見えないけれど、居るんだよ。
和樹は指し迫った危機を回避する為、止む無くめぐみの指示に従いライトニング・サンダー・ボルトを撃った――
‶ ゴロゴロゴロゴロ―――ォ、ドッダァ――――――ンッ、バリバリバリバリバァ―――――――――――ンッ ″
めぐみは和樹のライトニング・サンダー・ボルトをブライト・ソードで受け止めると、一気に八岐大蛇目掛けて振り抜いた――
「貰ったぁ――――――っ! 食らえ―――ぇっ! 八岐大蛇っ!」
‶ シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、バチバチバチバチバチバチ、バリバリバリバリバァ―――――――――――ンッ ″
八岐大蛇はハムの様に薄くスライスされた後、真っ黒焦げになった――
「何をっ! まさか?!」
「どう? 南方武、参ったと言いなさいっ!」
「クソッ、此れ迄か……」
「ショチョウ、心配御無用。少し時間が掛かりますが、必ず再生します。大丈夫デス」
マックスが言う通り、真っ黒焦げになった八岐大蛇がじわじわと再生し始めた――
「おぉっ! これは、見事に再生しているではないか……お前達がどんなに力を合わせても八岐大蛇は退治出来ないのだっ! ハッハッハッハ、ア――ッハッハッハッハッハ」
めぐみが体力を使い果たし、倒れ込むと和樹が抱き止めた――
「あぁ……和樹さん……もう、無理だよ……」
「分かっている。オレの力不足だ……済まない、この責任はオレが取るっ!」
和樹は最後の力を振り絞って八岐大蛇の前に立ち塞がった。すると、南方はニヤリと笑いながら命令をした――
「さぁ、こいつ等を食い殺せっ!」
‶ ザザッ、ズザザザァ――――ッ、シャア――――――――――――ッツ! ″
和樹は襲い掛かる八岐大蛇の攻撃をサンダー・ショット防御するのが精一杯だった。そして、とうとう力尽きてしまった――
「……最早これ迄か」
「フッフッフ。和樹よ、お前がどんな業を繰り出そうと、天叢雲剣が無ければ、退治は出来ないのだ。覚悟しろっ!」
和樹の身に危機が迫ったその時、農作物の発送の手配をしていた珠美の勾玉が光った――
「おや? 勾玉が光っているよ? ってか、点滅している……まさかっ!」
珠美はトラックのコンソールから八咫鏡を取り出した。すると、そこに映っていたのは、力尽きためぐみと狼狽える駿、そして、八岐大蛇と対決する和樹だった――
「はっ! 私の和樹様が危ないっ! おのれ、南方っ! 今度という今度はタダじゃ済まさねぇっ! 行くぞっ!」
W・S・U・S本部は轟音と眩い光に包まれた――
‶ ズババババアァ――――――――――――ンッツ! ″
「到着っ!」
「お、お前は鵜飼野珠美っ!」
「おうっ! 南方。手前ぇ、調子に乗ってんなぁっ! 昆虫食は結果オーライで許してやるが、八岐大蛇の繁殖は許さねぇっ!」
「許さねえ? ハッハッハッハ、ア――――ッハッハッハッハッハ。鵜飼野珠美よ、良く見よっ! めぐみも和樹も力尽きているぞ。天叢雲剣が無ければ退治など出来ないのだ。飛んで火に入る夏の虫とはお前の事だっ!」
「はぁ? ミイラ取りがミイラになるとでも言いてぇんか? 面白ぇなぁ。ヤッテやんよっ! てえぇ―――――――――いっ!」
珠美が人差し指と中指を揃えて空を切ると、勾玉がフラッシュの様に光った。するとめぐみと和樹の体力が回復した――
「あ。何か元通り、元気になっているよ? 珠美Thanks!」
「珠ちゃん、有難う」
「えっ! 珠ちゃん? 和樹さん、知り合いなの?」
「あぁ。幼馴染なんだ……」
「ほほう。これで勢揃いか……仲良しごっこもこれ迄だ。纏めて消えて貰おう。そして数百年でも数千年でも祀られていろっ!」
南方の号令で八岐大蛇が襲い掛かろうとしたその時だった――
‶ ゴゴゴゴゴォ――――オ、ゴゴゴゴゴォ――――オ、ゴゴゴゴゴォ――――オッ! ″
「え? 地震?」
「めぐみ、地震じゃねぇから、心配すんな。今、仲間が来るから」
‶ ダイダラボッチ、ダイダラボッチ、俺は何時でも此処に居る。見えないけれど居るんだよ。ダイダラボッチ、ダイダラボッチ ″
「ちょっと、珠美。ダイダラボッチって超巨大な奴じゃないの??」
「ばーか、今流行りのダウン・サイジングして来てくれているんだよぉ。おうっ、皆さんに御挨拶をしなっ!」
「へい。お控えなすって。わたくし、生まれも育ちも大和の国です、日本海で産湯を使い、姓は大駄羅、名は法師、人呼んでダイダラボッチと発します。わたくし、不思議な縁もちまして、大日本農業連合に草鞋を脱ぎました。あんたさんと御同様、東京の空の下、ネオンきらめき、J-POP高鳴る花の都に、仮の住まい、まかりあります。故あって、わたくし、親分子分持ちません。以後面体お見しりおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしく、おたの申します」
「ええいっ! 口上など要らん。こんな奴で八岐大蛇が退治出来るとでも思っているのかっ! 愚か者めっ!」
「おっと、減らず口はそこまでだぁ。おうっ。やっちまいなっ!」
「へい。それでは、早速ですが、やらさせて頂きます」
ダイダラボッチは大きな口に変身した――
「めぐみちゃん、ダイダラボッチちゃんが登場したら、何だか『ほんわか』『ほっこり』して来たね」
「ってか、パックマンみたいな感じが……」
‶ タッタタラ、タタタン、ピロリロリロリンッ! ″
ダイダラボッチは通路の八岐大蛇を食べ始めた――
‶ パクパクパクパク。モグモグモグモグ。パクパクパクパク。モグモグモグモグ ″
「ほーら、やっぱり」
「馬鹿めっ! こんな事をしても時間の無駄だっ! 八岐大蛇は直ぐに再生するのだ」
「ショチョウ、ダメぽ……デス」
「な、何だと? マックス、どう云う事だ」
「んな、オモチャに聞かなくったって、私が教えてやんよ。ダイダラボッチの胃袋は無限大だぁ。退治は出来なくても、閉じ込めておく事は出来るんだよ」
「そんな馬鹿なっ!」
唖然とする南方を余所に、ダイダラボッチは食べ続け、全ての八岐大蛇を飲み込んだ――
「南方ちゃん。現代の科学では到底、推し量る事の出来ない神話の世界の物語……まぁ、諦めるんだね」
「駿の言う通りだ。これ以上戦う事に意味はない」
「本当に人騒がせなんだから。南方武、反省しなさいっ!」
八岐大蛇をぺっろっと平らげたダイダラボッチは、にっこりと笑った。その笑顔に南方の顔は引き攣っていた――
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