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張り切って、イって見ようっ!

 完全にフリーズしたピースケとめぐみを見て、西野木誠はニヤリと笑った――


「説明してやろう。男はイケメンの仮装をして登場する。そして、全裸になる。ガリ勉そうに見えてもデッカイ奴もいる。12ポイント以上で合格だぁ。そして、女はスタ誕だ。自己紹介をして全裸になる。通常はプロダクションのプラカードが上がるのだが、会場の野郎どものナニがナニしたら、合格だぁ。むははははは」


「ステージ上で、公開マッパって、変態かよっ!」


「めぐみ姐さん。これは、ひょっとして、イケるかもしれませんよ……」


「ピースケちゃん迄、馬鹿な事を言わないでっ!」


「馬鹿な事だと? このオレの企画に失敗の二文字は無いっ! 嘘だと思うなら付いて来るが良いっ!」


 西野木誠に、腕を掴まれたピースケとめぐみは『仕事が有るから無理だ』と何度も訴えたが、聞き入れては貰えなかった――


「『付いて来るが良い』とか言って、これじゃ強制連行だよっ!」


「めぐみ姐さん。コレは行き掛り上、仕方が有りません。さぁ、切り替えて――ぇ、イってみようっ!」


「ノリノリかよっ!」




 ―― 日本武道館 特設ステージ


 ‶ ザワザワザワ ザワザワザワザワ ザワザワザワ ザワザワザワザワザワ ″

 

‶ ガヤガヤガヤ ガヤガヤガヤ ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ ガヤガヤガヤ ″


「うわぁっ! こんなに、大規模だなんて驚き!」


「流石、西野木誠。やる事が凄い、お金掛かってますねぇ……」


「おい、ピースケ、お前が言う通りヒキニートは卑屈で最低だ、そして、拗らせ女子も大概だぁ。だがなぁ、何故、卑屈になったのか、何故、拗らせたのか。お前は考えた事が有るか?」


「えっ? それは、ヒキニートは低学歴・低収入・低身長・ブサメン。その上、運動音痴で口下手だからでしょう? 拗らせ女子はKawaii女子の引き立て役のポジションにヒエラルキーが固定され、告白したら笑われたり、酷い時には迷惑だ不快だと罵られたからでは有りませんか?」


「フッ。しょせん童貞の理解力はその程度だな」


「誠さん、童貞はこの件と関係無いでしょう?」


「めぐみちゃん。会場に居る者達の姿をよく見るが良いっ! ピースケが言っている事は、只の偏見だぁ。その事を今から証明してやるぜっ! とうっ!」


 西野木誠はサッと姿を消した。そして、めぐみとピースケは会場に集められた者達を見回した――


「あらぁ? ピースケちゃん、イケメンも結構いるよ? しかも、めっちゃ可愛い子も沢山いるよ?」


「ほ、本当だっ! これは一体、どー云う事なんでしょう?」


「うーん、何て言うの? 普通に社会の縮図よね? お金持ちも貧乏人もイケメンも可愛い子も、デブも痩せも、ブサメンも全部揃っているよ」


「うぅ……学歴も収入もルックスも関係なかったんですね……」


 めぐみとピースケは、何時の間にか数名の男女に取り囲まれていた――


「ちょっと、あんた達、この関係者?」


「えっ! いや、違いますけどぉ……」


「関係者だろ? とぼけんなよっ!」


「そうよ、さっき、あの男と喋っていたじゃないの。とぼけたって、無駄よ」


「ったく、こんな所へ連行れた挙句、強制お見合いだなんて、どこぞのカルトかよっ!」


「本当よねぇ。これから何が起こるのか、恐ろしいわ……」


「今日は大事な契約が有るんだ、早く帰してくれっ!」


「私は推し活と、配信しなければならない動画が有るのよ? 出来なかったら、誰が責任を取ってくれるのですか?」


「いいえ、私達も此処へ強制連行されて来た訳で……ね、ピースケちゃん」


「はい、無理矢理なんです」


「そうなのか……」


「あなた達も、被害者だったのね。ご免なさい」


「疑って悪かったな。行こうぜ」


 取り囲んだ男女は肩を落として去って行った――


「何だか、不穏な空気が漂っているよ……」


「どうなる事やら。西野木誠の神力に期待しましょうっ!」


「出来るかっ!」


 その時、ザワつく日本武道館の照明が落ちた――



 ‶ パッパァ―――ンッ、タンタカ、タッタ―――――――ンッ、ザ――ザンッ! ″

 


 会場をレーザー。・ビームが縦横無尽に走り、フラッシュ・ライトがキラキラ光り、大音量と共にスポットライトを浴びて登場したのは、巫女twin'zのふたりだった――


「あぁっ! あのふたり、こんな所で何やっているのよ?」


「めぐみ姐さん、巫女twin'zも、取っ払いのショクナイをするんですね」


 会場は大歓声に包まれた――



 ‶ オォ――――――――――ッ! ウォ――――――――――ォッ! ″


 

「皆さぁ――――――んっ! こんにちはぁ―――――――っ!」



 ‶ こ ん に ち はぁ――――っ! ″



「本日、アシスタントを務めますぅ、巫女twin'zでぇ――――――――――すっ!」



 ‶ オォ――――――――――ッ! ウォ―――――――――ッ! ″



「皆様から見てぇ、向かって左側に居るのが―――――ぁ?」



‶ 夕子、ちゃぁ―――――――――――んっ! ″



「そしてぇ、向かって右側が――――――ぁ?」



 ‶ 弥生、ちゃぁ―――――――――――んっ! ″



「YES―――――っ!! それでは、間もなくぅ、開演でぇ―――――――――すっ!」



 ‶ フゥ――――――――――――――ッ! ″



「ピースケちゃん、あっけなく手の平返しだよ」


「これが西野木マジックですよっ! 野郎共は完全に飲み込まれています」


 会場に軽快な音楽が流れ、ステージが明るくなると、巫女twin'zの紹介で欽ちゃんが現れた――


「おぁっ!? 欽ちゃんだっ!」


「めぐみ姐さん、違いますよ。良く見て下さい、あれは、変装した西野木誠ですよ」


「えぇっ!」


「比較対象物が無いから本物に見えますが、あんなガタイの良い欽ちゃんは有り得ませんよ」


 西野木誠は、欽ちゃん歩きでステージの上手と下手を歩き回り、会場の空気とマイクを掴んだ――


「ヒキニートの皆さん、こんにちはっ!」



‶ こ ん に ち は ″



「これから、お待ちかねの『拗らせちゃった女子』が沢山登場します。審査を宜しくねっ! トップ・バッターはこの方ですっ!」


 ステージ中央の階段から拗らせ女子が降りて来た――


「世田谷区から来た未菜でぇ――すっ! 精一杯、頑張りますので、宜しくお願いしまぁ――すっ!」


「歌の方は?」


「ハイ、明菜ちゃんのぉ、Tango・Noirです」


「張り切って、イってみようっ!」



 西野木誠の思惑とは裏腹に、会場のヒキニート達はドン引きしていた。そして、口々に「あのブスが明菜?」「Tango・Noirって顔じゃないだろ?」「女芸人みたいな面しやがって、笑わせるぜ」「良い度胸してるよな」「明菜って誰?」と会場は騒めいていた――






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