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子を思う親の愛は迷惑なんです。

 良仁の家族を思う優しい心がそうさせたのか、七海の夢の中に出て来ただけでは飽き足らず、添い寝までして居た事にめぐみは困り果てた――



「困ったなぁ……そうだっ! 試しに鬱陶しくて役に立たないアレにでも聞いてみるとしよう」



 ‶ ピロリロロン ピンッ! ようこそ、chatGPTへ。さぁ、新しい時代の扉を、今直ぐ開けようっ! ″



 ‶ はぁ――い、Navigatorのぉ、『巫女twin’z』でぇ――――――すっ! ″


「あ、えっと、めぐみです。天の国の人がぁ、地上の人間にちょっかい出して困っています。ど―すれば良いですか?」


 ‶ はぁ――い。有難うございます。それではぁ、具体的にぃ、困っている迷惑行為についてお聞きしまぁ――すっ! 次の中に該当する項目が有りますかぁ? ″ 


一 しつこくナンパされて困っている


二 ストーカー行為に困っている


三 この人、痴漢ですっ!


四 どれも当てはまらない


「あぁ……どれも当てはまらないです」


‶ はぁ――い。有難うございます。それではぁ、より、具体的に天の国の人についてお聞きしまぁ――すっ! 次の中に該当する項目が有りますかぁ? ″ 


一 天の国で働く神職の者


二 天の国に籍を置く神様


三 天の国に身を置く死者


「あっ、三番で……」


 ‶ はぁ――い。有難うございます。天の国の人とはぁ、具体的に言うとぉ、つまり……死者って事でぇ、良いですか? ″


「あっ、はい。そうです」


 ‶ はぁ――い。有難うございます。天の国の死者はぁ、許可無く地上の人に会ってはいけないルールを踏まえた上でぇ、困っている迷惑行為についてお聞きしまぁ――すっ! 次の中に該当する項目が有りますかぁ? ″  ″

 

一 死者にしつこくナンパされて困っている


二 死者のストーカー行為に困っている


三 この死者、痴漢ですっ!


四 どれも当てはまらない



「うーん、全部、当て嵌まっている様な、違う様な……四番で」



‶ はぁ――い。有難うございます。困っている迷惑行為についてぇ、更にお聞きしまぁ――すっ! 次の中に該当する項目が有りますかぁ? ″



一 死者がお化けの真似をして生者を脅している


二 死者が人間の社会生活の妨げになっている


三 この死者、痴漢ですっ!


四 どれも当てはまらない



「はあぁ……やっぱ、chatGPT使えねぇな。時間の無駄っ!」



 めぐみはchatGPTを閉じようとしたが、双子の巫女がそれを許さなかった――



「ちょっと待った―――ぁっ! めぐみ様。七海ちゃんの父、良仁さんはぁ、妻と娘を天の国に導くつもりなのです。死者が生者を天の国に導こうとするのは仕方のない事なのです。ですが、直接、働き掛けるのは重大な規則違反で、処罰の対象です」


「処罰……七海ちゃんのお父さんが処罰されたら困るよ……どうすれば良いのだろう……って、普通に話せるなら、最初から話さんかいっ!」


「まぁ、規則ですから。へけっ!」


「で? 七海ちゃんのお父さんを処罰対象から外しつつ、円満に解決する方法は?」


「お答えしますっ!『七海ちゃんとお母さんが不慮の事故で死ぬ』です」


「なるほど。そっか! それなら規則違反にならないし『天の国で三人は仲良く暮らしましたぁ。目出度し目出度し』って事かぁ。アホかぁっ! 目出度く無いわっ! 殺すなっ!」


「だってぇ、良仁さんはぁ、愛情が強すぎるんですよぉ。それプラス、父親としての責任を果たせなかった思いに寂しさとぉ、悲しさが重なってぇ、ドロドロとした情念がぁ、ぐるぐる渦巻いているんですよぉ」


「ドロドロとした情念が? ぐるぐる渦巻いている? 死んだ父親が家族を暖かく見守るなら分かるけど、天の国に導くなんて、聞いた事が無いよ……」


「良仁さんは手始めに七海ちゃんか由紀恵さんの、どちらかの命を奪うと思うんですよねぇ。でもぉ、どちらが死んでも残された者は悲しみますよね。その悲しみに耐えられないと思うんですよぉ。七海ちゃんは天涯孤独になり、由紀恵さんは夫と、お腹を痛めて産んだ我が子にも先立たれる……考えただけでもその悲しみに耐えられませんよね。だから、突然二人が不慮の事故で亡くなるのが最適解なんですよぉ。分かって下さい」


「わかんねぇ――しっ! あ―のねっ、死ぬ方向ばかりじゃ困るのよんっ! 生かす事を考えて欲しいのよ」


「チッ、頑固、石頭、めぐみさんの、分からず屋っ! もう、知らないっ!」


 ‶ プッ、ツゥ―――ッ、ツゥ―――ッ、ツゥ―――ッ、ツゥ―――ッ ″


「あっ! 切りやがったな、舌打ちまでして、このっ卑怯者っ!」


 

 めぐみはこれから毎晩、良仁が七海と由紀恵の枕元に立つと思うと居ても立っても居られなかった。そして、駿に相談して解決策を探そうと思った――





 ―― 一月二十一日 赤口 甲戌



 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――



「あれ? めぐみ姐さん、元気無いですね。何か心配事でも?」


「あっ。分かる? 実はねぇ……ヒソヒソ」


「えぇっ! 七海ちゃんのお父さんが天の国の許可無くお迎えに来ているですって? 」


「そうなの。前にも一度有ったんだけど、その時は直ぐに消えたのよ。でも、今回は七海ちゃんに添い寝したのよ……その事で、駿さんに連絡して相談に乗ってもらおうとしたら『出生に係わる事なら力になれるけど、死者の事は門外漢だから分からない』って。もう、お手上げなの」


「そりゃぁ、大変だ……七海ちゃんのお父さんが、どうやって天の国から地上へ降りたのかは分からないですけど……バレただけなら処罰で済みますが、逃亡したり逮捕された日には……」


「逮捕された日には?」


「完全に消されますよ『無』です。全てが消えてしまいます」


「えぇっ! マジでぇ……」



 めぐみは良仁が消されれば七海も消えてしまうので、早急に良仁の身柄を確保しなければならないと思った――







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