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迎えに行って返り討ち?

 そして、小窓に身を乗り出して、めぐみの頭のてっぺんから爪先まで、目を凝らしてジロジロと見た――


「そいう事か……まさか、こんな小娘がねぇ」


「はぁ? 何か問題でも」


「宍戸レミとか云う前任者が、此処から解放してくれたのは、お前の力って言ってたからさぁ。あの……」


 分室の女が何かを言おうとした時に、音も無く背後に制服を着た女がすうっと現れ、スタン・ガンの良な物で電気ショックを与えた――



 ‶ バチバチバチッ、バチバチ、ビリビリ、バチッ! ″



「うぎゃぁ―――――っ!」


「おい、新入り。私語厳禁が此処のルールだ。余計な事を口にするんじゃぁないよっ!」


 床に倒れた女の頭を制服の女は編み上げブーツの踵で踏んだ。めぐみは突然の出来事に恐怖を感じていた――


「あ、あのぉ……」


縁結命エニシムスビノミコト、用が済んだのなら、立ち去るが良い」


「は、はい、失礼しまぁす……」



 めぐみは分室を後にすると、その足で死者のゾーンへ向かった――



「あぁ、怖かったぁ。分室は更年期ババアの巣屈かよ。やれやれ」



 ―― 死者のゾーン



「こっちは照明も明るいし、ホッとするねぇ」


「いらっしゃいませ。御用件をお伺いします」


「あっ、縁結命エニシムスビノミコトですけどぉ、分室から移管された秋元保さんに面会をしたいのですが?」


「はい。畏まりました。秋元保様ですね。只今お調べして、面会の手続きをしますので、お掛けになって少しお待ち下さい」



 めぐみはソファに身体を沈めた――


「ふーむ。普通に対応して頂ける事が、こんなに有難い事だとは。感謝ですねぇ」


縁結命エニシムスビノミコト様。二月十一日、午後十九時三十五分に移管した秋元保様との面会手続きが完了しました。中央ラウンジにおりますので、中にお入り下さい」


「はぁ―――いっ!」



 ―― 中央ラウンジ


 「えっと、あったっ! 此処だね」


 

 ‶ ガチャッ! キイ―――――ッ ″



 中央ラウンジはキャバクラとおっパブを足したような状態だった。違うのは昼間の様な照明で、その事が得も言われぬ世界を表出していた――



「うぐっ、そっ閉じが正解だな……」


 めぐみは、ドアを閉めようとすると、中からグイッと開けられたので、腕を引っ張られた状態になり、前のめりになりながら入店した――


「いらっしゃいませぇ―――――――っ!」


「あら? 女性? 珍しいわねぇ」


「ママ、最近はほら? 色んな性癖の方が……」


「あっ! あ――――ぁ、そういう事ねぇ。分かりましたぁ。どぉ―――――ぞ――――お、こちらへ」


「いやいやいやいや、私はお客じゃなくて、面会に来て此処へ案内されただけですから……」


「なーんだぁ。で? 誰?」


「秋元保さんですけどぉ……」


「あーぁ、なら、呼んで来てあげる。保さぁ――ん? タモっちゃん? 面会よ、面会っ!」 


 保は膝の上に跨ったコンパニオンの胸の谷間に顔を埋めていた――


「ぷっは―――っ! 何? ママ、呼んだ?」


「タモっちゃんに面会だってばぁ。ほら、 あそこ」


「ママったら、アソコだなんて、ぐふっ。あれ? あなたは確か……」


「鯉乃めぐみです。君子さんの事でお話が……」


 めぐみは、普段きちっとした殿方程、オネーチャンのお店ではだらしなく本性剥き出しになる事に嫌悪しつつ、用件を話した――


「完全な死者として登録した訳ですし、保さんに使者として、再度お迎えに行っていただきたいのですけど」


「あ、めぐみさん。そりゃ駄目だ。お迎えなんて無理無理。あれは一度言い出したら聞かない性格ですから」


「でも……」


「良いですか。お迎えに行ってですよ、何て言われたと思います?『どの面下げて来たんだよっ! 毎日、お迎えに来て欲しいと手を合わせている時ゃ梨の礫で、今の今になって、お迎えに来られたって、あたしゃぁ、お断りだよぉ。一昨日おととい来やがれってんだっ!』って。こんな太い棒で殴られたんですよ? 暴力ですよ? 虐待ですよ? そんなのって有りますか?」


「あぁ……そうですかぁ」


「まぁ、君子もそう長くは無いんですから。来たい時に来れば良いんじゃないんですか? 放っときゃ良いんですよ。では、失礼します」


 保は踵を返して、元の席に戻って行った――


「でっかい夢、でっかいイチモツ、タモっちゃん、でぇ―――すっ! ただいま戻りましたぁ――っ!」


「お帰り、お替り、たもっちゃ―――んっ!」


「イエ――ィ!」


「飲んで飲んで飲んで、飲んで飲んで飲んで、飲んで飲んで飲んで、飲んでっ!」


「フゥ――――ッ!」



 めぐみは、完全にキャラ変している保に絶句しつつ、この状況を君子が見たら恐ろしい事になると確信し、中央ラウンジを後にした――


「やっぱ、そっ閉じが正解だったなぁ。まぁ、お迎えが来ないなら来ないで、それも良いのかなぁ……」



 めぐみは、無駄足にはなったが、結論は出たと得心し地上に戻る為、軌道エレベターへと向かった。すると、後ろから声を掛けられた――


「今晩はぁ」


「うわっ! 誰かと思えば巫女twin’zか、脅かさないでよ。ん? それって、私服」


「はぁい、コレ、地上で買ったんですっ!」


「はい、知ってますよ。でも、どうして今日は私服なの?」


「祈年祭前のぉ、ホリデーなんですねっ!」


「あー、ねぇー、忙しくなるからねぇ。ではっ」


「待って下さいよぉ。夕子とぉ?」


「弥生にぃ。聞きたい事が有りませんかっ?」


「いや、別に……」


「聞きたいですよねっ!」


「分かりました。聞きますよ」


「分室はぁ、実は懲罰房なんですねっ!」


「懲罰房?」


「問題行動を起こした神がぁ、謹慎する場所なんですねっ!」


「彷徨える魂とぉ、睨めっこしながら、時を過ごすんですねっ!」


「なーんだ。懲罰とか謹慎って云うから、もっと、厳しい物を想像したけど、睨めっこなんて大した事無いじゃないの」


「めぐみ様ぁ。彷徨える魂がぁ、誰かの手によって救済されてぇ」


「死者のゾーンに移管されるまではぁ、分室を出れないんですよぉ」


「はぁ。それって、つまり……」


「下手をするとぉ、何百年もぉ、出れないんですねっ!」


「えっ! あんな所で座って居るだけなの? あぁ、それ、キっツイなぁ‥‥」


「看守の足音がぁ、自分の牢屋の前で止まりぃ、ドアをノックされるまでぇ」


「怯え続ける――ぅ、死刑囚みたいなぁ、感じなんですねっ!」


「あんた達、そのギャル・ファッションで恐ろしい事を言うの止めいっ!」


「それではぁ、お気を付けてぇ、お帰り下さいねっ!」


「あ、有難う。お気を付けてって? 何か‥」


「めぐみ様ぁ、祈念祭にはぁ、お手伝いに参りますのでぇ」


「ヨロシクですっ! きゃはっ!」


「あ。来るのね、はい、分かりました」



 めぐみは、巫女twin’zが言葉を濁した事が気になった――







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