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ガールズ・バンドは憧れなんよっ!

 食卓には七海が全財産を叩いて購入した豪華なお刺身が並べられた――


「うん。美味しい。やはりシャバの飯は格別ね」


「めぐみお姉ちゃん、せっかく魚繁で中トロと大トロ買って、今夜はお刺身と巻き寿司パーティの予定だったのに……ネタが全然、足りなくなったじゃんよぉ……」


「仕方ないでしょ、人数が変わっちゃったんだから、巻き寿司は断念するしかないよ」


「ちょっと、あなた達。何をコソコソ喋っているの? 食事中は私語厳禁。常識よ」


「ムカつく……」


「でも、コレじゃ足りないわねぇ。そうねぇ……〆はお蕎麦が良いわ。買って来て」


「はぁ? このっババ……」


「ゆーたらヤバいんでしょっ!」


「あうっ、そうだった……仕方が無い、私が買って来るから七海ちゃんは此処に居て」


「うん。而今庵で打ち立てのヤツが買えるお」


「OKっ!」


 レミの我儘のせいで、めぐみが買い物に行くと、七海は茄子と舞茸の天婦羅の準備を始めた――


「さてと、私はチューニングとアンプのチェックをしなくては。コンセントは此処ね」


 ‶ ブォ――――――――――――――――――ンッ! ″


 レミがハーモニクスを鳴らしながらギターのチューニングをしていると、七海が興味津々でやって来た――


「レミさん。アンプで音出さないの?」


「えぇ。まだ温まっていないから。良い感じになるまで、暫く掛かるのよ」


「ふーん。レミさんはバンドやってたん?」


「えぇ。そうよ」


「どんなバンド?」


「一言では形容し難いけど、ブルースを基本としたバンド」


「ふーん。基本って事は、何系なん?」


「何系って言われてもねぇ……」


「まったり聴く感じ?」


「いいえ。ファンキーだから、むしろエモーショナルな感じになるでしょ?」


「え、エモーショナル? エモい感じ?」


「違う違う、全く違うわ。まぁ、ハード・ロック的な要素も有るけどメロディアスではなく、パンク程ノイジーでも無い、グルーヴィな感じ」


「ほぇ? ねぇ、何人組だったん?」 


「うーん、そうねぇ……最小で四人、最大で十一人よ」


「もしかして、ガールズバンド?」


「の、時もあったけどね」


「上手く行かなかったん? 結婚してメンバーが脱退とか?」


「まぁ、自己主張の強いのが集ると色々有るのよ。ねぇ、七海ちゃんってバンドに興味あるみたいだけど?」


「うん。ガールズ・バンドは憧れだお」


「ふーん。それで担当は?」


「担当なんて……無いお。あっシの家は、ちょっと前まで貧乏のズンドコだったんよ。だから、楽器を買う事も、習う事も諦めてたんよ。バンドなんて、夢のまた夢だったんよ」


「そう。やってみたい?」


「えぇっ! 教えてくれんのっ!」


「勿論。適性を見るけどね、それでも良い?」


「うんっ!」



 その頃めぐみは、走っていた――



「お財布持ってぇ、自転車の鍵を忘れてぇ、サンダル履きで駆けてる私って、何っ!」



 而今庵に着くと、お客さんが並んでいたので、その列の最後尾に並んだ。すると、後ろから声を掛けられた――



「めぐみちゃん、今晩は。久しぶりだね」


「あっ、駿さん」


「僕も夜食に贅沢したい時は此処へ買いに来るんだ」


「そうか、七海ちゃんの情報の出所は駿さんだったのね」


「七海ちゃんは?」


「あぁ、今、お留守番って云うか……」



 めぐみは、これ迄の経緯を駿に話した――



「あの宍戸レミが、地上復帰したのかぁ……」


「駿さん知っているの?」


「いや、名前だけは知っているけど、詳しくは知らないんだ。僕が地上に来るかなり前の事らしいけど、随分と過激なバンド活動をやっていて、八百万の神々の逆鱗に触れて地上から退去処分になり、その後の事は全く情報が無かったんだ。噂さでは『殺されたのでは?』と言われていたけど、生きていたんだね」


「えぇっ、そんな札付きのクソバ……もとい、女なんですか?」


「そうみたいだね。神を扇動し、操る活動家と云う事らしいけど、真偽の程は分からないままなんだ。地上に復帰したと云う事は、彼女の行いは正しいのかもしれないね」


「あぁ、どうして、こうも脈絡なく、色んな事が起こるのかしら。コレが私の神力だって言われるのが、一番辛いんですよ」


「それは。めぐみちゃんが現実に生きている証拠さ。生きるって絵空事じゃないからさ。都合の良い事ばかりじゃないさ」


 その時、めぐみのお腹が鳴り、つられて駿のお腹も鳴った――



 ‶ グウ――――――――――ゥ、グウ―――――――ッ! ″



「あはは、何が在ろうと、お腹が空くね」


「本当だ、うふふふふふ」


 めぐみは、駿を誘い、四人でお蕎麦を食べる事にした。そして、駿のベスパの後ろに乗って帰宅した――



 ‶ ベ――――ン、ベェ――――――――ンッ、べべンッ、ベンッ、べべべべ ″



「あれ? あの音は、駿ちゃん!?」


「ただいまぁ」


「七海ちゃん、今晩は」


「駿ちゃん、ようこそ」


「あら? お客さん?」


「初めまして、火野柳駿です。よろしく」


「初めまして。宍戸レミです」


 レミは、駿の素性を即座に見抜いた――


「駿ちゃんも一緒にお蕎麦食べるなら、海老も揚げちゃおっかなぁ。ぐふっ」


「おっと、天婦羅の準備までしてあるなんて……七海ちゃん、流石だね」


「でもぉ、お野菜がぁ、三人前しかないんよ。だからぁ、あっシの舞茸をア・ゲ・ルっ!」


「それじゃあ悪いから、半分ずつにしようよ」


「駿ちゅあ――ん、優しいお」


「くぅ――っ、七海ちゃんったら、暢気にイチゃこきやがって……」



 四人でお蕎麦を食べて後片付けを終えると、七海は駿の見送りに部屋を出て行った――



「ちょと、あなた。ケータイ貸して」


「えっ、嫌ですよ。御自分で買って下さい」


「だから、ケータイを取り上げられているの。分かるでしょ?」


「あぁっ!」


 レミは、めぐみのケータイを奪い取ると、馴染みのメンバーに連絡を取った――


「はんっ、誰も繋がらないわ……チッ、仕方が無いわね。今日の所はシャワーでも浴びて寝るとしよう。ほらっ!」


「うわっ、投げないで下さいよぉっ!」


 レミがシャワーを浴びていると、七海が戻って来た――


「ふん、ふん、ふ――ん」


「上機嫌ですねぇ」


「グッナイ・チッス。頂きましたぁ―――――っ! ぐふっ」


「チッスとか言っちゃって」


「あれ? レミさんは?」


「あぁ。今、シャワーよ」



 七海は、電源が入れっ放しのアンプが気になって仕方が無かった――






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