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シンパパと救世主。

 ショーティは、居眠りをしていた運転手が、目覚まし時計で、目を覚ました事を確認した――


「めぐみちゃん、事故が起きる直前で、時間を止めて」


「うん、分かった」


 蛇行していたトラックのせいで、滞っていた車の流れが回復し始めると、一台のバイクが追い越し車線に出て、猛烈な加速をした――


「あぁっ! 来た、来たっ!」


 めぐみは、渋滞のストレス発散にアクセルをワイドオープンする津村武史と、逆走する吉田喜三郎が正面衝突する寸前で、時間を止めた――


「はい、STOP!」


「ありがとう。めぐみちゃん、調査するよ」


「調査って言われても、どーするの?」


「先ずは、逆走車だよ」


 ショーティは、車のドアを開けて、吉田喜三郎を調べ始めた――


「クンクン、クンクン。うーん、なるほど……」


「え? ショーティ、臭いで分かるの?」


「もちろん。見た目は犬、頭脳は大人だからね」


「名探偵コナンみたいなのね……で?」


「めぐみちゃん、当時の状況を教えて?」


「あぁ、この日は、戌の日の大安。吉田喜三郎は豊川市にある安産祈願の楽栗らくぐり神社にて祈祷した後、腹帯を貰う予定だったの。ところが、車で出掛けてスマートから高速に入ったにもかかわらず、Uターンしてしまったのよ」


「それは、どうして?」


「御朱印帳を忘れた事を思い出してしまったらしいの」


「そう云う事かぁ……」


 ショーティは、鼻をピクリと動かして、眉をひそめた――


「何、何、どゆこと??」


「今の段階では、推測の域は出ないけど……恐らく、玄孫が関係している事は間違いが無いよ」


「どうして?」


天国主大神アメクニヌシノオオカミが予測出来なかった事を考えると、玄孫が特別な存在である事は間違いないと思うんだ」


「特別な存在って?」


「恐らく……救世主だよ」


「救世主? キリストの誕生とか? 厩戸皇子うまやどのみこ、別名、馬小屋の王子とか?」


「そう云う事」


「まさかぁ……本当に?」


「そうじゃなければ、この事故は回避出来ないよ。めぐみちゃんが地上に降りて来たのには意味が有るはず。結果として、伊邪那美様が地上に復活して、妊娠したりしないよ」


「そうなんだ……」


「後は、あの、トラックの運転手だね」


「あの運転手にも何か有るの?」


「目覚まし時計が鳴ったのが、彼の個人的な事情とは限らないんだ。もしかしたら……玄孫が関係しているかもしれないんだ」


「はぁ? 関係って……」


「調べなければ分からないよ。只の偶然とは思えないし」


「確かに、あの目覚ましが鳴らなかったら、予定通りの事故が起きているはず……どうするの?」


「時間を巻き戻せば、調べる事が出来るよ」


「OK、それでは、この巻き戻しのマークを、タッチっ!」


 めぐみがタッチすると、目の前の時間が、ゆっくりと逆行し始め、トラックが目の前に来たところで、時間を止めた――


「はい、STOP! よぉーし、それでは、調べようっ!」


「うん!」


 トラックのドアを開けると、空のペットボトルが零れ落ちて来た――



 ‶ カン、コン、カン、コロロ―――――ンッ! ″



「あーあー、汚ぇなぁ―――っ! コンビニ弁当の容器やら、食べかけのポテチに菓子パンやら、助手席がゴミだらけだよ」


「まぁ、それだけ忙しいんだよ。家で朝食を食べる余裕が無かった様だね」


「あら? 名探偵ねぇ」


「めぐみちゃん、あの、リュックの中を調べて」


 めぐみは、ショーティに言われるまま、運転席と助手席の間に押し込まれたリュックを引っ張り出した――


「何から何まで、汚いよ。たまには洗えよっ! 真っ黒だし、ベトベトする。臭っ!」


「良いから、早く開けて」


「何か嫌だなぁ……」


 めぐみは、恐る恐るリュックのジッパーを開いた――


「あぁっ!」


「どうしたの?」


「目覚まし時計。ほら、こんなに大きいのが」


「本当だ。この大きな目覚ましが、どうしてリュックに入っていたのかは分からないけど、謎は八時四十五分にセットされていた事なんだ」


「そうね。運転中に鳴るようにセットするなんて、有り得ないからねぇ。でもさぁ、此奴、不精も大概な感じだし、セットしたんじゃなくて、そのまま、持って出たら鳴ってしまっただけじゃない?」


「うーむ、他に何か入ってない?」


「うーん、お風呂セットみたいな? 髭剃りとか……」


 めぐみが、リュックの中を物色していると、一枚のメモが、ひらりと床に落ちた――


「めぐみちゃん、コレは?」


「あぁ。なんだろ? 汚い字だなぁ……絵が書いて有るけど……」


「読んでみて」



 ‶ おとうたん おねぼう しないでね はやく かえって きてね ミク ″



「子供の字かぁ……この絵は、おとうたんて、事かぁ……納得」


「子供が居るなら、母親も居るはずだよね。でも、朝食すらまともに取れず、この状態だとすると……シン・パパだと推測出来るね」


「あぁ!? そっか、そう云う事か……ショーティは、名探偵だねぇ」


「ねぇ、免許証は有る?」


「免許証? えっと、この中には無いみたいだから……」


 めぐみは、運転手のジャケットの内ポケットから、お財布を取り出し、会員証やポイント・カードの中から、運転免許証を発見すると、ショーティに差し出した――


「名前は佐藤大輝、年齢は、二十三歳、住所は、八王子市横川町……」


「あぁ、コレも」


「社員証だね。(株)三多摩運輸の住所は、八王子市東浅川町……」


「どうするの?」


「行ってみるしかないのかなぁ……」


「えぇっ! 行くの?」


「そうだよ。行かなければ分からないよ」


「マジか?」


「マジだよ。行ってみないと、重要な事が分からないからね」


「重要って、何よ?」


「何って、めぐみちゃん。吉田喜三郎の玄孫が救世主だと推測したけど、目覚まし時計をリュックに入れたのが、佐藤大輝の子供だとするなら、どちらが救世主なのか分からないよ?」


「うーむ。確かに、それは言えてるなぁ……玄孫の力で事故が回避されたとは言い切れなくなった分けだしねぇ……リュックに、メモと目覚ましを入れたのが、佐藤大輝の子供か確認しなければ分からなくなったと云う事かぁ……」


「そうなんだよ。僕の推理では、佐藤大輝の子供のミクちゃんが、救世主の気がするんだ」



 めぐみは、スマート・ウォッチの画面をTime・tripに切り替え、ベゼルを午前六時に合わせ、GPSを八王子市横川町の佐藤大輝のアパートに設定した――








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