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帰れない二人。

 影の軍団・別動隊は、一斉に後退して、様子を伺い反撃の機会を探っていた――



 〝 ブォオ—――――――――――ンッ、ブォオ—――――――――――ンッ、ブォオ—――――――――――ンッ、ブォオ—――――――――――ンッ! ″



「でえぇ—――――いっ!」


「おあぁ—――――っ!?」


 不思議な事に、素戔嗚尊スサノオノミコトが振り回す槍は、グングンと伸びて長くなって行った――


「おりゃぁ、そらよっと! そっちもだっ!」


「うわぁっ!」


 別動隊は、ひとり残らず綿飴の様に、槍に絡め捕られて行き、思い切り空に投げ飛ばされた――


「一昨日、来やがれってんだっ! あばよっ!」


「うわぁ—―――――――――――――――――――――――あぁぁ―――ぁ」


 天高く、遥か彼方、宇宙の塵となった――


「全く、世話を焼かせやがるぜ。まぁ、オレの正体を知らねぇんだから、しょうがねぇか。さぁてと、天鈿女命アメノウズメノミコトは、どうしているやら……アマテラスを誘き出すために利用された挙句、幽閉されていると見るのが道理だぁ。この『御札』と暗号が解決の鍵ってぇ分けよ」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは、寝蔵には戻らず、足早に五十鈴川を渡った。そして、何が起きているのか何も知らないめぐみは、SNSでバズっている気象・通信衛星のアマテラスの打ち上げを多摩川の土手で見物しようと意気込んでいた――


「しっかし、打ち上げも凄いけど、見物人の数も凄いなぁ……広場は無理ねぇ」


 めぐみは、人気の無い所を探して腰を下ろした――


「痛っ!」


「きゃ――ぁっ!」


「あわわわ、ごめんなさい……こんな草叢に、人が居るとは思わなかったもので」


「チッ、邪魔すんなよっ!」


「翔君、他の所へ行こう」


「無理だって、此処しか、空いて無いって……頼むよ」


「だって、覗かれるの嫌だし……」


「あの、いや、ごめんなさい、余所へ行きますので……」


 めぐみは、デバガメに間違えられそうになった事がショックだった――


「冗談じゃないわよっ! まったく、暗がりで二人きりになると、直ぐに、おっ始めるんだからっ!」


 イライラしながら、自転車に跨り、下流へ移動をした――


「チッ、特等席は家族連れで一杯だし、草叢はカップルで一杯かよ……おっ! あそこの窪地なら空いてそうね」


 めぐみは、自転車を停めると、嬉々として降りて行った。すると、土手の上からは死角になっている所に居たのは、見覚えの有る顔だった――


「うっわぁっ!」


「あぁっ!」


「イヤん……」


「ピースケちゃんも紗耶香さんも……男と女のする事ぁ、ひとつか?」


「めぐみ姐さん、勘弁して下さいよぉっ!」


「何時っも、良い所でぇ、邪魔が入るぅ……」


「邪魔が入る? 今、違う物を、入れようとしていましたね?」


「止めて下さいよぉっ!」


「ピースケちゃん。社会の窓から、シャツが出てるぞ」


「めぐみさんのぉ、意地悪ぅ!」


「まぁ、ごゆっくり。ウッヒッヒ」


 めぐみは、バツの悪そうなピースケと、赤面する紗耶香を残し窪地を後にした――


「ったく、やんなっちゃうなぁ……ノー・ハラ東京は、終わったっちゅーのっ!」


 腹が立つやら、羨ましいやら。ヤケクソで自転車を漕いでいると、呼び止める声がした――


「めぐみちゃんっ!」


「めぐみお姉ちゃ――——ぁんっ!」 


「おろ? 聞き覚えの有るこの声は? 駿さんと七海ちゃん?」


「こんばんは」


「こんばんは。あぁ、大丈夫です、大丈夫ですよ、邪魔はしませんから。私は遠——い遠——い場所で、一人静かに鑑賞しますから」


「めぐみお姉ちゃん、御結びに唐揚げに卵焼きだお?」


「マジかっ!」


「一緒に見物しようよ」


「そうですかぁ? それでは、お言葉に甘えて」


 めぐみは、御結びと唐揚げを頬張りながら、打ち上げを見物していた――


「綺麗だお……」


「本当に、流星を間近で見ている様な気がするよ」


「旨す」


「ずっと、打ち上げっ放しだお」


「随分と、お金が掛かるだろうね」


「マジで、旨す」


「後どれ位、打ち上げるん?」


「さぁ……永遠に、終わらない感じだね」


「卵焼き、最高じゃんっ!」


「永遠かぁ……何時までも、見ていたいなぁ……」


「こうして、一緒にね……」


「駿ちゅぁ—―――んっ!」


 駿が、七海の肩を抱いて引き寄せて、いいムードになっていると、めぐみが喉を詰まらせた――


「うんぐっ!」


「めぐみお姉ちゃん、大丈夫? 慌てて、ガッツいてんじゃねえよっ!」


「ほげぇっ!」


「駿ちゃん、近くの自販機で、お茶買って来るお。めぐみお姉ちゃん、それまで我慢してちょ」


 七海が、急いで土手を駆け上がって行くと、喉に詰まった御結びが、胃袋に落ちた――


「うんぐっくっく……くっはぁ—―――――ぁっ!」


「めぐみちゃん、大丈夫かいっ!」


「あ、もう大丈夫です。生き返ったぁ、死ぬかと思った」


「ふぅ。良かったぁ」


「七海ちゃん、無駄足になちゃった」


「まぁ、問題が解決したんだから、良いんじゃない?」


 急に駿の顔色が曇った――


「あのぉ……せっかく、ふたりで居る所を、ごめんなさい」


「いやぁ、そんな事は、良いんだよ……」


「どうかしたの? 何か、他に問題でも」


「めぐみちゃん……太陽がフェイクだって知っている?」


「あっ、伊邪那美様から、聞いています……けど?」


「今、その事で、素戔嗚尊スサノオノミコトが、調査に行っているらしいんだ」


「えぇっ! あの、エロ爺が?」


「めぐみちゃんは、アマテラスの事は何も聞いていないの?」


「いやぁ、まぁまぁ、そこそこは、聞いていますけど……」


「どうして、こんな事に?」 


「それは、ちょっと、話せば長いので……」


「今、何処に居るの?」


「それは、分からないんですよ。分かって居るのは、推し活に夢中な事位しか……」


「めぐみちゃん、今、WSUSの打ち上げている、あの衛星。何か、怪しいと思わないかい? タダ事じゃないよっ!」


「アマテラスと、何か関係が?」


「情報が無いから有るとは言い切れない。けど、それ以外に、あんな大量に衛星を打ち上げる事の意味が、思い当たらないんだよ……」


 駿が俯いて黙り込むと、七海が土手を降りて来た――


「めぐみお姉ちゃん、お待たせっ! お茶買ってきたお」


「七海ちゃん、有難う。でも、もう大丈夫なの。ゴメンね」


「良くなったんだから、謝らなくて良いんよ」


「一緒に飲もうか」


「うんっ!」



 駿は、南方の打ち上げる衛星に恐怖を感じていた。それは、何か大きな事が起こる、不吉な予感だった――









お読み頂き有難う御座います。


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