神様の罰ゲーム?!
喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――
「おざっす」
「めぐみさん、お早う」
「おはようございますぅ」
「めぐみ姐さん、お早う御座いますっ!」
「皆さん、お早いですねぇ。しかも、元気でやる気満々……ふわぁぁ」
「めぐみさん、朝から欠伸なんて。いよいよ節分よっ! 新しい年を迎えるのに気合が入るのは当然でしょっ!」
「さーせん。ちょっと、寝不足な物で……あはは」
「典子さんはぁ、気合入り過ぎなんですよぉ。もう少しぃ、肩の力を抜いて下さいよぉ」
「紗耶香ちゃんの言う通りです。力が入り過ぎていると、却って失敗するものですからね」
「フッフッフ。あなた達は何も知らないのねぇ。今年の節分は例年以上の人出になるの、喜多美神社史上最大よっ!」
「自分史上最高とかぁ、信用出来ないんですよぉ。今年の節分がぁ、例年以上だとぉ、どうしてぇ、分かるんですかぁ?」
「データは裏切らないわっ!」
‶ デ―――――タ―――ぁ? ″
「そうよっ! ラノベによる素戔嗚尊のざまぁ系、アイドルグループの絵馬バトルに御朱印帳のムーブ。このビッグ・ウェーブに乗って乗って乗りまくるのよっ!」
典子は、大きな段ボール箱を皆の前に『ドンっ!』と置いた――
「めぐみ姐さん、これはっ……」
「何々『素行不良のそこのあなた。家族や人間関係の軋轢に苦しむそこのあなた。そんなあなたもこれさえ有れば一発逆転っ! 素戔嗚尊があなたを護りますっ!』だぁ?」
「典子さん、そんなぁ、インチキ臭いキャッチコピーでぇ、御守りが売れるとでもぉ、思っているんですかぁ?」
「売れますよぉ―――――だっ!」
「紗耶香ちゃん、他にもまだ有りますよ……あっ! めぐみ姐さん、こ、これはっ!」
「何々『絵馬に願いをっ! 絵馬の数だけ願いが叶う、思いよ届けっ! 総選挙っ!』って、一体、何に乗っかっているんですか?」
「絵馬バトルをするの。そして、二週間後に結果発表よっ! 一番売れたアイドル絵馬を購入した人にはもれなく金の絵馬を、二番目の人にはキーホルダーを、三番目の人のはステッカーをあげるのよんっ!」
「うぐっ、買って楽しい、当たって嬉しい。その結果を確認するために再び神社を訪れるっ! 無駄にお金と時間を使わせると云う戦略かぁ……」
「典子さんはぁ、ビッグ・ウェーブに乗りまくってぇ、踏み潰しているんですよぉ」
「紗耶香さん『この、クッソ忙しい時にぃ、より一層ぉ、煩雑な作業がぁ、増えるだけなんですよぉ』と思っているのでしょう?」
「ぬぬっ!」
「フッフッフ。そりゃぁ―――そうですよ。そぉ―――ですとも。だが、しかぁ――しっ! 漫然と繰り返しの日々から脱却するためには戦略が必要なのよっ! そして、神は我を見捨てなかったっ!」
「典子さん。もしや?」
「めぐみさん。その『もしや』なのよっ! この人手不足の昨今、薄給の神社に明日から短期のアルバイトが、ふたりも来てくれる事になったの。皆、ヨロシクねっ!」
典子は絵馬と御守りの納品に二トントラック三台と四トントラックをチャーターしていたので、授与所を出て社務所に向かった――
「しかし、データって言われてもねぇ……」
「めぐみ姐さん、データが裏切らないのは事実です。しかも最近、高額の寄進が有りましたよね? その為、何時もより盛大な行事を執り行う計画から導き出した戦略が絵馬と御守りと御朱印帳のトライアングル・シナジー効果なのでしょう」
「寄進かぁ……ひろ子さんの寄進で豆撒きを盛大にやるって事ね。ふぅ……」
「溜息なんか吐いて。めぐみ姐さんらしくないですよ?」
「だって、昨日は明け方まで大変だったのよ……」
‶ えぇぇ――――――――――ぇえっ!! 殺しちゃったんですかぁっ! ″
「しぃっ! 大きな声を出さないでよっ! 紗耶香さんに聞こえるでしょう」
「だって、そんなことをしたら……」
「死神さんが、スルッと丸っと解決してくれたから大丈夫よ」
「楽観的ですね。僕には人がひとり死んで簡単に解決するとは思えないんですけどねぇ……」
「ふーむ。そうだっ! そう云えば神官から連絡も無いし、天の国に問い合わせをしてみよっかな」
めぐみは懐からケータイを取り出すと、天の国に問い合わせをした――
‶ ピロリロロン ピンッ! ようこそ、chatGPTへ。さぁ、新しい時代の扉を、今直ぐ開けようっ! ″
「もう何度も開けているっちゅ――のっ!」
‶ はぁ――い、Navigatorはぁ、chatGPTのマスコット・キャラクターの『巫女twin’z』でぇ――――――すっ! ″
「あのぉ。地上で人間が存在を抹消された場合なんですけどぉ、その後って、どーなりますかぁ?」
‶ タ――ン、タタタタ、タ―ン、タ―ン。タタタタ、タン、タン、タ―ン ″
「ん? なんか音楽が聞こえる」
‶ お問い合わせ有難う御座います。chatGPTは、只今メンテナス中で御座います。ご不便をお掛けして申し訳ありませんが、日を改めて再度、問合せをして下さい ″
「えぇっ、今話していたのに?」
‶ プツン、ツゥ―――、ツゥ―――、ツゥ―――、ツゥ――― ″
「あぁっ、切れちゃった……前回は私に暴言を吐いて一方的に切ったし、おっかしいなぁ。いや? 怪しいぞ。さては巫女twin’zめ、chatGPTを装いAIのフリをして言いたい事を言っていただけだな。しかし、今回は突然メンテナンス中だと‥‥嫌な予感しかしないよ」
―― 天の国 死者のゾーン
「わっせ わっせ」
「せか、せか、よいしょっとっ!」
「ふぅ。chatGPTなんかやってられませんわぁ。ふぅ……」
「突然の大忙しでパニッてます」
巫女twin’zは大きな声で呼び掛けた――
「豊田様ぁ。豊田様はいませんか――ぁ?」
「此方に豊田秀夫様はいらしゃいませんか――ぁ?」
その呼びかけに、ひとりの男が手を挙げた――
「あ? あの‥‥豊田秀夫は私ですが」
「豊田様ですねっ。おめでとう御座いますぅ。地上に戻れる事になりましたぁ」
「えぇっ! 本当ですかっ!」
「時間が無いのでぇ、急いで支度をお願いしますねっ!」
「QOL爆上げの此処の生活が、けっこう気に入っていたのですが……」
「豊田様っ! そんな事を言ったら罰が当たりますよっ!」
「奥様が泣きますよっ!」
「ひろ子が?」
豊田は、自分がひろ子に苦労を掛けて泣かせっ放しだった事を思うと、地上に戻る事は罰が当たる事以上に辛く感じていた――
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