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推し活は、押しが勝つ?

 イッケイは、お土産を渡して別れの挨拶をすると、タクシーを五台呼び、手を振って全員を見送った――



 車中にて――


「あーぁ、楽しかったっ!」


「オカマの皆さんは優しいねぇ」


「そうなんよ。自虐は照れ隠しなんだお」


「そうね『私達は妬み嫉みが100%原動力なのっ!』って言っていたけど……気遣いがハンパ無いし」


「会話の最中は、それを感じさせないお」


「そこよな」


「うん」


「わりと、繊細さんよな?」


「感性鋭いんよ」


「しっかし、昭和歌謡に強いよね」


「選曲がハンパ無いんよ。ドラマチックだお」


「心の機微に敏感よねぇ」


「ビィ――ン、カァ―――――ンッ!」


「あははは、はははは」


 


 ―― 二月二十三日 大安 壬子


 めぐみと七海が帰宅した頃、喜多美神社の本殿からは、蝋燭の灯りが白み始めた空に溶けて行った――


「和樹君が、アマテラスを救出したら、どうしますか?」


「あなた、どうもこうも……言うまでも有りません」


「おやおや、それでは、やはり……」


「いいえ。私は何もしません」


「はぁ……何もですか?」


「えぇ、勿論です。何もしなくても、アマテラスの太陽の光が戻れば、全てが浄化されるのです」


「ふーむ。神聖な太陽の光ですか……大きな事が起こりそうですねぇ……」


「正常に戻る事が大きな事なら、そうなのでしょうねぇ。あなたが気に病む事では有りませんよ」


「はぁ……」



 めぐみは、何時も通りに起床して食事の準備をしていた。七海は仕事がお休みで、レミは昨夜のBAND練習がキツかったせいなのか「朝食は要らないから、起こさないで」と書置きがしてあった――


「まぁ、簡単だけど、無いよりはましでしょう」


 朝食を済ませて、ふたりのために作ったお稲荷さんと和え物と、味噌汁を冷蔵庫に入れて出かける準備を整えると「冷蔵庫にお稲荷さんが有るよ」と書置きを残して出かけた――



 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


 

「おざっす!」


「めぐみさん、お早う御座います」


「おはようさんですぅ」


「めぐみ姐さん、お早う御座います。ちょっと、良いですかぁ……」


「何よ?」


 ピースケは、めぐみの袖を摘まんで、典子と紗耶香に聞こえない様に小声で話した――


「何やら、本殿に動きが……」


「馬鹿ねぇ、覗いちゃダメよっ! スケベなんだからなぁ」


「違いますよっ! 合体しているとか、そう云う事じゃなくて」


「何よ?」


「本殿に、怪しい光が差し込んで、輝いていたんですよ」


「光が差し込むなんて、荘厳で良いじゃないの。神社の風景としては最高よ?」


「違いますよ。怪しいんですよっ! ちょっと、気味が悪い感じなんです」


「ふんっ、あのねぇ。アマテラスが出て来るかもしれないのよ? そうなりゃ、日本晴れよ」


「そうですよね? でも、和樹兄貴は帰って来ないし、何だか気味が悪いんですよ」


「ったく、あんたも繊細さんねぇ。ビビり過ぎだからっ! 男ならドンと構えて、大船に乗った気でいなくっちゃ。なるようにしかならないし、上手く行くわよ」


「そうでしょうか……」


「あ――のね。伊邪那岐と伊邪那美が居るんだよ? もう、逆らえる奴、居ないから」


「そ、そうですよね。絶対にそうですよね」


「そりゃ、そーですよ、えぇ」


 ピースケは、めぐみの笑顔に安堵した。その頃、和樹はアマテラスを探して岩永美世の元を訪れていた――



「これはこれは、和樹様。今や、そのお力は天手力男神アメノタヂカラオノカミを凌いでいると聞き及んでおります」


「美世さん。今日、此処へ来たの外ならぬ……」


「知っていますよ。アマテラスの居場所を、お探しなのでしょう?」


「えぇ」


「しかし、今回は、居場所が分からないのです」


「それは、どうしてなのでしょうか?」


「それは……」


「はい。それは?」


「実はアマテラスは……推し活をしていて……」


「推し活?! アマテラスがですか?」


「えぇ」


「何故、そんな……」


「ビジュアル系BANDに沼って、ほぼ、追っかけの様な有様でして……」


「追っかけ?! はっはっはっはっはっはっは。しかし、それならば、そのBANDのLIVE会場に行けば会えるではありませんか? そんな簡単な事なら、直ぐに探し出して見せましょう」


「いえっ、ところが、そう簡単には行かないのです」


「大丈夫、大丈夫っ!」 


「和樹様。誰もが皆、そう言うのですよ。しかし、いざ会場に行くと、客席には過激なメイクのオーディエンスばかり故、誰が誰やら全く分からず、探し出す事が困難なのです………」


「ほぅ」


「その上、フェイクのアマテラスが現場を仕切っているので、めったな事は出来ないと報告を受けております」


「めったな事……とは?」


 美世は、ノート・パソコンを開いて和樹に向けると「アマテラスLIVE」の動画をクリックして再生をした――


「皆っ! 今日は、DEAD ENDのLIVEに、ようこそっ!」



 〝 ウオ―――――――――ォッ! ワア―――――――――――――ッ! キャァ―――――――――ッ!! ″




「OKっ! 全速力で突っ走るぜっ! 最後まで、ヨロシク!」



 〝 ウオ―――――――――ォッ! ワア―――――――――――――ッ! キャァ―――――――――ッ!! ″



「じゃあ、最初の曲は、この曲だぁっ! 『死人に口無し』だぁ、聞いてくれっ! ワン、ツー、スリー、フォー」



 〝 ドン、シャン、ドン、シャン、ダカダカダカダカダカダカダカダカ、ズッドン、ズッドン、ダカダカダカダカダカダカダカダカ、ジャアァ――――――――――――ァンッ! ギュイ―――――――――ンッ!! ”



  〝 ウオ―――――――――ォッ! ワア―――――――――――――ッ! キャァ―――――――――ッ!! ″



 和樹は、過激で強気なロックバンドが、何故かオーディエンスに下手に出るのか分からなかった。そして、髪を染め逆毛を立ててヘッド・バンギングする姿を、如何わしい新興宗教の様に感じていた――


「和樹様。あなたの考えている通りです。この会場に居る者達は『狂信者』なのです。私の手下がどんな目に合うか、ご覧下さいませ」



 美世の厳しい表情に、和樹の緊張は高まり、画面に釘付けになっていた。そして、LIVEの真っ最中に、アマテラスを発見した者が、声を掛ける映像が映し出された――







お読み頂き有難う御座います。


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