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夕子と弥生が大抜擢っ!

―― 二月二日 友引 丙戌



 翌朝、めぐみが目を覚ますと、昨日と同じ様に巫女twin’zは既に朝食を準備していた――


「おや? 炊き立てのご飯の良い香りが……あら? 今朝は大根の御御御付けに鯵の開き、朧昆布の湯豆腐に焼き海苔、納豆に佃煮、たくあんと梅干しかぁ……日本の朝だね――ぇ」


「お早う御座いまぁ―す。めぐみ様ぁ。朝食の御用意がもう直ぐ出来てますのでっ」


「顔を洗って来て下さいね――っ」


「あぁ。はい……どうも、有難う御座います。どーでも良いけど、あんた達、昨日は帰りが遅いから心配したわよ」


「え―――ぇ、本当ですかぁ?」


「ずいぶんと気持ち良さそうに、寝てましたけど?」


「そりゃまぁ、深夜までは付き合ってられないから先に寝たけど。でも、夜遅くまで何してたの?」


「昨日の晩はぁ、ネズミ―・シーでディナーとぉ、花火を見てぇ」


「その後はぁ、六本木と渋谷のクラブをハシゴしたんですねっ。そしたら、もう明け方。きゃはっ! ビックリしましたわぁ」


「こっちが、ビックリだよっ!」



 めぐみが用意された朝食を美味しそうに食べていると、巫女twin’zはサッサと着替えて仕事に行く準備をしていた――



「後はぁ、宜しくお願いしますねっ」


「行って来まぁ―――すっ!」


「あぁっ、行ってらっしゃい、気を付けてね……」



 ‶ ガチャッ、キィ―――ッ、バタンッ! ″



「はぁ。巫女twin’zはタフねぇ……オールで遊んだ翌朝だからこそ、朝一で出かける元気と根性に敬服するよ。でも、美味しかったぁ。ご馳走様」




 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――



「皆さん、注目っ! 明日はいよいよ待ちに待った節分祭です。良いですかっ!」



 ‶ はぁあ――――――――――いっ!! ″



「元気が有れば、何でも出来るっ!」



 ‶ ダァア――――――――ァッ! ″



「良いわよ、皆。その調子っ! それでは此処で、皆さんに、大切な『お知らせ』が有りまぁ――す」


「ねぇ、紗耶香さん『お知らせ』って何でしょう?」


「典子さんはぁ、何かぁ、企んでいるんですよぉ」


「めぐみ姐さん、夕子ちゃんと弥生ちゃんの姿が見えません。嫌な予感しかしませんよ……」


「静粛にっ! それでは発表します。明日の節分祭はこれ迄に無い画期的な企画でお送りします」


「典子さん、これ迄に無い画期的な企画って?」


「めぐみさん。古来、私達の祖先は清浄を尊び、清明なる心で日々の生活を励んで来ました。そして、立春の前日に、一陽来復を祈願し、追儺ついな『おにやらい』『豆まき』の儀式を取り行って参りました。鬼は『陰』を意味し、陰は『悪』に通じ、神代の昔『伊邪那岐イザナギ』の神が鬼を『はらう』のに桃の実を投げ、悪鬼をはらった故事にならい『鬼は外 福は内』と叫びながら豆を撒き、厄除けと開運を祈願致しました。この神事は『鬼問答』と『大国舞』『恵比寿舞』との一連の迫儺神事ですよね?」


「あ、はい。それは知ってますけど……」


「社殿にて祝詞奏上の後、神事が行われますが、鬼問答の後の『福の神の舞』を……」


「福の神の舞を……?」


「夕子さんと弥生さんに、お任せする事にしましたぁ――――――っ!」



 ‶ えぇ――――――――――っ! ″



「まだ、紅天女くれないてんにょを演じる女優さえ決まっていないと云うのに……」


「めぐみさん『夕子と弥生』が大抜擢でぇ、大躍進なんですよぉ」


「でも、それじゃあ、あんまりですっ! めぐみ姐さんと紗耶香ちゃんの立ち場が……」


「ピースケさん。ちゃんと考えて有りますから御心配無く。『夕子と弥生』のユニットは此れまでに無い、ダンサブルでポップな振り付けで来場者を圧倒すると同時に魅了する戦略なのです。私と紗耶香さんとめぐみさんでバック・ダンサーに回りますから、全てが丸く収まりますよね? そして、その結果……」


「そっ、その結果、どーなるんですか?」


「全国ニュースのトップが―――――ぁっ!『私達の節分』になるのよんっ! ふふふふ、は――っはっはっは、あ―――はっは」



 典子のプロデュースで『夕子と弥生』のユニットは『福の神の舞』を舞う事になった。そして、レッスンが始まった――



「はいっ、ワン、ツー、スリー、フォー、キック、エンッ、ターン。ワン、ツー、スリー、フォー、ステップ、ステップ、ターン。キック、エンッ、ターン、エンッ、ロック、エンッ、ターン。ステップ、ステップ、ジャンプ! OKっ、夕子さんも弥生さんも良いわよ。紗耶香さん、遅れているから体系を乱さないで」


「はいっ!」


「めぐみさん、目立とうとしないで、自己主張は邪魔っ!」


「はいっ!」


「じゃあ、最後に通しで合わせて終わりよっ!」 


「はいっ!」


「行くわよっ!」


「はいっ!」



 『夕子と弥生』は振り付けが完璧に入っているだけに止まらず、神事と親和性の高いみやびなターンを編み出し、典子の演出意図を見事に体現していた――



「完璧よっ! 明日が楽しみだわ。それでは皆さんっ、復唱をお願いしまぁ――す。『節分祭、やってしまえば、こっちの物』はいっ!」



 ‶ 節分祭、やってしまえば、こっちの物っ! ″



「はぁ――い。お疲れ様。解散っ!」



 めぐみは、明日に備え皆で飲みに行こうと誘ったが、典子は吾郎とデートで紗耶香とピースケもふたりでカラオケに行く予定が入っていて『明日の打ち上げまで我慢して下さい』と冷たくあしらわれた――



「皆、予定が有るのか……じゃあ、巫女twin’zと三人で居酒屋にでも行くとするか」



 社務所で着替えを済ませた巫女twin’zがやって来た――



「めぐみ様ぁ、お疲れさまでした―――――ぁっ!」


「お先でぇ―――――すっ!」


「あぁっ、ちょっと、其処のおふたりさん、一緒に焼き鳥でも……」



 巫女twin’zは、めぐみの言葉を意に介さず、サッサと帰って行った――



「あ――ぁ、行っちゃった。そんなに先を急ぐ旅でもあるまいに……」



 巫女twin’zは急いでいた。豊田が『自殺をしたのでは無く、本当は殺された』と云う真実を知り、失った記憶を取り戻しているのか確認する為、事務所に向かっていた――




お読み頂き有難う御座います。


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