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何時だって、今しかないんです。

 めぐみは、完全にフリーズしているピースケに渇を入れた――


「しっかりせいっ!」


「うわぁっ!、ビックリさせないで下さいよぉ……」


「ったく、ビビってんじゃないわよ」


「いやぁ、だって、皆、断ると思っていたし、こんなの、逃げて当然じゃないですか? 予想外の展開です……」


「あららららぁ。漢の中の漢と見込まれた男が、これじゃねぇ」


「めぐみ姐さん、僕だって、やる時はやるんですよっ! 只、死に急ぐ事は無いって思って……」


「優しさは仇」


「…………」


「ピースケちゃん。あんたに、やる時なんて一生来ないわ。そうやって見送る人生よ。何時かやろうは馬鹿野郎って、昔から言うでしょう? 何時だって、今しかないのよ……」


「…………」



 喜多美神社の参道に、冷たい風が吹き抜けて行った。そして、その頃、遊び人のスーさんは天鈿女命アメノウズメノミコトを訪ねて彷徨っていた――



「丘の上 ひンなげしの花でぇえ 占うの ウズメちゃんの居場所 今日もぉ ひとり――ぃ いる、いない、いる、いない、帰るぅ――って、帰っちゃダメなんだなぁ、コレがっ! 天鈿女命アメノウズメノミコトの地上名は色々有るけど、昔の名前で出ていますと。しかし、天野ウメは年寄り臭いしなぁ……うーん、やっぱり此処は、楳図ミコトで決まりだろう……」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは、先を急いだ——


「コーポ・ミカミ、コーポ・ミカミ……この辺りに間違いは無いはずなんだが……?」


 目の前に有るのは、築八十年以上の、今にも朽ち果てそうな、おんぼろアパートだった。木の看板は流木色でコーポ・ミカミの《《ミ》》の字が消え掛かっていた――


「コーポ・神と読むって分けだなぁ。此処に間違いなさそうだぜ」



 〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″



「はぁ——い、開いてるわよ」



 〝 ガチャッ! ギイ――――ィ ″



「ようっ! ミコトっ! 元気か?」


「ちょっと、あんた誰っ! 何処、見てんのよっ!」


「おっと、コイツはすまねぇっ!」


 友達だと思って、無防備な格好で寛いで居た女の子は激怒した――


「楳図さんは二階っ! 201号でしょうにっ! この、助平っ! 変態っ! サッサと、出て行ってっ!」


「ゴメン、ゴメン、着替え中に悪かったな。間違いは誰にでも有るからよっ! 許しておくんなっ!」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは『やらかしちっまったぁ』と思いつつ、良い物を拝んで、天鈿女命アメノウズメノミコトの部屋まで聞き出せた事に喜んだ――



 〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″



「楳図さん? お留守ですか?」


 ドアに耳を当てても、部屋の中から物音は聞こえなかったが、電力のメーターの回転から、中に居る事を確信した――



 〝 コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! コン、コン、コンッ! ″



「楳図さん、お届け物でぇ―す」



 〝 ガチャッ! ギイ――――ィ ″



「あのさぁ……あたいは夜の仕事だからぁ、宅配はさぁ……夕方にしてって、言っているじゃないのぉ。はい……ハンコ」


「ようっ!」


「?!」


「おいらだよ」


「あんたは、素戔嗚尊スサノオノミコト? 何で此処に?」


「まぁ、話せば長いからよ、ちょいと上がらせて貰うぜ」


 半開きのドアを、こじ開けて、部屋の中に入って行った――


「ちょっとぉ、女の、ひとり暮らしなんだからぁ、遠慮しなさいよっ!」


「聞かれちゃ不味い話しなんだよっ! アマテラスの件と云えば、分かるかい?」


「えっ?」


「此奴を見な」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは、懐に仕舞っていた例の『御札』を出して、ミコトに渡した――


「この『御札』はっ!」


「その包み紙の裏に、暗号が書いて有る。お前さんなら解読出来るだろ?」


「これは……」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは、ミコトが、暗号を解読しながら呼んでいる姿に目を奪われていた。その姿は、髪にはホット・カーラーを巻き、生白いうなじに後れ毛、肌にはスケスケのネグリジェ一枚だけと云う、今や懐かしい、エロ本の中から飛び出て来た様な、オッサンの大好物その物だった――


「ゴクリッ……」


「そうだったのね……」


「ミコトちゃん、何て書いて有るんだい?」



 〝 ミコト。あなたが、この暗号を読んでいる時、私は中宮には居ない。何者かの手によって誘拐されたか、殺されたかもしれない。でも、この『御札』を持って来た者と手を携え、私を助けに来て ″



「つまり、アマテラスは、身の危険を感じていたって事だなぁ?」


「私は、あの夏祭りの日に、あいつ等に騙されたのよ。アマテラスを喜ばせるためだって言うから快諾したのに、急遽中止になって……そして、行方不明に。私のせいよっ! 私が……」


「まぁまぁ、アマテラスは、誘き出すための罠だと最初っから、分かって居たんだろうよ」


「……え?」


「アマテラスが本気を出せば、相手は、木っ端微塵だぁ。それをしなかったのは、連中の正体を掴み、一網打尽にする計画だったと考えるのが筋ってぇモンよ。自分を責めちゃぁ、いけねぇよ」


「ありがとう……もう、合わせる顔が無いって思っていたの……だから」


「しかし、このおんぼろアパートは、思った以上に、守りが堅ぇなぁ」


「結界が張って有るから、不審者は入って来ないの。無理に立ち入ると、雷が落ちるわぁ……だから、直ぐに分かるのよ」


「そうかい……」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは、冷静に振る舞いながらも、透けて見えるミコトの身体をチラ見ばかりして、気が散っていた――


「行くわ……あなたと」


「あ、あぁ」


「でもさぁ。因りによって、あなたとはねぇ」


「まぁ、過去に、散々、悪さをしたからよぉ……合わせる顔が無いのは、おいらの方だ。だからよ、きちんと会って、謝りてぇんだ。あん時ゃ、済まなかったと、一言謝りてぇんだよ」


「そう……あんた、優しいんだね」


「いやぁ、そんなんじゃ……」


「じゃぁ……着替えるわ」


 ミコトが、すっくと立ちあがると、丁度、股間が目の前に。思わず絶句して見入ってしまうのは、男の本能だった――


 

 〝 パサァ―――――――――――ッ ″



「うぁっ!」



 ミコトは、ネグリジェを脱ぎ捨てて全裸になると、箪笥から下着を取り出し、パンティーとブラを装着すると、ファンシー・ケースからワンピースを何着か取り出して、姿見の前で合わせていた――







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