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親切は血の雨が降る。

 真人間達は夜の街に繰り出そうと電車に乗り込んだ。そして、早速、正しい行いの押し売りを始めた――


「おい。お兄さん達、何やってんだい?」


「おぁ?」


 座っていた若い男達は顔を上げて、鬱陶しいオッサン達に目を細めた――


「けっ、見りゃぁ分かるだろーが」


「座ってんだよ」


 

‶ あ―――っはっは ″


「お兄さん達。何が可笑しいんだ? 笑い事じゃないぞ」


 一瞬にして車内に緊張感が走った――


「あぁ? 何だテメぇ、文句あんのか?」


「お年寄りが立っているだろ? 何故、席を譲らないんだ?」


「けっ、最近のお年寄りは、ボクたちより、健康でぇ――すっ!」


「こっちは朝から働いて疲れ果ててまぁ―――――すっ!」


「坊や達、よく聞け。電車に乗ったら先ず高齢者と子供、女性に気を配れ」


「オレ達、金払っているんで。座るは当然の権利でぇ―――――すっ!」


「兄ちゃん。誰も座るなとは言っていない……だがな、お年寄りは皆、謙虚だ。だから、乗り込んで気来る者の中に、お年寄りや身体の不自由な人を発見したら、さりげなく立ち上がり、速やかに席を譲れ……分かったな」


「くたばり損ないの発見機持ってねぇから、分かんねぇなぁ」


「車掌さんいませんかぁ? 変なオッサンに弄られて迷惑していまぁ――――すっ!」 


「オッサン、良く見てみろよ。席を譲らないのは、オレ達だけじゃねぇだろ? 笑わせんなよっ!」 


 真人間達は顔を見合わせた――


「此奴ら、日本語が通じないみたいだなぁ」


「あぁ、日本人じゃないねぇ」


「そう云う事だなぁ」


 真人間達の呟きに、ひとりの若者がキレた――


「人種差別が始まっちゃいましたぁ――っ! このオッサンはレイシストでぇ――――すっ! 人種差別は止めて下さぁ―――い!」


 真人間達は顔を見合わせ、ニヤリと笑った――


「どうやら、日本人はおろか人間でも無いみたいだなぁ」


「あぁ。赤い血の通った人間じゃ無いなぁ……」


「冷血動物みたいな人間を見ると、虫唾が走るぜ」



 座っていた若い男達がそっぽを向くと、真人間達の顔色が変わった――



「どけっ!」


 真人間の一人がドスの利いた声で命令をするとを、ひとりの男がブチ切れて、立ち上がりざまに、頭突きを食らわせた――



 ‶ ガッツン! ″



「大人しくしてりゃ、調子に乗りやがって。オッサン、喧嘩売ってんのか? 面白ぇなぁ。やってやるよっ!」


「ふ――ん。笑わせるなと言いながら笑い、面白いと言いながら怒ってみたり……可笑しな奴等だなぁ。電車賃の持ち合わせは有る様だが、人を思いやる優しい心は持ち合わせて無い様だぁ……」


「うぜぇんだよっ!」


 若い男が電光石火で右ストレートを出したが、真人間の喉輪が早く、のけぞってパンチは空を切り、窓に後頭部を打ち付けて、そのまま元の席に座り込んだー―


「やりやがったなっ!」


 ふたり目の男は、体を躱して足を払うと、床に顔面を強打した。そして、三人目の男が、隙をついてパンチを繰り出した――


 ‶ パアァ―――――――ンッ! ″


 真人間は男の拳を右手で受け止めた。そして、男の拳を掴んで離さず睨み合いになったが、次の瞬間、男の顔が苦痛に歪んだ――



 ‶ ぎゃぁあ――――――ぁっ! ″



 真人間はリンゴを潰す様に拳を握り潰した――



「助けてくれぇ―――――――ぇっ!」



 男達は、電車が停車したのを幸いに、逃げてホームを走って行った。喧嘩が始まると乗客達は皆、他の車両に移って行ったので、周囲には誰も居なくなっていた――


「やれやれ。まぁ、これで少しは懲りただろう」


「あぁ、少なくとも、ひとりはな」


「そうだな。だが、まだまだ、やらなくてはならないぜ……」




 ‶ 新宿、新宿――っ、終点でぇ―――す。お忘れ物、御座いませんように ″




 真人間達は新宿歌舞伎町にて掃討作戦を開始した。そして、パトカーに救急車が出動する騒ぎになり、翌朝のニュースを賑わせる事となった――



―― 一月二十四日 先負 丁丑



 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――



「おざっす!」


「めぐみさん、お早う御座います」


「めぐみさん、お早う御座いまぁす」


「めぐみ姐さん、お早う御座います……」


「あら? ピースケちゃん、元気無いわねぇ?」


「めぐみ姐さん、実は……ちょっと、相談が有りまして……」


「えぇ? 昨日、相談は受けたじゃないの?」


「その続きなんですよぉ……」


「またですかぁ? もう、勘弁して下さいよぉ……」



 ―― お昼休み


「めぐみ姐さん、今朝のニュースは、御覧になって無いんですか?」


「はぁ。御覧になっていませんけど。何か?」


「昨日の晩、真人間達が新宿で大暴れしたんですよっ!」


「真人間達が大暴れ?」


「そうなんですよ……」


「ふーん。まぁ、極道やチャイニーズ・マフィアとやんちゃする位、大目に見てあげれば? それが漢と云うものよ。うふふっ」


「そんなんじゃ、ないんですよっ! 政財界に法曹界、医師、弁護士、公務員まで、治外法権が如く、少女買春やカジノに通う連中を片っ端から〆ているんです。兎に角、一刻も早く教育的指導をお願いしますっ!」


「あらら? ピースケちゃんがそんなマジになるなんて……しょうがないわねぇっ! なら、サッサとセッティングしなさいっ!」


「はいっ! 有難う御座いますっ!」」


  

 ピースケは真人間達に招集を掛けると共に、めぐみに行動履歴のデータを渡した――


「ふーむ、なるほど。あっ、これは、中々。うーむ。これはちょっと、やり過ぎかなぁ……あぁ、こりゃぁダメだ。しかし、レプティリアンの時から成長してねぇなぁ。ったく、これじゃ、その内、抗争に発展しちゃうよ……」



 めぐみはデータを読みながら、せっかく人間に生まれ変わったのに、以前と行動が変わらない真人間達に怒りを覚え始めていた――







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