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冥府からの帰還。

 めぐみは慌ててケータイを取り出した――



 ‶ ピロリロリン、ピンッ! ″


 ‶ はぁ――――いっ! 巫女twin’zでぇ―――――――すっ ″


「ん? あんた達、今頃なんの用?」


「めぐみ様、お帰りなさいませ――ぇ。地獄巡りを御堪能頂いた様で、何よりでぇ――すっ!」


「大分に観光旅行に行っていた訳じゃないのっ!」


「ファースト・キスまでされてぇ。モテモテでぇ、羨ましいですわぁ」


「もうっ、からかわないで。早く、要件を言いなさいっ!」


「あっ、えっとですねぇ。よく聞いて下さいね。アッチャンとウッチャンが元の位置に戻ると、その時点で良仁さんが蘇ります。そして、全員の記憶が書き変わりますのでご注意くださいねぇ」


「えっ? あれ? そう云えば……良仁さんは天の国に戻らなくて良くなったって事なの?」


「勿論でぇ――――すっ!」


「まぁ、凄いっ! 本当に蘇ったって事なのね。それなら、記憶が書き変わってもしょうが無いよ。七海ちゃんが私の事を忘れても、それで家族三人が幸せに暮らせるなら、諦めるよ‥‥‥」


「えっと、ですね。記憶が書き変わってもぉ、幸せかどうかはぁ。水物でぇ――――すっ!」


「はぁ? 幸せに決まってんだろ―がっ! 七海ちゃんはねぇ、お父さんが居なかったが故に、人には言えない苦労が沢山有ったんだよぉ」


「はい。残念でしたぁ――――っ! 七海さんの人生は茨の道でぇ―――――すっ!」


「ほぇ? 何で? 良仁さんを助けたのに? どうして、七海ちゃんが茨の道を歩む事になるのよ?」


「えっとですねぇ、人間はそんなに単純では無いんですよぉ。良仁さんと共に生きる人生はぁ、波乱万丈なんですよぉ」


「どう云う事?」


「良仁さんはぁ、港々に女が居てぇ、愛人との間に子供が生まれるんですねっ。由紀恵さんはぁ、教育ママになってぇ、七海ちゃんは私立の名門女子高に通っているんですけどぉ、喧嘩ばかりでぇ、裏バンになりまぁ――――すっ!」


「結局、不良なのかぁ。あの性格だしなぁ……お行儀良く制服着て可愛い女子高生にはなれないのかぁ……残念。でも、人生色々、それも人生。しかし、天の国も良く良仁さんを許したわねぇ」


「えっとですねぇ、それはぁ、死神さんのぉ、粋な計らいって奴なんですねっ!」


「えっ……」


「めぐみ様はぁ、未だ『時』を自在に移動出来る能力が無いじゃないですかぁ。だからぁ、死神さんがぁ、最大縁の配慮をしてぇ、良仁さんが地上で生活出来る様にぃ、名簿から名前を削除したんですよぉ。まぁ、天の国の死者のゾーンに戻ってもぉ、再び脱走したら困りますしねっ」


「そうなんだぁ……本当なら、私が駿さんと一緒に生まれた時点に行かなければならなかったのに……死神さんって、なんて、お優しい方なのだろう……有難い事ねぇ」


「おわっ! めぐみ様の心も動いた感じですかぁ? 死神様にぃ、本気で、惚れちゃたって事ですかねっ。ヒュー、ヒュー」


「冷やかさないでよっ! ねぇ。注意ってそれだけ? 人も神も運命を受け入れるしか無いでしょ? これ以上は時間の無駄だから。切るよっ!」


「あっ、慌てないで下さいよぉ。まぁ、時間の無駄とも言えますけどぉ、切る前にぃ、ちょっとお話が」


「何よ? サッサと話しなさいよっ!」


「アッチャンとウッチャンが元の位置に戻る前にぃ、オプションが御座いましてぇ」


「オプション? オプションって何よ?」


「それはぁ、記憶はそのままでぇ、家族三人で暮らすって事なんですねっ」


「記憶はそのまま? どー云う事?」


「えっとですねぇ、めぐみ様が神様だと云う事をぉ、知っているのに知らんぷり、ナゼなのぉ―――――って、事なんですよぉ」


「つまり、津村武史と同じって事か? まぁ、今更、隠す程の事も無いけどね。私が神様だなんて誰も信じないからさ」


「オプションをご利用頂いた場合はぁ、七海さんの人生はぁ、全くの新展開が待っている訳なんですねっ! どうします?」


「そっか。じゃぁ、それで…………あっ、いやぁ。ちょっと待てよ……それって、以外に悩ましいわねぇ……今の状態で良仁さんが生き返るとぉ、七海ちゃんは奇跡の再会にビックリ仰天、号泣、抱擁、家族三人で手を取りあって、新たな人生……で、大団円。だけど、もし、良仁さんが愛人を作る、子供が出来る、由紀恵さん実家に帰る、七海ちゃんグレる。あら? 何度やっても、グレるんかいっ! そんな事にでもなった日にゃぁ、目も当てられないなぁ……」


「えっとですねっ、今の七海さんは、親の有難みを誰よりも知っている状態でぇ、今の良仁さんは家族の大切を骨身に染みて知っている状態からの――ぉ、再スタートですよ?」


「うーん、だよね? だよね? いくら何でも、今以上に悪くなる事も無ければ、茨の道なんてことも無いよね?」


「めぐみ様。それでは、新展開でよろしいですね? ファイナル・アンサー?」


 巫女twin’zの問いかけに、めぐみは何時に無く優柔不断になってしまった。だが、その時、死神の声が聞こえた――



 ‶ お嬢さん、何度も言わせないで下さい。時は待ってはくれません ″



「ファイナル・アンサ――――――っ!」


「OKでぇ――――すっ! オプションを選択して頂いたのでぇ、それでは、アッチャンとウッチャンに、でんぐり返しをして戻る様にぃ、言って下さいねっ」


「おーしっ。アッチャン、ウッチャン、でんぐり返しで、元の位置に戻れぇ――――っ!」


「アン? 分かったアンっ!」 


「ウンウン、分かった、ウンっ!」



 アッチャンとウッチャンは、くるりとでんぐり返しをして、元の位置に戻った。すると、何時もの見慣れた石の狛犬になっていた――







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