しい日本が産まれたんですよ? 国生みの目撃者になったんですよ? こんな、目出度い事は無いじゃないですかっ! きゃっほ―――いっ!」
めぐみは、ピースケの様に諸手を挙げて喜ぶ事が出来なかった。それは、新たな事件が起こる事を予見していたからだった――
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