巫女twin’z、地上を満喫。
めぐみは、七海と駿の気遣いで食卓に並んだチーズ・フォンデュを、遠慮お構い無しにペロッと平らげた巫女twin’zに呆れた――
「ねぇ。どーでも良いけど、あんた達が何で地上に居るのよっ!」
「めぐみ様。私たちは天の国から――のぉ」
「任務で来たんですねっ!」
「任務ですって? 信じられないなぁ。第一、何なのよ、その格好っ!?」
「せっかく、地上に来たので――ぇ」
「渋谷でお買い物をしただけですわぁ。てへっ!」
「しっ、し、渋谷て、あんた。下手糞な変装かと思ったよっ! このクソ寒いのに、そんな、露出の多い派手なファッションて……今時、ギャル系なんて流行らないわよっ!」
「チッチッチ、めぐみお姉ちゃん、ちげーよ。それって、今、一番来ているヤバいギャル系のブランドだから。間っ違い無く、イケてるんよ」
「あ。人の事、ババア扱いしてんな……」
「きゃはっ! 流石、七海様ですわぁ。優しくってぇ、お美しぃ、カリスマ店長さんが――ぁ」
「直々にぃ、コーディネイトしてくれたんですよぉ。へけっ」
「マジでぇ? シャープでエッヂぃな甘辛コーデ、超イケてるやん。ヤヴぁいぜぇ」
「ぬぬぬっ、七海ちゃんを味方にしやがって……」
「まぁまぁ。めぐみちゃん落ち着いて。ところで、おふたりの任務とは……何なんだい?」
「はぁ―――い。死神様がぁ、死者を蘇らせたので――ぇ」
「こうして、ふたりで天の国から連れて来たんですねっ!」
‶ 蘇らせたぁ――――――――――あっ!? ″
「ちょっと、どう云う事よ? 蘇ったのは……もしや?」
「はぁ――い。その、もしやですっ!」
「ひろ子さんの旦那様のぉ、豊田様がぁ、蘇ったんですねっ!」
「なんですって!? ひろ子さんの旦那さんがっ……マジで?」
「死神様の判断でぇ、冥府に連行しないで存在を抹消をしたのは―――ぁ」
「御夫婦を元通りにするためですわぁ。うふふ」
「そうだったのね……死神さん。そういう理由が有るのなら、早く言ってくれれば良いのにぃ……」
「めぐみ様ぁ。死神様はぁ、余計な事は言わないんですねっ」
「あぁ見えてぇ、本当は――ぁ、結構シャイなお方なんですよ。へけっ!」
「めぐみお姉ちゃん、ひろ子さんて、あのSM倶楽部の女王様っしょ? 辛く苦しい女の人生。旦那ちゃんが蘇ったんなら、超嬉しいじゃんよぉ――っ! 良かったお」
「うーむ。やはり、そう云う事だったのか……」
「えっ? 駿さん知っていたの?」
「いや、知っていた訳じゃないけど……七海ちゃんから『SM倶楽部での出来事』を聞くその前に、冥府から『出生取り消し』の報告が来ていたから、関係が有るのかと思ってね。通常、出生の取り消しは天の国からなんだよ。だから、色々と混乱する様な気がして‥‥その事を食事をしながら、話そうと思っていたんだ」
「そうだったんですね。そりゃぁ、混乱しますよ『存在抹消と蘇り』のダブルじゃねぇ……ねぇ、あんた達。んで、その後はどーなんの? もう、豊田さんはひろ子さんと再会したの?」
「それはぁ、未だなんですねっ」
「実はぁ……」
‶ えぇ――――――っ! 監禁したぁ―――――――――あっ! ″
「何でよ? 早く合わせてあげれば良いじゃないの」
「めぐみ様。簡単に合わせたらツマラナイですわぁ」
「せっかくですからぁ……ちょっとだけ、空白の時間を作ってぇ、私達は地上を満喫したいんですねっ!」
「遊びかっ! 観光目的かよっ!」
「だぁ――ってぇ。私達はぁ、こんな時くらいしか、地上には来れませんよねっ」
「貴重な機会はぁ、絶対に逃せませんわぁ。きゃはっ!」
「あんた達。地上に来れてそんなに嬉しい?」
「はいっ!」
「楽しい?」
「最高でぇ――すっ。うふふふふっ」
「ひろ子さんも、良い迷惑だなぁ……」
「めぐみちゃん、堀内の存在が消えたと云う事は、彼の家族も消えたんだよ」
「家族って?」
「奥さんは今も生きているけど、ふたりの間に生まれた三人の子供は当然、この世には居なかった事になり、関わって来た多くの人の記憶から消えたんだ。だから、蘇った豊田さんは……記憶が混乱すると思うんだ」
「流石、駿様ですわぁ。その記憶を取り戻すためにも―――ぉ」
「空白の三日間が――ぁ、必要なんですねっ!」
めぐみは巫女twin’zに上手い事言い包められている様な気もしたが、ちょっと位のズルには目を瞑ろうと思った。しかし、駿の表情に陰りが有る事が気になっていた――
「駿さん。まだ何か……気になる事でも?」
「うん……実は、豊田さんは……」
駿が核心に触れそうになったその時、巫女twin’zがふたりの会話を遮った――
「駿様ぁ、今夜はもう遅いですし――ぃ」
「七海様をぉ、送って行った方が良いですわぁ」
「あっ、あぁ。そうだね、もうこんな時間だし。七海ちゃん、送って行くよ」
「巫女twin’zは気が利くお。ナイス・アシストだお。ぐふっ」
「それではぁ。駿様、七海様。御馳走様でした――ぁ。美味しかったでぇ――すっ!」
「お気を付けてっ、お帰り下さいませ――ぇ。おやすみなさぁ―――いっ!」
「あっ、あぁ。おやすみ。めぐみちゃん、楽しかったよ。七海ちゃん行こう」
「うんっ!」
七海は、帰り際に巫女twin’zにダブル・ピースをして、にんまりと笑ってウインクをして出て行った――
「帰ったぞっと、ふぅ。後片付けは私がするからねっ」
「私は、お風呂を入れますわ――ぁ」
楽しそうな巫女twin’zの前で仁王立ちのめぐみが居た――
「ちょっと、待てぇ――――――いぃっ!」
「ほぇ?」
「ほゎ?」
「あんた達、もしかして帰らない気?」
「だぁ――てぇ。何処にも行く所なんて御座いませんわぁ」
「身寄りの無い、可哀そうな巫女twin’zを見捨てる気なんですかぁ?」
「えっ? 身寄りの無いって、私だって身寄りが無いのは一緒」
「だからぁ。一緒に居るのが――ぁ」
「一番ですよねっ!」
「ぐぬぅっ……セリフ割るなっ! ターンすなっ! あっ、布団敷くなっ! コラっ!」
巫女twin’zは、後片付けとお風呂の準備を目にも止まらぬ早業で完了すると、さっさと布団を敷いてしまった――
「めぐみ様ぁ。お風呂をどうぞ」
「はい、有難う御座います。って、私の部屋だっちゅ――のっ!」
結局、めぐみは巫女twin’zと一緒に湯船に浸かり、コーヒー牛乳を飲む正しい作法を教えて、川の字で寝る事になった――
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