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奪われた乙女の青春。

 和樹はめぐみの声に即座に反応しW・S・U・S本部に降臨した――


 こうして、四人の神様が揃う事となった――



「お前が南方武か。このオレに挑戦するとは、良い度胸だぜ」


「竹見和樹、そのセリフはこちらのセリフだ。お前と正面から戦っても勝てない事は承知している。だが、お前がどんな技を持ってしても倒す事の出来ない八岐大蛇ヤマタノオロチが相手だ」


「フッ。結局、自分の力では勝てない事を知っているんだな。卑怯者めっ!」


「弱い相手にイキがるお前こそ卑怯者だ。支配をする者は賢者でなくてはな」


「小僧扱いしやがってっ! 馬鹿にするなっ!」



 ふたりは睨み合い、一触即発状態になった。そして、めぐみの掛け声を起点に戦いは始まった――――



「和樹さん、八岐大蛇ヤマタノオロチは駿さんの神力で無力化されているから、恐れる事は無いわよっ!」


「あぁ、このオレには恐れる事など何も無い。食らえっ! 必殺、ローリング・サンダー・ボルトッ!」



 ‶ ゴロロロ―――ォ、バリバリバリバリバリバリ、ドッダァ――――――――ンッ!! ″



 八岐大蛇ヤマタノオロチは和樹の攻撃を受けると、そのショックからピーンと真直ぐな棒の様になり、目を回して気絶した――


「やったね、和樹ちゃん。これでお終いだ」


「フッフッフ。ハァーーー―――ッハッハッハッハ。そう簡単に八岐大蛇ヤマタノオロチ退治出来ると思っているのか? 馬鹿者がっ! さぁ、蘇れ八岐大蛇ヤマタノオロチっ!」


 南方の神力で八岐大蛇ヤマタノオロチは目を覚まし、鋭い長い舌を出して鎌首を持ち上げ始めた――



 ‶ シャア―――――――――――――ッツ! ″


「そんな馬鹿なっ! 生まれ変わって無力化したはずなのに……」


「フッフッフ。残念だったなぁ、火野柳駿。八岐大蛇ヤマタノオロチのDNAは神の力を持ってしても変える事は出来ない。獰猛で旺盛な食欲が目覚めるのは時間の問題に過ぎない……八岐大蛇を退治出来るのは天叢雲剣あまのむらくものつるぎを持つ賢者だけなのだっ!」



 和樹はありとあらゆる技を繰り出して攻撃するも、八岐大蛇ヤマタノオロチは直ぐに復活してしまい、手に負えなかった――



「和樹さんが八つ目の頭に攻撃を加える頃には、ひとつ目が息を吹き返してしまう……コレじゃ勝ち目が無いわ」


 めぐみはクロノ・ウォッチのボタンを押して時間を止めると、ケータイを取り出して天の国のアプリを開いた――


 ‶ ピロリロロン ピンッ! ようこそ、chatGPTへ! さぁ、新しい時代の扉を、今直ぐ開けようっ! ″



 ‶ はぁ――い、Navigatorのっ! 『巫女twin’z』どぉぇ――――――すっ! ″


「変な溜めは要らないのっ! あんた達に聞きたい事が有るの。南方が言うには『八岐大蛇を退治出来るのは天叢雲剣あまのむらくものつるぎを持つ賢者だけ』って事なんだけど、それ本当? 本当なら何処に有んの?」


 ‶ はぁ――い、本当ですっ! えっと、ですねっ。天叢雲剣あまのむらくものつるぎはぁ、たぶん、喜多美神社のぉ、素戔嗚尊スサノオノミコト様がぁ、持っているのかぁ、持っていないのかぁ……直接本人に聞いて―――――ぇ、下さいっ ″


