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ヤバイ女は好きですか?

 ショーティは、鼻をヒクヒクさせて、潤んだ瞳でめぐみを見つめた――


「何よ」


「めぐみちゃんも、エリーさんがどうして出て行ったのか、興味が湧いて来たでしょう?」


「いやいやいや、興味本位で、夫婦の事、家庭の事に首を突っ込まない方が良いよ」


「そうは言っても、救世主の生みの親だよ?」


「うーん、まぁ、ちょっと気にはなるけどねぇ……」


「だからぁ……」


「ダメダメ、そうやって、どんどん深みに嵌って行くじゃないの。これだからTime・tripは嫌なのよぉ」


「クゥン……」


「犬になってもダメよ。兎に角、一旦、戻りまぁ——すっ!」


 めぐみは、スマート・ウォッチにタッチしてreal・timeに戻した――


「はい、戻りましたと」


「何だかなぁ……」


「しょうがないでしょう? エリーさんを探したって、結局、何も出来ないんだから、単に私生活を覗くだけじゃないの」


「めぐみちゃんだって、どうして離婚したのか興味あるでしょう?」


「まぁ、無い分けじゃないけど、そんな事は、放っておきないさよ」


「クゥン……」


「ふーむ。やっぱり、ショーティも犬だけに嗅ぎまわるのが習性なのねぇ。エリーさんは普通の人間だと思うよ。ミクちゃんが、超能力を持っている事は間違いが無さそうだけど。でしょう? 」


「うーん、だからミクちゃんが、超能力を持っているのに離婚したのが気になるんだよ」


「まあ、離婚自体が、ミクちゃんの超能力による物だと云う事でしょう? それ以上は知る必要が無いよ」


「そうかなぁ……」


「そうよ。まぁ、何か有れば、行ってみても良いけど。今は必要無いよ。悪いけど仕事に戻るわよ」


 めぐみは、愚図るショーティに呆れて、スマート・ウォッチのReal・modeをタッチして、キャンセルした――


「ふぅ。全く、次から次へと、ややこしい事ばかりだよ……」


「めぐみ姐さん、何処に行っていたんですか? 探しましたよ」


「あら、ごめんなさい。何か?」


「なにって、ほら。アレですよ……」


 ピースケの指をさす方向に眼をやると、鵜飼野珠美が大々的に店を開いていた――


「チッ、珠美かよっ!」


「めぐみを呼んで来いって、煩いんですよぉ……」


「何なのよ。駐車場がイベント会場みたいになっているじゃないの」


 めぐみは、仕方なく参道を抜けて駐車場に行った――


「おうっ! めぐみ、何処に行っていたんだよ」


「何処に行こうと、あんたに関係無いよ」


「今日は物量がハンパじゃないから、手伝ってくれよ」


「はぁ? 自分の事は自分でやりなよ」


「ちゃんと典子さんに許可取ってるよ」


「え? マジで」


「マジマジ。春の食材祭りなんだから、お客さんが大量に来るんだ。配布と会計を宜しく頼むよ」


「しょうがないなぁ……まぁ、典子さんの命令なら仕方が無いねぇ」


 めぐみは、準備してあるテーブルと買い物カゴを並べていた――


「どーでも良いけど、こんなにお客さん来るの?」


「おうともよ」


「それにしては、商品が足りないんじゃないの?」


「馬鹿だな、お前は。此処に並んでいるのは私の持ち込みだよ。他の商品はこれから来るんだよ」


「これから?」


「そう。積み下ろしを宜しくな」


「げっ! そうやって人を扱き使うんだなぁ」


「お前は、人じゃないから良いんだよ。もう直ぐ、チャーターしたトラックが来るからよ。よろしくな」


 暫くすると、チャーターした4トントラックがやって来た――


「うわぁ、この狭い道を、どうやって入ってきたんだよ?!」



 〝 プップ! ”



「ようつ! 珠ちゃんっ! 到着したぜ」


「待ってましたっ! ここへ入れて」


「おう、ケツから入れるから、後ろ見てくれよ」



 〝 オーライ、オーライ、右切って、戻して真っ直ぐ、オーライ、オーライ、はい、ストップ! ”



 めぐみは、華麗なハンドル捌きに感心していた。そして、そのトラックのボディに、(株)三多摩運輸と書いてある事に気付いた――


「まさか?」


 降りて来たのは、想像通り、佐藤大輝だった――


「おいっ! めぐみ、ボーっとすんなっ! ウイングが開くからな、そしたら、こっちに降ろしてくれよ」



 〝 チュイ――――ン、ガッコン ”



「それじゃあ、おっ始めますか」


 最初に軽い葉物野菜を降ろすと、キャベツ、人参、じゃがいもと、次第に重い物へと変わって行った――


「ふぅ。汗出るわ、結構な量ねぇ」


「お姉さん、まだまだ、これからだよ。米を降ろすのが本番だから」


「マジか?」


 お米は、5kgが殆どだったが、20kgと30kgには、流石に参った――


「ひぃ、ふぅ、はぁあ、参ったぁ……」


「流石、珠美ちゃんの助手だね。お疲れさんっ!」


 大輝は、めぐみに缶コーヒーを差し出した――


「あんがと」



 〝 プシュッ! ”



「ゴクゴク、ゴックン、プッは―――ぁ! 旨す!」


「あはは、本当に旨そうに飲むねぇ。まぁ、喉が渇くからな。じゃあ、珠美ちゃん、お姉さん、俺はこれで帰るよ」


「ごちそうさま。しかし、よくこんな所まで入ってこれたね? 出れるの?」


「お姉さん。見くびって貰っちゃ困るぜっ! こう見えて、俺は走り屋だったんだ。ミラー畳んで切り返せばどんな所だって大丈夫なのさ」


「走り屋ねぇ。今は走って無いんだ?」


「そりゃぁそうよ。俺には、可愛い子供が居るんでね。もう、そんな事やってられないよ……」


「本当はやりたいんだ?」


「まぁね。未練がましくワークス乗ってるんだけど、ロータリーのフィーリングには及ばないからな」


「FD?」


「おぁ?! 何、何、お姉さん、分かるの? そう言われれば、お姉さんはS15とか、似合いそうだもんな」


「走り屋なんて、奥さんは怒るよね?」


「それ言う? キツイなぁ。まぁ、色々あって、別れっちまったんだ。だから、父子家庭。シンパパやってるって分けさ。もう一度、FDに乗って、奥多摩と大垂水を攻めたいぜ……あっ、珠美ちゃん、伝票にサインお願いね、そんじゃぁ、さよなら」



 大輝は、トラックに乗り込むと、ミラーを折り畳んで横幅いっぱい、ギリギリの幅員を華麗なハンドル捌きでスルスルと通り抜けて去って行った――


「珠美。あの人は知り合いなの?」


「うん。農作物は輸送コストが価格に反映されっからよ。できるだけ安い運賃で運んでくれる会社を探してたんだ。そしたら、三多摩運輸の社長が『人助けだと思ってやりましょう』って言ってくれたんだよね。助かるよ」


「あの運転手は?」


「あぁ、大ちゃん? 良い男だよ。子煩悩でさ」


「独身なんだ」


「そう。奥さんが、ヤバイ女でさ。今じゃ、シンパパよ。あぁっ! お前、惚れちゃったの?」


 めぐみは、呑気な珠美に呆れていた――







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