暗黒を切り裂く光。
八雷神の竜巻は巨大化し、それに伴って勢いを増して行った。そして、暫くすると収斂して光の塊の様になり、渦が見えなくなって行った――
「ガッハッハ。これぞ、オクタゴン・サンダー・スプレッドっ!」
「本当の攻撃は、此処から始まるんだぞっ!」
「フッフッフ。冥府から逃げようなんて……一度でも考えた事を、後悔させてやるぜっ!」
「そうともよ。目に物を見せてやるっ!」
‶ シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! ″
‶ シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! ″
稲妻が回転をして、高速カッターの様に飛んで来て、八咫烏の編隊を悉く撃墜して行った。八つ裂きにされた身体と、舞い散る羽根が竜巻の光の渦に飲み込まれて行く光景は、これ以上の恐怖は有り得ないと思えるほどだった――
「あぁっ……後もう少しで、門まで辿り着けるのに、全滅だカァ! もう駄目だカァ」
「諦めちゃダメよっ! 八咫烏ちゃん。皆を地上に連れて行ってっ!」
めぐみは、瀕死の伊邪那岐を抱きかかえた伊邪那美の腰から太刀を抜くと、八咫烏の足から手を離した――
「待てっ! 何をするっ!」
「あぁっ、危ないアンッ!」
「死んじゃうウンッ!」
「ウッチャンとアッチャン、喜多美神社を守ってね……」
めぐみは、太刀を手に竜巻の光の渦の中へ飛んで行った――
「ケッ、飛んで火に入る夏の虫とはこの事だ、見くびりやがってっ!」
「季節外れも大概だな。馬鹿な小娘だぁ」
「フッフッフ、これでも食らえ――――っ!」
手裏剣の様に飛んでいたオクタゴン・サンダー・スプレッドは勢いを増し、ショット・ガンの様に炸裂した――
‶ シュシュッ、シュシュッン! シュシュッ、シュシュンッ! シャッシャァ――――――――アンッ!! ″
「この太刀に、全てを掛けるっ!」
‶ カンッ、カンッ、カッキン! カンッ、カンッ、カッキン! カンッ、カンッ、カッキン! バキィ――――――――ンッ!! ″
「うわぁっ! 我等の攻撃を防御しおったぞっ!」
「ぐぬうっ……何と云う事だ、伊邪那美の太刀を高速で振り抜き、スプレッドを打ち砕くとは……」
「お、おいっ! こっちに向かってくるぞっ!」
「奴は死ぬ気だな……えぇいっ、手加減は無用っ! 全力で太刀を打ち砕くのだっ!」
「おう――――っ!」
‶ シュシュッシュシュッ、シュシュッン! シュシュッシュシュッ、シュシュンッ! シャシャシャシャッシャァ――――――――アンッ!! ″
「ふんっ! こんな物、片っ端から粉砕してやるわよっ! うおりゃ――――――――――ぁっ!」
めぐみは、命懸けで八雷神に迫って行ったが、総攻撃を受けて防御をしていると、いつの間にか押し返されて後退して行った――
「この程度の攻撃で、参るとでも思っているのっ! 行くわよっ! おっりゃぁ―――――――――――ぁっ!」
めぐみが、勢いを増してぐんぐんと迫って来た――
「おいっ! スーパー・サンダー・ビームは未だか?」
「総攻撃を掛けた為、エネルギーを消耗しただけだ「もう少し引き付けて、狙いを定めたら伊邪那美もろ共、お見舞いしてやるぜっ!」
八咫烏は、その「もう少し」の時間で逃げ切る算段だった――
「門が見えて来たぞっ! もう少しで、脱出だカァッ!」
「めぐみちゃんを置いては、行けないアンッ!」
「見殺しには出来ないウンッ!」
「諦めが肝心! それが本人の希望なのじゃ……」
「だって、めぐみちゃんが居ないと、地上に戻っても意味が無いウンッ!」
「僕が身代わりなるア―――――ンッ、アンッ、アンッ、アンッ!」
「泣くな狛犬よ……だが、八雷神の攻撃を防御出来るだけでも信じられぬが、更に反撃に出るとは……恐るべき太刀捌き、只物では無い。あの小娘は一体、何者なのじゃ?」
「縁結びの神、縁結命アンッ!」
「やがて時読命になるお方だウンッ!」
「何ぃっ……!」
伊邪那美は眼下の戦いに視線を向けた。八雷神はめぐみを攻撃しつつ、スーパー・サンダー・ビームのエネルギーを蓄えていた。何も知らないめぐみは、ひたすら太刀を振り続けて八雷神に迫っていた――
「これは不味い、太刀捌きが見事であっても、あれでは太刀の方が持たぬ、このままでは太刀が折れてしまう……」
めぐみは、勢いに乗って竜巻の目前まで攻め込んでいた。だが、伊邪那美の言う通り、太刀の刃毀れが進んでいた――
「おりゃあ――――――――――――――――ぁっ!」
‶ パッ キィ――――――――――――――――――――ンッ! ″
「あぁっ! 折れちゃった……」
「ざまぁっ! 小娘よ、ここまで良くやったと、褒めてやるぜ」
「だが、これで終わりだっ!」
「スーパー・サンダー・ビームを食らえっ!」
伊邪那美は、光の渦の収斂がピークを迎え、スーパー・サンダー・ビームの放射によって、めぐみの死を予見すると、瞳を閉じて念じて、口中で呟いた。そして、その言霊を口から吐き出した――
‶ アマテラスよ 我に 力をぉ――――――――おっ! ″
暗黒の世界に差し込む一条の光。その光が、めぐみに向かって走り、太刀で受けて反射をすると、光輪となって冥府を照らした――
「うぎゃぁ―――――――――あっ!」
「何と云う事だ、スーパー・サンダー・ビームが……掻き消されてしまった……」
「駄目だ、目が見えない、潰れるぅ……」
八雷神は、アマテラスの光に目を回してしまい、オクタゴン・フォーメーションが崩れると落下してしまった。そして、竜巻は心地よい風となり完全な無力化に成功した――
「助かったアンッ!」
「命拾いだウンッ!」
「八咫烏よ、もう案ずる必要は無い。縁結命元へ、いざ参らんっ!」
「はっ! 今直ぐ、行くカァ、待ってろ、めぐみちゃんっ!」
めぐみは、アマテラスの光を太刀で受けたショックで、気を失って落下していた――
「キャァ―――――ッチ! これで、皆揃って地上に行けるカァッ!」
「やったアンッ!」
「大成功ウンッ!」
八咫烏は、めぐみを掴んで「カァッ!」とひと鳴きすると、大きく大きく羽ばたいて、堂々と誇らしげに冥府の門を通り抜けて行った――
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