「えっ? マジで? あのエロ親父、なんか言えっつーのっ! 面倒臭っ!」



 めぐみは大急ぎで喜多美神社に戻って行った――


「緊張感の有る壮絶なバトルの真っ最中に、時間を止めて電アシ自転車のペダルを漕いでいる私って、一体……パシリと遅刻を同時体験する女子高生気分だよっ!」



 喜多美神社に到着すると参道を一気に抜けて拝殿に昇殿して本殿に飛び込んだ――



「おやおや、めぐみちゃん。良く来たのぉ」


「ちょっと! 天叢雲剣あまのむらくものつるぎ天叢雲剣あまのむらくものつるぎは何処に有るの? 和樹さんが大変なの、天叢雲剣あまのむらくものつるぎを貸してっ!」


「まぁ、そう、慌てなさんな。ゆっくりして行くが良いぞ」


「ゆっくりなんか、してらんないのっ! 話聞いてる?」


「聞いておるぞ。天叢雲剣あまのむらくものつるぎが必要なんじゃな?」


「そう。早くして」


「すまんのう。残念だがもう、わしの手元には無いのじゃよ……」


「えぇっ? 持ってないの? それなら何処に有るのよ? 何処に行けば手に入るの?」


「もう、手には入らんのじゃ……」


「ちょっと、冗談でしょ? 手に入らないじゃ済まないのっ!」


天叢雲剣あまのむらくものつるぎは、わしの保管が不味かったせいなのか……腐食してしまってのぅ……もう朽ち果ててしまって無いんじゃよ。コレ、ゼッタイに秘密だから」


「結婚指輪を無くした主婦みたいに言うなっ! じゃあ、どうやって八岐大蛇ヤマタノオロチを退治するのよっ!」


「それは、きっと関田が玉鋼から作ってくれるから、その時が来るのを只、ひたすら待つのじゃ。ジっと我慢の子なのじゃ」


「待ってらんないのっ! 我慢なんて出来ないのっ! 緊急事態なのよっ! ったく、珠美がグレるのも分かるわぁ。もう結構です。さようなら」


「あぁっ、めぐみちゃん。今、お湯が沸いたから……」


「お茶なんか飲んでられないのっ! この、おとぼけエロ親父っ!」


「そんなに怒らないで…………」


 めぐみは呆れて本殿を飛び出すと、自転車に跨りペダル漕いだ。そして一生懸命自転車を走らせていると、だんだん怒りが込み上げて泣けて来た――


「何やってんだか、私。人間よりも神様に手を焼くなんて、冗談じゃないわ……あぁ――――っ、もう、私の青春を無駄にしやがってっ! 南方武、許すまじっ!」




―― W・S・U・S本部


 めぐみは本部に到着すると、ブライト・ソードを抜いた――


 ‶ シャキ―――ンッ、バッシュ―――――――――――ンッ ″


 そして、戦闘準備が整うとクロノ・ウォッチのボタンを押して時を動かした――


「ポチッとな。さぁてと、乙女の青春を無駄にした復讐の始まりよっ! 覚悟しなさいっ! うぉりゃ――――――っ!」


 たじろぐ駿の横を抜け、悪戦苦闘する和樹を追い越し、八岐大蛇ヤマタノオロチの群れの中に飛び込むや否や、片っ端から首を刎ねた――



「うわぁあっ! 何と言う刀の使い手だ……マックス、このままでは八岐大蛇ヤマタノオロチが全滅してしまうぞ」


「ハイ。ショチョウ、ご安心下さい。必ず再生しマス」


 マックスの言う通り、八岐大蛇ヤマタノオロチは直ぐに刎ねられた首を元の胴体に接合して再生してしまった。そして、ブライト・ソードを使い過ぎた為、バッテリー切れの様な状態になって輝きを失ってしまった――


「めぐみさん、もう、これ以上は無理だ。諦めて撤退するしかない」


「和樹さん、あなたのライトニング・サンダーボルトをこのブライト・ソード目掛けて放ってっ!」


「めぐみさん、無茶だっ!」


「大丈夫よ、良いから早くしてっ!」


 めぐみが精神を集中させると、ブライト・ソードの光は強くなり、眩しくて目を開けていられない程だった。そして、その色はめぐみの怒りを表す深紅に変わって行った――






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