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ピースケの青春。

 ネオン煌めく不夜城新宿。ピースケと待ち合わせをした真人間達がやって来た――



‶ 俺達ぁ、真人間。真面目な真人間っ、俺達が怒れば、嵐を呼ぶぜっ! ″

 


「なぁ。怒っちゃいけねえんだろ?」


「そうだったなぁ」


「限りなく白に近いグレーな人達まで漂白しちゃぁ、ならねえんだよなぁ……」


「こうして人間をやってられるのも……あの人のお陰だし」


「しかし、片目片耳を閉じるってぇのも、中々難しいもんだなぁ」


「まぁな……でも、今夜はピースケと楽しもうぜっ!」


「おうっ!」


「そうだな」



 何も知らない真人間達を余所に、家出少女もまた、待ち合わせをしていた――



「あぁ―――っ、ミホ。待った?」


「ユカちん、遅いよっ! 凍え死にそうだよぉ……」


「ねぇミホ、約束の時間より早く来たのに凍えているなんて……また、あのオジサン達を此処で待っていたでしょう?」


「別に……」


「嘘。顔に書いて有るもん。気持ちは分かる。あんな親切なオジサン達に出会えたのはラッキー。だけどね、怪しいモンよ。現実は厳しいよ」


「何がよ?」


「ああ云う、一見、親切そうなおじさんが、実はとんでもない悪党だったりするの」


「どうして? そんな風に悪く云う事無いでしょ。あの人達は真人間よ。俺達は真人間だって言っていたもん」


「危ない危ない。ミホはこの街に来たばかりだから分かんないのよ『真人間の仮面を被った悪魔』って可能性も有るって言っているの。ほら、この間迄あの辺でウロチョロしていたマイって娘。覚えているでしょ?」


「あぁ、うん」


「餌付けされた挙句、風俗に落とされたって」


「えっ、マイちゃんが?」


「『二千万で売るはずだったけど、千六百万にしかならなかった。魔改造に四百万も掛かっって大損した』って。ホストが笑って言っていたのを聞いちゃったの」


「魔改造って?」


「商品化するための美容整形代。目と鼻と唇と、顎を少し削って、I-CUPに豊胸したんだってさ。もう、街で会っても誰だか分からないよ」


「酷い話。でも、明日は我が身って事かぁ……」



 ミホは家出をして、ユカと出会った。ユカも元は家出少女で新宿、渋谷、六本木を転々としながら結局、新宿に落ち着いた。未成年で身寄りのない家出少女がどんな目に合うかを熟知していたからから、ミホを放っては置けなかった――



「あっ! オジサンっ!」


 ミホは表通りを歩いて行く真人間達を発見した――


「やぁ、確か……君は……ミホちゃんだっけ?」


「そうだ、ミホちゃんだ」


「美人の名前は忘れないぜ」


「エヘヘ、会いたかった。この間は有難う」


「ん? この間って……何だっけ?」


「えっ、覚えていないの? ミホは、あんなに沢山お金を貰ったから、暫くマン喫で快適だったよ」


「そうだっけ? でも、マン喫を満喫出来て良かったねぇ」


「あはは、駄洒落かよ。いやぁ、色んな͡娘に『お金配り』をしたから、全部は覚えていないんだよ」


「悪く思わないでね。ミホちゃん」


「お前、馴れ馴れしいぞ」


「何だよ、嫉妬すんなって。あははは」



 ミホは物欲しそうな眼をしていた。そして、その後ろでユカが疑いの目をしていた――



「俺、今日はあまり持ち合わせが……」


「なぁ、お前持ってんだろ?」


「いやっ、俺も今夜は遊ぶ金だけなんだ。そう云うお前は?」


「右に同じ。世直しは禁止だからさ……」



 バツが悪そうに下を向く真人間達を気遣いミホが言った――



「いいよ。オジサン達にまた会えて嬉しいよ」


「そう言って貰えるとオレも嬉しいよ。俺達、今日は待ち合わせなんだよ」


「だから皆、余計なお金を持って無いんだ。ゴメンな」


「しかし、待ち合わせで持ち合わせが無いなんて皮肉だな……じゃぁ、オジサン達は待ち合わせが有るからさ」


 去り際にミホが悲しそうな眼をするので、真人間達はその場を去る事が出来なくなった――


「ところで、ミホちゃん達? は、これからどーすんの?」


「あっ、紹介するよ。友達のユカちん」


「今晩は。ユカです」


「今晩は」


「うちらは別にする事も無いし、暇してんの」


「俺達はこれから飯食ってレイト・ショーを観て、その後、下北沢の居酒屋に行くけど、付き合う?」


「えぇっ! 良いの?」


「ミホ、止めなよっ! 迷惑だよ」


 ミホが瞳を輝かせた一方で、ユカは油断させておいて、居酒屋で薬でも飲ませる気だと疑っていた――


「ユカちゃんだっけ? 迷惑なんかじゃないよ。ある意味、逆に、迷惑かもしれないけどさ。あはは」


「逆にって?」


「待ち合わせをしているのはピースケって云う奴なんだけどさ。未成年で童貞なんだぜ」


「馬鹿っ! そんな言い方したら筆おろしを頼んでいるみたいじゃないかっ!」


「あっはっは、下ネタかよ。ピースケが筆おろしなんて十年早いっ!」


「おいおい、十年は可哀想だろ。おっと、話が脱線しちまったぜ。まぁ、要するに、まだ子供なんだよ。レイト・ショーと言ってもアニメだしさ」


「アニメって、もしかして……」


「名探偵コンナンだよ」


「うわぁ、私、観たかったの。ユカちんも一緒に行こうよ」


「ダメよ」


「どうして?『人の好意を無にしちゃ駄目だ』って、何時も私に言っている癖に」


「分かったわよ。でも、食事と映画だけ。居酒屋には行かないよ」


「OK、じゃあそう云う事でっ!」



 ピースケが待ち合わせの場所で待っていると。真人間がふたりの女性を連れて現れたので驚いた――



「ようっ! ピースケ。待たせたな」


「うん……あの……」


「何だよ、変な目で見るなよ」


「このふたりはナンパした訳じゃないぜ」


「今晩は。ミホです」


「私はユカ。ヨロシクね」


「あっ、はい……」


「ピースケ、緊張するなって。可愛いなぁ」


「緊張なんてしていませんよっ! 女の子を連れて来るなんて聞いていなかったから、ちょっと驚いただけです」


「さて、飯はどーする?」


「明石家のロールキャベツか?」


「いいえ、新宿はこう云う街ですからね、値段ばかりで、大して美味しいお店は有りませんよ」


「ほう、ピースケ。じゃあ、どーすんだい?」


「そこまで言うなら、ピースケ。お前が案内してくれよな」


 ピースケは事前にリサーチ済みで、高層ビルのスカイ・レストランに案内した――


「何だよ。お上りさん御用達のコースかよ」


「上っているだけにな。あははは」


「どーせ、大して美味しくないお店ばかりだから……ロケーションを取ったんですよ……」



 勢いよく駆け上がるエレベーターを降りて右手に進むと、ピースケの予約したお店が現れた――








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