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だって、真人間だもの。

 めぐみは、約束通り蓬餅と塩豆大福を買いに伊勢屋まで足を運び、人数分買うと、ついでに自分の分だけ、すあまを買った――


「すあまの柔らかさって、見悶えるわよねぇ。ほのかな甘さが、つい食べたくなっちゃうのよねぇ」


「めぐみさぁ――――んっ!」


「あぁ? 紗耶香さん。血相変えて、どうしたんですか? そんなにガッツかなくても、ちゃんと人数分、買って来ましたよぉ」


「そんなんじゃぁ、無いんですよぉっ! ピースケ君がぁ、極道に囲まれてぇ、詰められているんですよぉっ!」


「なんやて? 極道に詰められているって、何か、やらかしたのかしら? でも、そんな事って、まさか……本当に、極道なんですかぁ?」


「渡哲也みたいな人が来た後にぃ、金子信雄みたいな人とぉ、大友柳太郎みたいな人が来たんですよぉっ! もぉ、絶対にヤヴぁい人達にぃ、決まっているんですよぉ。早くぅ、助けて下さいよぉっ!」


「あぁ、はい、分かりました、レッツラ・ゴーっ!」



 めぐみは、右脇に和菓子の包み、左脇に紗耶香の右腕を抱え、一目散に走った――



「どけ、どけ、どけぇ――――いっ! ちょっと、あんた達っ! 私の、可愛いピースケちゃんに、変な真似したら、タダじゃ済まないわよっ!!」


「おっと、此方の巫女さんは、何か勘違いをしていらっしゃるようだぁ。おいっ」


「へっ、私共は、ピースケさんのお力を借りたいと、参っただけで、へっ」


「あら? ちょっと、紗耶香さん、話が違うじゃないの? ピースケちゃん、どゆこと??」


「あのぉ、例の……」


「例のって?」


「真人間ですよ」


「あぁ——ぁ、あの、他人の些細な事が許せず、暴力的だった? それなら、御安心下さい。もう、心を入れ替え、普通の人間に生まれ変わりましたから。皆さんに、御迷惑を掛ける様な事は、もう有りません。うんっ!」


「迷惑? お嬢さん、何を言っているのか知らんが、此方のピースケさんに、手荒な真似なんかしないって事は分かって貰えたかい?」


「へっ、私共は、此方のピースケさんを、漢の中の漢と見込んで参ったので」


「あら? 漢の中の漢って、ピースケちゃんはぁ、まだ、男になって無いんですよぉ、実質童貞ですから。ねっ? ぷぷぷっ!」


「そんな事を、暴露しないで下さいよっ!」


 めぐみは、和やかな笑いに包まれると思っていたが然に非ず。全員がピクリとも笑わず、ピリッと引き締まった表情をしていたので、ふと、七海に言われた事を思い出した――



 〝 めぐみお姉ちゃん、気合()っている時の男っつーのは、気を付けないとダメなんよ。冗談なんて以ての外。真剣な人を、おちょくっているみたいな感じっつーの? だからもう、超最悪なんよねぇ ″



「はっ! これはマズイ……」


 ピースケは空気を読んで、めぐみに耳打ちした――


「ヒソヒソ、コソコソ……」


「えっ!? 憂国の戦士? 誰が? 真人間が? 兵隊って……」


「巫女さん。お分かり頂けた様ですなぁ」



 めぐみは、分かって居ないのは、組長達だと理解した。しかし、レプティリアンが、本当の人間に生まれ変わったなどと言っても、信じてはくれない事も悟っていた――


「どうしよう……」


「めぐみ姐さん、とりあえず、連絡だけでも取ってみます……」


 いたたまれなくなったピースケは、仕方なくケータイで連絡をした――



 〝 ピピパポぺポ、トゥルルルルルル、トゥルルルルルル、プチッ! ″



「あ、あのぉ……もしもし……」


「おぉっ! その声は、ピースケっ! 久し振りだなぁ。元気にしているかい?」


「あぁ、うん。元気してる……」


「何だよ、声は元気無いぞ? 今でも神社でアルバイトをしてるの?」


「あぁ、うん……」


「そうかぁ、良いなぁ。俺は、工場で働いてるんだけどさ、仲間は調理師だったり、税理士を目指している奴も居るんだ。みんな頑張っているぜ」


「あぁ、そうなんだね……」


「何よ? 何か話が有るんだろ? 言いなよ」


「あのぉ……あのさぁ、皆が『真人間』をやっていたじゃない?」


「おぉ、やってたよ」


「それで、そのぉ……」


「何だよ? ハッキリ言いなよ」


「皆の、力を借りたいっていう人が居てね、今、此処に居るんだよ……」


「力を借りたいって言われてもなぁ。貸すのは良いけど、返してくれるのかい? あははは」


「いやぁ、冗談じゃなくってさ、『真人間』としての皆の活動を評価して、それで、憂国の戦士として、共に戦いたいって言うんだけど……」


「へ――ぇ。世の中には、俺達『真人間』を評価してくれる様な、奇特な人が居るんだなぁ……」


「いや、でも、皆は『真人間』を通り越して、真正の人間に生まれ変わった分けだからさぁ、断っても良いんだ、って云うか、断るよね?」


「おいおい、何だよピースケ。断る分け無いだろ? 断る理由が一つも無いよ?」


「いやっ、だって……もう、皆は、不死身じゃないんだよ? 死んじゃうよっ!」


「馬鹿だなぁ。ピースケ、俺達は今まで『永遠に死なない刑』に処せられていたんだぜ? 人間になって、死ねるんだよ。人間として、本当に死ねるんだ。分かるか?」


「いやぁ、だって……」


「俺達は、レプティリアンとして、何千年、何万年と生き続け、死に場所を求めていたんだぜ? 人が人のために死ねるのなら、本望だろう?」


「あぁ、いやぁ……」


 真人間は、田中組の組長と電話を代わるようにピースケに言った――


「あぁ、もしもし? 初めまして、真人間です。えぇ? あぁ。人を苦しめるような? 売国野郎? 詐欺師? まぁ、あれですよ、要するに、先祖を敬う心の無い連中ですよね? はい、はぁ。ぶっ殺せば良いんですよ。えぇ? だって、結局、生かしておいたら、何千万人が苦しむんですよ? たった一人のせいですよ? やりますよぉ、喜んで。はい、はい。あーぁ、御心配無く、俺達、親兄弟、親類も居ないんで、やる事やったら、法の裁きもキッチリ受けますから」


 話し終わると、組長はピースケにケータイを返した――


「話しは決まったあぁぁ……ピースケさん、恩に着るぜぇ」


「あ、いやぁ、僕は何も……」



 組長は、若い衆を一列にビシッと並べさせ、典子と紗耶香とめぐみとピースケに、直角にお辞儀をして礼を言うと、笑顔で去って行った――







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