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死んで生きるか、生きて死ぬか。

 南方は、めぐみと駿を睨みながら、ジリジリと歩み寄り間合いを詰めた――


「W・S・U・Sへようこそ。鯉乃めぐみと火野柳駿……」


「あなたが南方武ね。わざわざ、お出迎え有難う……とでも言えば満足かしら?」


「何だと……」


「おっと、南方ちゃん。怒っちゃ駄目だよ、僕たちは助けに来たんだからね」


「助けに来ただと? は――っはっはっは。レプティリアン達は既に、八岐大蛇ヤマタノオロチの腹の中だ。お前たちに助けて貰う事など何も無い」


「残念でした。レプティリアン達は消化されているのでは無く、最小化をしているだけなんだなぁ」


「マックス、本当か?」


「ハイ。ショチョウ、おふたりの言う通りです。彼等は死んでは、イマセン」


「そんな、馬鹿な……」


「南方武、諦めなさい。でも、駿さんがレプティリアン達を真人間に生まれ変わらせてくれるから安心して良いわ」


「……そ、それは、そんな事が、出来るのか?」


「あぁ。勿論だよ。さぁ、案内して貰おうか」


「うむ。分かった、付いて来なさい」



 南方の案内で地下の研究室に下りて行くと、無数の八岐大蛇ヤマタノオロチが消化に手間取って苦しんでいた――


「めぐみちゃん、ブライト・ソードをヨロシク。石にされたら困るからね」


「はい。それでは、抜きますっ!」



 ‶ シャキ―――ンッ、バッシュ―――――――――――ンッ ″



 めぐみがブライト・ソードを抜くと、八岐大蛇ヤマタノオロチは目を回し、無力化された。南方は阿鼻叫喚の中から一筋の光が見えた事に安堵した――


「めぐみちゃん、これでOK、準備は整った。さぁ、今度は僕の番だね」


 駿が両手を胸の前で組んで、安産祈願をすると八岐大蛇ヤマタノオロチのお腹は風船の様にどんどん膨らみ丸くなって行った。そして、更に力を込めて祈願をすると、臨月の状態になった――



 ‶ ポンッ! ポンポン、ポポポーン、ポポポポポ――――――――ンッ ″



 ピンポン玉の様に飛び出て来た卵にヒビが入り、中から出て来たのは『真人間』に生まれ変わったレプティリアンだった――


「おぎゃ――ぁ、おぎゃぁ、おぎゃ? あれ? 俺は食い殺されたと思ったが……」


「おぎゃ――ぁ、おんぎゃぁ。やっぱり俺達は死ねなかったって事か……」


「おぎゃ――ぁ、ぎゃぁ。でも、何だか体が軽くね?」


 駿は無事に出産を済ませ、微笑んで話し掛けた――


「誕生おめでとうっ! 君達の望み通り『真人間』に生まれ変わらせたから安心して良いよ。天寿を全うするまで、しっかりと生きて行くんだよ」


「はいっ! 有難う御座います」


「何とお礼を言ったら良いのか……言葉を尽くしても尽くしきれません」


「俺達は本当に『真人間』生まれ変わったんだっ! やった、やった、やったぁ――――――あっ!」


 真人間に生まれ変わったレプティリアン達は涙を浮かべ『解放、万歳』『人間、万歳』と、大きな声で連呼しながらW・S・U・S本部を出て行った。そして、最後の一人を見送ると、代表が南方の前にやって来た――



「南方所長。色々と誤解は有りましたが、約束を守って下さり、有難う御座いました。もう会う事も無いかもしれませんが、この御恩は一生忘れません。それでは、さようなら」


 

 押し寄せて引く波の様に、レプティリアン達が居なくなると、廃墟と化したW・S・U・S本部に冷たい風が吹き込んでいた――



「駿さん、これで一件落着ね。お疲れさまでした」


「まぁね。彼等の行く末には困難な事が沢山あるだろうけど……きっと、真直ぐ生きて行けると思うよ」


「はい。間違い無いですよ。うふふ」



 めぐみと駿は『真人間』に生まれ変わり、新たな人生を生きて行くレプティリン達を見送り感慨に浸っていた――



「フッ。人間以上の能力を捨てるなんて馬鹿な奴等だ。私の用意した待遇で地上で無双すれば良いものを……」


「なんですって、あなたは何も分かっていないのね。彼等は人間になって生きたかったの。人間に成りすまして、無双して生きている意味なんか無いのよっ!」


「はっはっはっはっは。何も分かっていないのはお前達も同じだっ! あれを見よっ!」



 南方が指差す方に目をやると、出産を終えて生気を取り戻した八岐大蛇ヤマタノオロチがとぐろを巻いていた――



「エニシムスビノミコトとヒノヤギハヤヲノカミ。さて、逃げ切れるかな?」


「卑怯者っ! 助けた恩も忘れてこんな事をするなんて……」


「助けてくれと頼んでなどいないぞ。案内をしただけで、お前らが勝手にした事だ。まぁ、結果として助けて貰った事には変わりはないか……レプティリアンを生まれ変わらせて処分してくれた事には感謝しよう。だが、八岐大蛇ヤマタノオロチプロジェクトは滞りなく推進するっ!」


「やれやれ。この期に及んで、未だ国譲りを諦めていないとはねぇ……」

 

「駿さん、早く逃げなくては……」


 めぐみが地下室から一階のロビーに出ると、南方の神力で、破壊されたW・S・U・S本部は見る見るうちに復元されて行き、正面玄関がロックされた――



「フッフッフ。逃げられやしない……観念して数百年祀られているのだっ! さぁ、八岐大蛇ヤマタノオロチよっ! 飲み込んでしまえっ!」


 南方の号令が地下室に響き渡ると、めぐみは万事休すだと思った。だが、何故か八岐大蛇ヤマタノオロチは襲い掛かって来なかった――


「さぁ、口を開けて飲み込むんだっ! マックス、命令に従わないぞ。一体どうしたと言うのだ?」


「ハイ。ショチョウ、八岐大蛇ヤマタノオロチも、すっかり、生まれ変わってしまった、ヨウデス」


「何ぃ……」


「残念だけど、そう云う事なんだな、南方ちゃん。何でも思い通りには行かないんだよね。そして、この八岐大蛇ヤマタノオロチを退治出来るのは……めぐみちゃんっ! 和樹ちゃんを呼んでくれないか?」


「はいっ!」



 めぐみが心中で『和樹さん助けてっ!』と念ずると、直ぐに和樹に伝播した――


「ん? めぐみさんが助けを呼んでいる。今直ぐ行かなくてはっ!」



 和樹は武者修行に励み、無我の境地に至っていた。そして、今こそ磨き上げた技を使う時だと悟った――






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