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公園デビューは嵐の予感。

 和樹は、殆どのトレーニングを完了し、山籠もりをして剣術の修行をして帰宅した所だった――


「やれやれ……どうしちまったんだい?」


「僕は、皆の事を真剣に考えているんですっ! たとえ束の間でも仲間だったんですよっ!」


「ピースケ、ムキになるな。めぐみさんは、お前を侮辱している分けじゃない。その位の事は分って居るだろ?」


「だって……」


「『優しさは仇』と、めぐみさんが言ったのは、それは、お前の素晴らしい部分であると同時に、それが弱点でも有ると云う事だ」


「弱点?」


「お前の思いやりは良い。だが、優しさは時として人を傷付け、同時に敵に付け入る隙を与えるのだ」


「隙を与えるって……」


「彼らは、誉有る死を求めているのだ。それを止める事は誰にも出来ないさ」


「でも……」


「ピースケ。例え、ペーペーの最弱神でも、お前は神なのだ。我ら神から見れば、人間同士の殺し合いなんざ可愛い物。伊邪那美様から見れば、子供の喧嘩でしかない。子供の喧嘩に、親が出て行くのは筋違いなんだよ」


「そんなの、理解出来ませんよっ!」


「お前は愛された事が無い、そして愛した事が無いのだ」


「いいえ、僕にだって、好きな人くらい居ますよっ! 現実に、今、付き合っているんですからねっ!」


「なら、その人を守りたいと思うだろ?」


「当然ですよっ! もしも、紗耶香ちゃんに変な事をする奴が居たら、只じゃ……」



 〝 シャキィ―――――――――――――――――――――ンッ! ”



 和樹は、目にも止まらぬ早業で刀を抜くと、ピースケのシャツの第一ボタンから第五ボタンまで、ボタンだけを真っ二つに切り、前が開けた――


「ひぃっ!」


「真人間達も、同じさ……」


「………」


「自分を守ろうとすれば、弱くなる。愛を守ろうとすれば、強くなれる。只、それだけの事さ……」



 〝 スゥ――――———、カチッ! ″



「たった、一人のせいで、三千万人が苦しむ事を考えて見よ」


「あぁ………」


「例え殺されたとしても……それは、当然の報いと云えよう」


「そんな………」


「見て見ぬ振りをして、逃げた所で……人間達には、何時、死が訪れるか分からないのだ」


「………」


「彼等は、人間として生きる短い人生の中で、名利と野心、欲に憑りつかれた人間共を……人を軽んじ、命を粗末に扱う人非人を成敗したいのだ。手出しは無用、只、静観有るのみだ」


「はい。分かりました……」


 ピースケは、和樹に叱られると、不思議な事に、田中組の組長が清水の次郎長か国定忠治のように思えた。そして、真人間の皆が、赤穂四十七士の様に感じていた――


「お疲れ様でした――ぁ」


 めぐみは、仕事が終わると、上機嫌で自転車に跨り帰路に就いた――


「ふんふんふ――ん、ふふふんふん。それっ、奈良の春日野 青芝に――ぃ 腰を降ろせば 鹿の糞 ふんふんふ―――ん 黒豆や ふんふんふ―――ん 黒豆や ふんふんふんふん 黒豆ぇや―――ぁっと、ん?」


 通り掛かった公園で、犬の散歩をする若い男女数名が、目に飛び込んだ――


「犬の糞をミニ・スコップできちんと拾って、その後に消臭除菌スプレーをシュッシュと。マナーが良いから気持ちが良いねぇ」


 犬同士の出会いが、お互いの愛犬の話になり、自己紹介へと繋がり、自然な男女の出会いに発展していた――


「あ――ぁ、そう云うのも有りかぁ? 楽しそうで良いなぁ。私も、愛犬と一緒に散歩をするのが夢だったんだよねぇ……」



〝 ぼわわわぁ――――――んっ! ″



「めぐみちゃん、こんばんは」


「わぁおっ! ショーティ!?」


「そうだよ? ジャック・ラッセル・テリアのショーティだよ」


「ビックリしたなぁ、もう」


「呼んだのは、めぐみちゃんだよ?」


「あぁっ、呼んだって云うか、だって、神様はペット禁止だし、スマート・ウォッチの中のマスコットだと思っていたからさぁ……まさか、飛び出て来るなんて思わなかったよ」


「そうなんだね。僕は何時でも実態を表すことが出来るんだ。普段は待機モードだから、スマート・ウォッチの中に納まっているんだよ」


「えっ! そう云う事? あ――っ、コレか? 本当だ、リアル・モードになっているよ」


「ワンワンッ!」


 めぐみは我に返った。そして、じっと見つめ合う、めぐみとショーティ――


「わぁ——い、ショーティだ、可愛いっ!」


「えへへ、ワンワン、ハッハッハッハ、ペロペロペロペロ!」


「あはははは、キャハハは、くすぐったい、あはははは。おや? こんな物を何処から?」


「遊ぶんだワンッ!」


「マイ・ボール持参とは、恐れ入りますねぇ。よぉ―――し、それっ!」


 めぐみが、ボールを投げると、全速力で追い掛けるショーティ。ワン・バウンドするその前に空中でキャッチをすると、全速力で戻って来た――


「やるわねぇ。でも、ショーティ、御褒美のおやつが無かったよ。ゴメンね」


「良いんだよ。さぁ、もう一回」


「うん、行くわよ? それっ!」


「ワンワンワンッ!」


 めぐみが、力一杯投げたボールは、公園を飛び出しそうになった――


「あぁっ! 行き過ぎちゃったぁ!」


 ボールは放物線を描いて飛んで行き、停車していた高級車にぶつかる事が分かると、ショーティは必死で追い掛けてキャッチしようとジャンプした。だが、次の瞬間、車の窓から手が伸びて、ボールをガッチリと掴んだ――


「はぁ、良かったぁ、セーフ。おや?」


 夕闇の中、目を凝らして良く見ると、見覚えの有る高級車だった。ボールをキャッチしたのは、天海徹だった――


「ようっ! 楽しそうじゃないか?」


「あれ、練習の帰り? レミさんは?」


「レミなら、未だ練習しているよ。熱心な事だ」


「ふーん。それで、どうして、あんたが此処に?」


「まぁ、先を見通すこのオレが、先の事を話しに来たって事だ」


「先の事?」


「お前の弟分のピースケが、事件に巻き込まれる」


「えぇっ! まさか、あの真人間の人達の事?」


「あぁ、それも有るが、ピースケ自身が、立ち上がるのさ」


「実質童貞のクセに……」


「下ネタじゃないぜ。和樹の影響だよ」


「和樹さんの?」


「まぁ、その和樹も、山籠もりをして剣術を磨いた事で、向かう処、敵無しの状態だ」


「和樹さんが? ついに、剣術を完成させたのね……」


「そう云う事だ。後は、伊邪那美の動きに注視する事だ。じゃあな」



 〝 シュイィ―――――――――――ンッ! ドルルルゥ、ボンッ、ブォオ―――――――――――ンッ! ″



 めぐみとショーティは、走り去る天海徹の車を見送ると、『伊邪那美の動きに注視する事』って何の事だろう? と、お互いに顔を見合わせて頷いた――





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