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BBAじゃないわよ。

 そして、地上に向かう為、軌道エレベータに乗り込み、ボタンを押して扉が閉まろうとするその瞬間、何者かが足を挟んで扉をこじ開けた――



 ‶ グイ――――――――ンッ、ガンッ! ガツンッ! ″



「間に合った――――ぁ!」


「あぁっ! あなたは、宍戸レミっ!」


 レミは、めぐみを睨みつけニヤリと笑った――


「『レミさん』だろう……あぁ?」


「あぁ、そうでした。レミさん……」


「私が乗っては、いけないみたいじゃないの?」


「いや、そんな事は言ってませんよぉ。でも、どうして……」


「私にだって都合って物が有るのよ。まぁ、あなたが必ず秋元保の確認に来ると分かっていたから」


「えっ! 待ち伏せですか?」


「ちょっと、人聞きの悪い言い方は止めなさい。まぁ、あなたのお陰でシャバに戻れるんだから、感謝しなきゃいないわね。ありがとう」


「あぁ……いや別に、感謝は要らないんですけどぉ、シャバに戻るって?」


「宍戸レミは地上名。あなたより、ずっと前から地上で任務を遂行していたのよ」


「あぁ、そっか。で?」


「はぁ?」


「いえ、レミさんは神様なんでしょう? 神名は?」


「神名は明かせないわ……まぁ、ザックリ言えば音楽の神。インディーズ・ロックのカリスマ、ってところね」


「どえぇっ! ミュージシャンなんですか?」


「そうよ。 文句ある? 見れば分るでしょう? ギターケースとTUBEアンプを持ち歩く主婦にでも見えるのかしら?」


「いやぁ、別に……」


「宍戸レミは音階よ、分かる?」


「あっ、えっと、B、B……はっ!」


「B、B、Aじゃないわよっ! シ・シ・ド・レ・ミはB、B、C、D、Eよっ!」


「今、言おうと思ったのに、言うんだものなぁ―――っ!」



 ‶ ティン、ト――――ン グイ――――――ンッ ″



 めぐみは、地上に着いたので、解放されると思い安堵した――



「では、レミさん。これで失礼します。さようなら」


「あぁ……ありがとう。さようなら」



 めぐみは、自転車に跨りペダルを踏み込むと、全身が強い疲労感に襲われた――



「はぁ、何だかとっても疲れたよ……萌絵ちゃんに君子さんに、たもっちゃん? 西木野誠の事まで考えると、もう、いっぱい、いっぱいだよ。ふぅ……」


 のんびりと漕いでいると、目の前を宍戸レミが歩いていた――


「あっ、レミさん? 今晩は。またお会いしましたね、あははは」


「あぁ」


「さようなら」


「さようなら」


 めぐみは、家路を急いだ――


「はぁ、お腹が空いたよぉ……七海ちゃんは夕飯に何を作っているのだろう? 早く帰らなくちゃ……あれ?」


 十字路を曲がると、目の前を宍戸レミが横切った――


「ハァ――ィ」


「レミさん? まーたまた、会っちゃいましたけど? あのぉ……お住まいはこの辺なんですか?」


「フッ、まあね」


「あぁ……ねぇ」


 めぐみは、嫌な予感がしたので、自転車を全速力で漕いだ――



 ‶ シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャ――――ン! ″ 



 めぐみは、後方にレミの姿が無いか確認をした――


「良し。振り切ったな……はぁ、はぁ、ふぅ」


 向き直って前を見ると、ピースサインで敬礼をするレミが目の前に居た――


「オッス!」


「どえぇっ! どうして?」


「奇遇ね」


「さようなら……」


「あぁ、さようなら」


 めぐみは、嫌な予感が的中しないように祈った――


「この角を曲がれば、後は一本道。ゆっくりと自転車を引いて歩く戦法に切り替えるとしよう」


 めぐみが自転車を引きながら歩いて行くと、レミが後ろから付かず離れず歩いて来た――


「むむっ、怪しい影が迫って来るよ……」


 小走りで先を急ぐと、レミが小走りで着いて来るの気配を感じた――


「お――っと、そうは問屋が卸しませんよっ! おりゃぁ――あっ!」


 自転車にサッと跨り、猛ダッシュで帰宅した――


「到着っ! ふぅ、 此処まで来れば安心ね」


 だが、駐輪場に自転車を停めて階段の前に来ると、そこには既にレミが居た――


「お疲れちゃんっ!」


「だっはぁ? 何で? レミさん、此処で何をしているんですか?」


「まぁ、あたしも長い事、地上に居なかったでしょ?」


「はぁ? それが何か?」


「ヤサが無くなってしまったの。分かるでしょう?」


「いや、分かりませんよ。 私に関係無いですよね?」


「関係が無い? 無い訳が無いでしょう」


「えぇ?」


「あなたのお陰でシャバに戻れたのよ。つまり、そういう事。さぁ、案内して」


「いいえ、お断りします」


「ちょっと、お茶飲むだけ」


「ダメですよっ!」


「良いじゃないの、大丈夫。何もしないから。ねっ」


 めぐみは、大丈夫の意味が分からなかったが、進路を塞がれて居た為、仕方無く案内した――


「ただいま……」


「めぐみお姉ちゃん、お帰り。あれ? この人誰?」


「七海ちゃん、この人は、ちょっと訳アリで……」


「あら? 先客が居たのね。あたしの名前は宍戸レミ。ヨロシクねっ!」


「あ、初めまして。あっシは、中俣七海です……」


「七海ちゃんって云うのね。可愛い」


「めぐみお姉ちゃん、可愛い言われたお。えへへ」


 めぐみは、慌てて七海に耳打ちをした――


「七海ちゃん、この人にババアって言ったらダメ、おばさんもダメっ! クソを付けた日にゃぁ、風穴が開くから、墓石の下でおねんねだから、禁句だよっ!」


「そうなん? 分かったお……」


「ねぇえ、可愛い七海ちゃん。ちょっと手を貸してくれない? そっちを持って」


「うん」


「持ち上げたら、そっと下ろしてね。真空管だから」


「真空管?」


「そう、このアンプは年代物なのよ。今ではヴィンテージなんて言うみたいだけど」


 玄関から中にTUBEアンプを入れると、ローラーのロックを解除して奥へ転がして行った――



 ‶ ゴオ―――――――ォッ ″


「うん、良い感じ。結構広い部屋で良かったわ」


「あのぉ……レミさん?」


「今日から、此処が私の部屋。良いでしょ? あっ、七海ちゃん。そこのギターには触らないで。触ったら……ぶっ殺すっ!」


「は、はい……」


「何をボーっとしているの? さぁ、皆で夕飯にしましょう」



 めぐみと七海は顔尾を見合わせて呆れた。しかし、仕切り上手なレミに抵抗すら出来なかった――






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