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やるっきゃないっ!

 しかし、お会計の伝票を持って、もっこりテントを張っている自分の姿を想像すると死にたい気分になり、不思議と下心を抑えることが出来た――


「おあぁ?」


「なっ」


「めぐみ姐さん、周囲のお客さんと店員さんに笑われて、紗耶香ちゃんにまで恥をかかせる事を想像したら、息子が、大人しく黙りましたよっ!」


「フッフッフッフ。コントロールする事が出来る様になれば一人前の男。明鏡止水、無我の境地」


「そう云う事なんですね……よぉ――しっ! 頑張るぞっ!」


「待て待て、待てぇ――いっ! 気が早いっちゅ――のっ! これだから実質童貞はダメなんだ」


「え?」


「CAFEを出た後、どーすんの?」


「どうするかと問われれば、それは……あぁ――――ぁっ!」


「まぁ――た、また、もっこりだよ」


「すみません……」


「謝る事じゃないの。健全な男は皆そうなんだから」


「はぁ。しかし困ったモノですねぇ……落ち着けっ!」


「まだまだよのぅ。ピースケちゃん、童貞あるある第二条、聞いてはイケない理」


「聞いてはイケない理?」


「あんた、人目に付かない所で、キスをしようとする時どーする?」


「どーするって、やっぱ、こう『キスして良いかい?』なんちゃって、照れるなぁ、恥ずかしいですよぉ……あっ!」


「それな。聞くのは野暮、愚の骨頂。女人の心は『付いて来ているのにぃ、何よぉっ!』ってシラけるのは必定」


「うわぁっ! ヤヴァイですっ! 本気で格好付けて聞くところでしたっ! 冷や汗が出ますよ……どーすれば良いんでしょうか?」


「そうね。まず、優しく両肩に手を添える」


「両肩に手を添える……メモメモ」


「この時に力を入れてはダメ。そっと優しく包み込むようにする事」


「はぁ。そっとですかぁ……メモメモ」


「そして、正対したら瞳を見つめる。1、2、3。三秒ね」


「三秒?? 一体、どんな意味が有るのですか?」


「相手の笑顔が真顔に変わるまでの時間っ! 『ぇっ?』ってなったその瞬間を見逃がしてはなりませんっ!」


「はぁ……」


「そして、瞳から鼻筋に沿って視線を下ろして、唇にロック・オンっ!」


「おぉっ! キタキタァ――――ッ!」


「馬鹿者っ! 焦ってはダメっ! この時に吸い付く様では平手打ち。最悪の場合、爆笑されて終了」


「うわっ、ヤヴァイですっ! 唇が吸い付きそうでしたよ……ふぅ。でも、どーすれば良いのですか?」


「自然に顔を近付けるのが肝要。三分の一程度に距離を詰めたら、両肩に優しく添えた手に『ガッ』と力を入れて逃がさない様にするのです」


「えぇ? 嫌がられませんか?」


「フッフ、良い質問ですねぇ、ここは重要なポイントです。ガッと力を入れる瞬間、心の中で『死ぬまで君を離さないぞっ、良いだろう?』と呟く事です」


「ははぁ……心構えと作法が、一体になる事が大切なんですねぇ……メモメモ」


「ブチュっとしたり、いきなり舌を入れるのも無粋です。キモイ、変態、欲求不満っ! と女人の直感で見破られます」


「うわぁっ、ヤヴァイです……ブチュっとしたくて堪りませんよぉ。めぐみ姐さん、どーすれば、良いのでしょうか?」


「うむ。この時、唇と唇がそっと触れ合う様にする事。ファースト・タッチはフェザー・タッチが重要。触れるか触れないかが、BEST!」


「触れるか触れないか? はぁ、そんなに、繊細なモノなんですね……」


「左様。その儀式を完了後、相手の様子を見て……」


「相手の様子を見て……??」


「ブチュ――っと、行く」


「うわあ――ぁっ! ブチュっと、良いんですねぇ――っ!」


「もちのロ――ンっ! ここからは情熱的に攻めてOKっ! むしろ、ソフトに終わってはダメ、絶対っ!」


「え? どーしてダメなんですか?」


「女人の心を読み解けば『期待させておいて、何よっ!』って、期待感がガッカリ感に変わってしまうのです。ですから、相手が『止めてっ!』ってなるまで攻めるのが肝要」


「ふっわ――――ぁぁ、女人の攻略は、ハンパ無く、ムズイですっ!」


「その後、恥ずかしそうに相手が黙りますから、添えた手を離し、そっと肩に回します」


「肩を抱く感じですかぁ……メモメモ。で?」


「優しく、それでもクールに一拍置いて―――っ『行こうか』と言って歩き出すのです」


「え? 何処へ?」


「チッ、ホテルだろ――がっ!」


「あぁ、そう云う事ですよね……メモメモ。でも、嫌だって言われたら、どうすれば良いのでしょうか?」


「魔法の言葉を教えて進ぜよう『大丈夫』と『何もしないから』を連呼するのです。セイッ!」


「『大丈夫、大丈夫、何もしないから、大丈夫だって、何もしないから、大丈夫』なんだか、スラスラ言える自分が怖いっ!」


「上等上等、上出来です」


「で、ホテルに着いたら、どんな部屋が良いのでしょう? 安過ぎず見栄っ張りと思われない中間のグレードが良いですよね? 部屋に入るのは僕が先でしょうか? それともレディ・ファースト? 入浴してからですか? それとも、そのまま勢いに任せて押し倒した方が良いのでしょうか? うーん、飲み物とか勧めて、お茶を濁すのって、どーなんでしょう? 電気は消す派ですよね? 服は脱ぎっぱでOK?」


「勝手にしろぉ――――いっ!」


「はぁい……」



 ピースケは仕事中も「心ここに有らず」といった感じで落ち着きが無かったが、仕事を終える頃には冷静さを取り戻し、緊張していた。そして、仕事を終えると紗耶香と待ち合わせの場所に小躍りしながら向かった――




「もう九時か。さてと、私も帰ろ――うっと」



 帰宅をすると、七海とレミが夕飯を用意して待っていた――



「めぐみお姉ちゃん、お帰りっ!」


「お帰り」


「ただいまぁ……なんだか良い香り。洋食屋さんみたいな?」


「御名答っ! ジャジャ――――ンッ! 今日はレミさんが作ってくれたんだお」


「お――っと、オムライスにナポリタンにボークカツだよ。ボリューム満点、てか、こんなに食べられないよ……」


「どうしても、あのナポリタンが気になって……自分で作ってみたかったの」


「めぐみお姉ちゃん、レミさん、スーパーの一番安い材料を買いまくって、作ったんだってさ。研究した成果は旨いぜっ!」


「まぁ『作って頂いて有難う御座います』としか言えないけどさぁ。多くね?」



 めぐみは、口ではそう言っても、一口食べ始めると箸もスプーンもフォークも止まらなかった――






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