スーさん、激おこです。
和樹の地上での行動には制限が有った。それ故、品川駅で十八時一分発の東海道新幹線のぞみ445号、新大阪行に乗り、近鉄名古屋駅で急行宇治山田行に乗り換え二十一時三十一分に伊勢市駅に到着した――
「流石、伊勢市だぁ。伊勢神宮の放つ神聖なオーラを感じるなぁ……」
駅を出て、伊勢神宮外宮参道を歩いて散策をしていた――
「ふうむ。この時間では、食堂もやっていないか……仕方ない、ガラでも無いがビストロで腹ごしらえをするとしよう」
和樹は、メニューを見ながら考えていた――
「なるほど。三重の旬の食材を生かしたメニューに、日本酒を合わせるのか……神の力を感じさせるなぁ……」
「ご注文は、お決まりですか?」
「あの、シェフのおまかせにしいたのだが、メインのお料理は伊勢鶏グリル・伊勢国健康豚のグリル……で、本日のお魚料理+300円、真鴨のロースト+850円、松坂牛の赤身ステーキ+1500円、伊勢牛のイチボステーキ+2800円と有りますが?」
「はぁい、それぞれアップ・グレード出来ますよっ!」
「いや。アップ・グレードではなく、全部食べたいのだが、それでも良いですか?」
「あぁ、はい。大丈夫です」
「それから、伊勢牛のボロネーゼを前菜と一緒に」
「えっ? あぁ、はい」
「先ずは、ハイボールで入って、而今、白酒……いや、酒は料理に合わせて適当に頼みます」
「は、はい……」
和樹は、五人前を平らげて、舌鼓を打ってビストロを後にすると、伊勢の夜風を浴びていた――
「あぁ、気持ちが良い、気分の良い夜だ。神聖な冷気を胸いっぱいに吸い込むと、肺の中から身体を浄化する様だ……」
‶ ザザザザッ! ザザザザッ! ザザザザッ! ザザザザッ! ″
「おっと、どうやら、それだけでは済まないようだなぁ……淀んだ空気の塊、腐臭がしやがる」
「お前は、武御雷神だな。此処から先へ行く事は、許さんっ!」
「ふん。このオレを知っていて、この面子とはねぇ……」
「なにをっ!」
「随分と、ナメられたモンだと思ってねぇ」
「やっちまえっ!」
影の軍団は和樹を取り囲み、四方八方から攻撃を仕掛けた――
‶ ドスッ! バキバキバキッ! ゴリッ! グシャグシャ、バリッ! ″
和樹は、襲い掛かる影の軍団を、目にも止まらぬ早業で、一人残らず粉砕した――
「クダラナイ連中だなぁ。このオレに、数で勝とうなどと、浅薄と言うしかあるまい」
しかし、この事件で、和樹の伊勢入りは影の軍団に知れ渡る事となった――
「親方様、ご報告が有ります。武御雷神が、伊勢市に現れ、警備の物が殺されました」
「ほう……素戔嗚尊の援護に来たか……敵もさるものよのぅ」
「対策を、如何に?」
「全ての者に、厳戒態勢に入る様に命じろ。そして、モノノ怪を呼び起こすのだっ!」
「しかし、親方様……」
「心配するな。武御雷神は素戔嗚尊に危険が及ばない限り、眠っているも同然。素戔嗚尊と天鈿女命と猿田彦の身柄を確保する事が最優先だ」
「御意」
「先を越されるでないぞっ!」
「ははあっ!」
モノノ怪の復活は、地獄の窯の蓋を開く事を意味していた。その頃、何も知らない三人は、カラオケに興じていた
「飲み過ぎたのは―――ぁ、あなたのせいよぉ」
「弱い女の、ふふふふーん」
「ほらっ! もう、ちゃんと歌いなさいよっ! 本当に、適当なんだから。気分が台無しじゃないかっ!」
「そんなに怒るなよ。デュエット曲って、あんまり知らないんだよぉ」
「字が出てるでしょうにっ! 色まで変わって、歌い易くなっていると云うのに、あんたって人はまったく、いい加減なんだからっ!」
「だって……」
ふたりの喧嘩に、スーさんが激怒した――
「よさねぇか、お前達っ! 一度は惚れて、愛し合った仲だと云うのに、夫婦和合を忘れて、喧嘩ばかりしやがってっ! 大概にしろいっ!」
「スーさん迄、この人の肩を持つのかい? そりゃぁ、あたしだって、若い頃は、この人のいい加減さが、可愛いくも感じましたよ、えぇ。でもね、長い年月を経て、性格の不一致が顕在化したって云うのかねぇ……それが、だんだん憎ったらしくなったんだよ」
‶ パァ――――――――――――――ァンッ! ″
「馬鹿野郎っ! それが。分かって居るなら、尚の事、亭主を支えるのが女房の仕事ってぇモンだ。自分の愛情が覚めたのを、人のせいにするんじゃねぇやいっ! 心変わりはお前さんの罪だぜっ!」
スーさんに、平手打ちにされたミコトは、憑き物が落ちた様に元通りになっていた――
「ゴメンねあんた。あたしが悪かったよ。心を入れ替えて、これからも、宜しく頼んだよ」
「おう。任せておけってっ!」
手に手をを取って、見つめ合う二人の瞳には、愛の炎が燃えていた――
「よう、おふたりさん。何時までも見つめ合っていねえで、そろそろ、アマテラスの所へ連れて行って貰いてぇなぁ?」
「あぁ、分った」
猿田彦の改造車に乗り込み、一路、アマテラスの元へ――
「あれれ? あぁ、忘れてた。GPSが、使えないんだった」
「おいおい、それじゃぁ、道案内が出来ないって言うのかい?」
「道案内の神が迷子になるだなんて、あんたって、可愛いねぇ」
「よせやい、照れるじゃねぇか」
「あたしゃ、あんたのそういう所に惚れちまったんだよ。ちょっと、おっちょこちょいな所がさぁ、人間味が有って、神様らしくない仕草がさぁ。良いんだよぉ」
「まぁ、何事も『どうにかなるさの精神』で乗り切るのが、この俺って事よっ!」
「いやぁん、抱いておくれよ」
「お前さん達、こんな所で、おっ始める気かよっ! 馬鹿野郎っ!」
スーさんは、どっちに転んでも激おこプンプン丸だった。そして、怒っている人が、もう一人——
「ただいまっ!」
「お帰り……」
「あれ? 七海ちゃん。何、ムカついてんの?」
「コレだお」
食卓には、めぐみの夕飯が用意されていた――
「いやいやいやいや、夕飯は御馳走になるからって、ショート・メール送ったじゃんよぉ――」
「手遅れだったんよ。食材も買ったし、作ちゃってたし」
「あらら」
「レミさんも、遅くなるって」
「あぁ……」
「ねぇ? めぐみお姉ちゃん。ひとつ聞いて良い?」
めぐみは「ひとつ聞いて良い?」と云う時は、大抵ひとつじゃないし、怨み言を言われると知っていた――
「はぁ、どうぞ……」
「あっシって、何なん?」
「何なんって、言われても……七海ちゃんは可愛いよ」
「可愛いあっシは、ひとり淋しく夕飯かぁ」
「七海ちゃん……」
七海は、怒れる主婦その物だった――
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